精神科と身体科の診断の相違 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科と身体科の診断の相違

同じ症状を診ても、精神科と身体科では診たてが異なる。例えば嚥下障害。

 

ある時、僕の患者さんが内科に入院したと連絡があった。その患者さんの重要視された症状は「嚥下障害」と言う。

 

ところが、入院後も全然改善しなかったらしい。入院した理由は訪問看護(当院ではない)で様子がおかしく、入院させた方が良いと判断されたのである。

 

嚥下障害が一向に改善せず年齢的にも自宅に戻ることは難しいと判断されたようであった。年齢も考慮し施設入所になる見通しだった。しかし家族はそれに同意しなかった。

 

細かい経緯は忘れてしまったが、嚥下障害の背景は精神科的には昏迷が疑わしいと思われた。なぜなら、その人は病状悪化するといつもそうだったからである。

 

昏迷と言うと、すぐに統合失調症と思われがちだが、本来そこまで疾患特異性がない。

 

過去ログで挙げた昏迷になりうる3大精神疾患。

1,統合失調症

2,躁うつ病

3,ヒステリー(神経症)

 

器質性疾患でも生じうるので、頻度の差があるものの疾患特異性がないという表現そのままである。なお、このブログ的にはヒステリー(神経症)は器質性疾患とみなしている(特にヒステリー)。

 

患者さんの家族が当院に来て転院させてほしいと希望されたため、転入院させ、昏迷が改善したら帰宅させる方針とした。この嚥下障害(食事が自力で取れない)の病態は、昏迷を来しているだけで、不可逆性ではないからである。(つまり治療で回復する)。

 

結局、入院後、抗精神病薬を調整したところ、霧が晴れるように昏迷は改善し普通食も食べられるようになった。おそらく退院後、正月にお餅も食べられたと思う。

 

身体科ではもうこれは自宅では生活できないとされていたのにあまりにも大きな違いである。

 

昏迷は血液検査、CT、MRIに異常所見がない。

 

診たことがないとわかりにくいので、個々の症状を重視してしまうところはある。