向精神薬の安定供給が難しい状況が今後数年続きそうなこと | kyupinの日記 気が向けば更新

向精神薬の安定供給が難しい状況が今後数年続きそうなこと

過去ログでは、ジェネリックの向精神薬の供給が困難になり、今は先発品も不足していることを記載している。

 

 

不足している向精神薬は納入業者と連絡を取り合ってなんとかやっているのが現状である。薬剤師と問屋の人的なネットワークは非常に重要で、うちの病院はそのために真に枯渇しないところがかなりある。(頑張って融通してもらう)

 

困るのは安定供給が難しい点。突然、1箱入ってきて、次はいつかわからないなどである。

 

最近、驚いたのは、院内薬局でリスペリドンが不足し始めたこと。ジェネリックの1㎎、2㎎錠が全くなく、先発品のリスパダールに変更せざるを得なかった。しかも入ってくるのリスパダール1㎎錠が普通錠で、2㎎はOD錠のみである。しかし、0.5㎎錠はジェネリックのリスペリドンがあるという歪な状況である。

 

処方箋を変更する医師の身にもなってくれと言いたい(処方変更の手間が増える)。

 

ところで僕の入院の受け持ち患者の処方を検索したところ、リスペリドンを投与している人がたった1名。それも0.5㎎錠を1錠だけであった。ただし外来患者(院外薬局)では数名リスペリドンを処方しており、たぶん最高量でも2㎎くらいだと思う。

 

医師のうち院内受け持ち患者数は僕が最も多い。僕は他の医師に処方についてあれこれ言わない方針なので、どのようになっているのか、リスペリドンの処方状況を調べてみた。

 

他の医師の処方状況を調べると、最近、転院初診などがあり一時より処方数が増えているらしい。このように一時より増加している状況が困るのである。ある向精神薬を従来さほど購入していない病院が急に増やすことは難しい。

 

市中の調剤薬局には1回だけ2週間分処方して、そのまま向精神薬が残っていることがある。例えば、デプロメールを1日2錠2週間分処方しその後、患者さんが来なかったような事例である。これは精神科以外の(門前)調剤薬局で起こりやすい。

 

このようなデッドストックは、そのまま期限切れになり廃棄される確率が高い。箱の封を切った市販されない向精神薬を他の調剤薬局に売ることなどできないからである。(小売業の資格があってもできない)。

 

ただし大手チェーンで展開する調剤薬局では、在庫調整という形で同じ会社の調剤薬局間で融通できるのではないかと思われる。このようなことから、不足当初は調剤薬局での状況はいくらか異なっている。しかし時間が経てばどこの調剤薬局も差がなくなる。

 

今回の全国的なジェネリック医薬品メーカーの不祥事に端を発した向精神薬不足は、これから工場を作るとかの状況なので、長患いになりそうである。まずくすると3年から5年間ほどかかるかもしれない。

 

考えてもみてほしい。正しくない製法で作っていた薬を、先発品メーカーの特許を避けて製造するプランから始まるのである。当然、道のりは険しいはずである。

 

参考