整形外科で処方されるサインバルタ | kyupinの日記 気が向けば更新

整形外科で処方されるサインバルタ

当初、抗うつ剤として発売されたSNRIサインバルタは疼痛に非常に有効なことが知られている。以下は添付文書から。

 

効能・効果
糖尿病性神経障害の疼痛
変形性関節症の疼痛
線維筋痛症の疼痛
慢性腰痛症の疼痛
うつ状態
うつ病

用法・用量
〈うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛〉

通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして40mgを経口投与する。投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。なお、効果不十分な場合には、1日60mgまで増量することができる。


〈線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛〉

通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして60mgを経口投与する。投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。


(用法及び用量に関連する注意)〈うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛〉

本剤の投与量は必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節すること。

 

上の用法用量を見ると「うつ病」は基本、40㎎処方し不十分であれば60㎎まで増量できるというニュアンスで記載されている。それに対し「線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症」に関しては60㎎が基本で、20㎎から増量してくださいとある。つまり疼痛の方がうつ病より多い用量を処方した方が良いと言う記載だと思う。

 

うつ病にサインバルタを処方する場合、たいてい40㎎から60㎎まで増量することが多い。忍容性が低いとか、有害作用が出て継続が難しい人は治療可能用量まで増量できない。

 

うつ病の患者さんに40㎎まで増量し長期的に安定したケースで、その後うつ状態が悪化した際に60㎎まで増量すると、改善することが少なからずあるので、60㎎まで増量しっぱなしにしない方が良い。なぜなら60㎎で悪化した際に、他の薬に切り替えるか他の抗うつ剤を併用するしか選択肢がないからである。もちろん抗うつ剤以外の薬をオーグメンテーション的に併用するケースもある。

 

60㎎から40㎎までの減量は比較的易しいが、40㎎から30㎎に減量した際に悪化する人を時々診るのでうつ病の40㎎という用量はうまく考えられた用量だと思う。

 

しかし30㎎とか20㎎で安定している人もいないわけではない。僕は30㎎以下で安定している人は、一度思い切って中止するのも選択肢としてあると思う。

 

サインバルタは決して止められない薬ではなく、自分の患者さんではサインバルタ40~60㎎服薬していた人が時間が経ちトリンテリックス単剤とかラミクタール単剤に変更できた人もいる。また、ラツーダ単剤に変更できた人もいた。

 

このようなことを考えていくとサインバルタ20㎎はありえなくはないが、ひょっとしたらあまり仕事してないんじゃないの?と言う感覚があったのである。

 

さて、リエゾンや身体科(特に整形外科)からの紹介で、精神科に受診したことがないのにサインバルタが処方されていることがある。これは疼痛に対し処方されていると思うが、しばしば中途半端な用量なのである。

 

もし20㎎初期用量のまま継続されているなら、おそらくほとんどサインバルタの効果が出ていない。他の鎮痛系の薬も併用されているのでよくわからないだけである。

 

一方、精神をきちんと診ることができない医師がサインバルタを60㎎まで増量するのもリスクがあると思う。セロトニン及びノルアドレナリン増やすタイプの抗うつ剤は、奇異反応的に著しい興奮を惹起させることがある。

 

また疼痛系の患者さんは一部に双極性障害の人もいるので、サインバルタ投与後、精神症状が不安定になる経過もあると思われる。

 

そういうこともあり、リエゾンや身体科から紹介される患者さんに中途半端な用量のサインバルタが処方されている時、複雑な気分になる。

 

リエゾンではサインバルタの用量調整は任せてもらうようにしている。中途半端な用量だといったん中止する。あるいは良さそうなら治療域まで増量する。

 

しかし精神科と身体科でのサインバルタに、もうちょっと違う現象にも着目している。

 

身体科のサインバルタはあまりにも効果も副作用も出てなさすぎる。

 

過去ログに精神科医以外の医師が向精神薬を使うと効果が出にくいと言う内容が出てくる。たぶんこれなんだと思う。つまり彼らが処方すると向精神薬が全くキレない。

 

精神科医以外の医師がサインバルタを使っても効果も副作用も出ず、サイレントになりやすいと思う。これはサインバルタに限らず、アリセプトやメマリーも同様である。

 

つまり、向精神薬の奇異反応も、キレているからこそ出現するのである。

 

逆に身体科で処方される向精神薬は比較的安全に処方されているように見えるのも、複雑な気分になる点である。