人生において勉強ができるかどうかはたいした問題ではない | kyupinの日記 気が向けば更新

人生において勉強ができるかどうかはたいした問題ではない

精神科医をしていると、知能が高く勉強もできるのに、それが人生に生かせない人たちを見る機会が多い。

 

生涯にわたり精神科病院に受診することがない人がかなりいるわけで、精神科医は常に特殊な環境にいる。これは若い頃に良くそう思っていた。毎日、精神科病院に行き、1日中仕事をしているわけである。それが特殊でなくて何であろう。

 

精神疾患は罹患する確率は、一見、その人のIQによりあまり影響しないように見えるが、IQが低い人たちは心因反応を起こしやすいので、おそらく精神疾患を罹患しやすいと思う。

 

しかし、学業のできる人も精神疾患を容易に病むので、あたかも関係がないように見えるのだろう。これらは治療者側から見る光景である。

 

僕はそのような経験を経て、タイトルの「人生において勉強ができるかどうかはたいした問題ではない」という感覚を持つようになった。これは友人の精神科医に聴いたことがないが、たぶん似ているような気がする。

 

そう思う理由は、子供の教育について、とやかく言わない精神科医が多いように思うからである。

 

例えば、子供に「どうしても医者になれ」とか不要なプレッシャーをかけない人が多い。特に男性の勤務医の人にその傾向がある。ただ女性の精神科医は男性ほど放任しないのでは?と思う。

 

しかし奥さんは違う。教育費をかけても医師になってほしいと思う人が多いようである。例えば、僕の友人はいつも教育方針で奥さんと口論になっていた。奥さんは子供の教育に精力的だったが、友人は全く逆で教育方針の相違で喧嘩になっていた。しかし最終的に奥さんの必死さが勝り子供は医師になった。それも精神科医以外の。

 

彼は教育ママぶりを、いつも忌々しいといった感じで語っていた。

 

うちには子供がいないので、いろいろ体験はしているわけではないが、そのような感想である。

 

今から20年前くらいに、このような考え方は「僕が精神科医だからこそ」そうなるのではと思うようになった。実は、精神科医の思考バイアスではないかと思い始めたのである。

 

実は、子供の教育や進路について自由にさせるのは、それはそれで良くないのである。

 

ある友人は子供が国立の医学部にも合格できるくらいの成績なのに、自由にさせたために東京大学とか京都大学の医学部以外の学部に進学し、結果的にそれでも良かった人もいるが、非常に困難な状況になった人もいる。

 

医学部に限らず医療系学部に言えるが、就職の自由度が大きいのである。医師はある病院に勤めていて、どうしても自分に合わないと感じた時、他病院の異動は比較的容易である。

 

過去ログでも触れているが、例えば沖縄や北海道で仕事をしたい思った時、医療系の資格を持つ人はそれがかなうことが多い。これは医師に限らず薬剤師や看護師、MHSW(旧PSW)、公認心理士などもそうである。

 

先日、ある患者さんがもうすぐ定年になるいう記事を書いたが、彼がもし銀行員であったなら、間違いなく20年前に退職になっていたであろう。メンタルヘルスの疾患全般に言えるが、発病時にいかなる仕事に就いていたかによる運不運はかなりある。

 

 

今回の記事は、タイトルを否定するような内容も含まれるが、基本、普遍的に正しい。しかし、精神科医はバイアスがあることを少し考慮し、平均くらいに戻すことも必要かも?と言ったところだと思う。

 

その理由は、18~20歳の子供にとって、自分の進路を適切に決めることは難しいと思うからである。