色覚異常と医学部の話 | kyupinの日記 気が向けば更新

色覚異常と医学部の話

今回の記事は急に思いだしたもので、精神科やオリンピックと関係がない。

 

子供の頃、色覚異常は色弱、色盲などと呼ばれていたが、必ず小学校で検査が行われていた。驚いたのは、色覚異常の検査で「色弱」と判定される子供がどのクラスにも1~2名いたことである。(石原表と呼ばれる検査)

 

これは淡い色で描かれる模様を、正しく判断?できるかどうかが検査される。クラスの親しかった子がその模様がわからないのが不思議でならなかった。当時、子供たちにも色覚異常があると入学できない高校や大学があることがわかっていて、色弱の判定は子供心にダメージを受けるものだったと思う。色覚異常はほとんど正常と変わりはしないのにである。

 

日本人では色覚異常は男性では20人に1人、女性では500人に1人と言われているため、当時40~43人クラスに1~2名いてもおかしくない。

 

僕は中学校の頃、同じスポーツクラブに頭の良い医師の子供の友人がいた。彼は自分は色弱なので医学部には行けない、高校では文系に進むと言うのである。

 

さて僕が医学部に入学後、進学過程の2年生の頃と思うが、新入生の身体検査の手伝いをするように頼まれた。ボランティア的なものである。その日、新入生の検査に石原表もあり、なんとその年の新入生に2名も色覚異常を持つ学生がいたことに驚いた。

 

この話を友人の家で話したところ、当時の色覚異常と医学部、医師国家試験の関係などの話を聴くことができた。灘高校出身の友人は家系的に医師が多かったこともあり、色覚異常と医学部の制約に詳しかった。彼は色覚異常は自ら申告しないなら大丈夫、石原表を丸暗記すれば問題ないと言うのである。また彼は医師国家試験や医師免許を取得する際に色覚異常は問われないと話していた。

 

他の友人は、なぜ医学部が色弱異常者への制約を設けるかというと、医学書を学ぶ際に困るからと言う。例えば医学書では動脈を赤、静脈を青と言うルールがあるが、色覚異常があるとこれを逆と勘違いすることが起こりうる。どの程度わからないかは色覚異常の程度によるが、説得力がある理由と言えた。

 

結局、その日、色覚異常が判明した新入生は入学が取り消されることはなかった。ということは、僕の大学は当時、色弱異常の制約はなかったことになる。自分が中学生の頃、工業高校は色覚異常者は入学できないなどと言われていて、大学にも制約がある学部が多数存在していた。しかしその制約の厳しさは個々の高校、大学に任されていたようなのである。

 

僕の大学の合否は共通一次試験と二次試験の結果だけで判定されており、内申書の内容は問われず、小論文も、面接もなかった。色覚異常を問わないところまで首尾一貫していると言えた。

 

その当時から、大学入学の色覚異常の制約は徐々に撤廃されるようになった。これは医学部に限らず薬学部など医療系学部や他の理系に限らず文系学部も同様である。これは教育を受ける権利など人権が重視されるようになったことも関係している。

 

また色覚異常は偏見、差別、いじめにつながりやすいとされて、2003年から小学校の色覚異常の検査そのものが廃止されたのである。この結果、今の若い人たちは自分が色覚異常かどうか知らない人たちが多くいると思われる。

 

ところが、自分が色覚異常かどうかを知らないでいると、将来困ることが起こりうるのである。大学を無事卒業しても、今でも一部の職種で制約があるものがある。例えば、パイロット、電車の運転手、競馬の騎手、自衛隊など多数ある。(興味がある人は調べてほしい。現在、制約がある大学もある)

 

そのようなことから、自分が色覚異常と知らないために、進路や職業を閉ざされ愕然としないように、2016年4月から色覚異常検査は原則再開されたのであった。

 

現在、医学部について入学及び医師免許取得にあたり色覚異常の制約はない。(もしかしたら防衛医科大学校は制約があるかもしれないが詳しくない)。