最近、臨床を知らないのでは?と思われる医師がレセプトをチェックしている話 | kyupinの日記 気が向けば更新

最近、臨床を知らないのでは?と思われる医師がレセプトをチェックしている話

毎月、月初めはレセプトのチェックで忙しい。長期間、同じ医師がレセプトをチェックしているようであるが、たまに交代する。交代の度に査定のされ方が少し変わることが多い。人が変わると、精神科医が特に疑問に思わないものも査定されることに驚く。以下に例を挙げる。

 

〇リスペリドンとアリピプラゾールの併用について査定。

この理由が笑えるのだが、「リスペリドンはD2遮断薬であり、アリピプラゾールはD2部分アゴニストなので併用は意味がない」と言うもの。この人は、ひょっとしたら学生か、本来他科の医師で最近精神科医を始めたのではないかと思うほどの驚愕のレベルである。

 

そういえば、リスパダールが発売された当初、セレネース+リスパダールの併用処方のレセプトで、「この併用はリスパダールの意味がない」というものがあった(実話)。日本で初めて非定型抗精神病薬が発売された当時、非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬との併用では良さが出ないと言われていたこともある。これはまだわかる。

 

リスペリドン+アリピプラゾール処方だが、ある意味、大きな問題提起だと思われる。この併用は真にエフェクティブなのかは疑念があるからである。つまり、本当にaugmentationになってるの?と言うもの。

 

個人的に、リスペリドン+アリピプラゾールとオランザピン+アリピプラゾールを対比すると、かなり相違があるのでは?という実感である。そもそもこの2剤は1+1にならない。2008年の過去ログに以下のような記事がある。

 

 

この議論は長くなるので今回は詳細は記載しないが、アリピプラールは併用することにより、他の薬の効果を減損するケースもよくあるのではないかと考えている。例えば、ある非定型抗精神病薬を大量投与をせざるを得ない際に、アリピプラゾールは併用しない方が良いのでは?と言う臨床感覚である。

 

また、リスペリドンの副作用を減じる手法として、アリピプラゾール(エビリファイ)併用の過去ログがある。(以下のリンクカード)

 

 

 

〇ドネペジルOD3㎎錠を4分の1錠(0.75㎎)ほど継続処方の査定。

ドネペジル(アリセプト)はレビー小体型認知症など平均して忍容性の低い人たちに処方する場合、一般的な用量まで増量しない方が良いケースが良くある。これは過去ログでも良く出て来る。しかし、添付文書的には、増量について半ば強制的な記述がある。

 

〈用法・用量に関連する使用上の注意〉

3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1~2週間を超えて使用しないこと。

査定の理由は、微量投与が長すぎると言ったところだと思う。「この患者さんは薬に弱いため減量して処方している」とレセプトに注記しても査定されているのであった。国は認知症の薬を減量して処方することを容認しており、これまで査定されることなどなかった。人が変わった途端にこれである。

 

認知症の薬はドネペジルだけでなく、メマリー(メマンチン)の添付文書にも同様の注意の記載がある。

 

用法及び用量に関連する注意
1日1回5mgからの漸増投与は、副作用の発現を抑える目的であるので、維持量まで増量すること。

 

メマリーの臨床感覚について過去ログに記載している。

 

 

今回は、特に奇妙に思われた2つのレセプト査定について私見も含め紹介している。