大正生まれの患者さん | kyupinの日記 気が向けば更新

大正生まれの患者さん

昔は明治生まれの患者さんも時々診たが、今はほぼ皆無である。この数年は診たことがない。

 

大正生まれながら、普通に徒歩で来院する男性患者さんがいる。彼は1か月に1回受診し、デパスとハルシオンだけ処方されている。もう長い間、たぶん30年以上であろうが、ずっと服薬しているのである。全く認知症はなく、自転車も乗れるくらいなので介護保険も非該当である。

 

彼の場合、自分が診察するようになって、何度か他の薬も試みたが、この2剤より良いものはなかった。試行錯誤後は変更する理由もなかった。

 

彼の話では、小学校頃の同級生の男性で今も生存しているの自分だけと言う。数年前まで自分以外の男性が1名いたが、当時、寝たきりでここ最近亡くなったらしい。彼は子供の頃はクラスの中で最も体が弱かったと言う。若い頃は結核を患うほどであった。しかし塞翁が馬で、そのために兵隊にとられることがなかった。この「塞翁が馬」はまさに故事通りである。

 

 

上の記事では統合失調症と東洋医学的な話を紹介しているが、彼の場合、元々虚証だったために長生きできたと言わざるを得ない。

 

精神科医から診ると、特にアルツハイマー型認知症は何らかの精神科疾患から発展するより、その人の遺伝子的な要因が大きいように見える。

 

アルコール依存症の場合、アルコールの神経毒性と生活の乱れに由来する生活習慣病から脳血管性などの認知症に発展しうる。しかしこれはアルツハイマー型認知症が生じたわけではない。

 

そもそも重いアルコール依存症の場合、何らかの身体疾患(急性膵炎や重い糖尿病)、事故(川に落ちたなど)、自殺などで認知症が明確になる前に亡くなるケースも多くなる。

 

統合失調症はどうなのかというと、典型的なアルツハイマー型認知症に至る人はいないわけではないが、一般人口よりおそらくかなり稀だと思う。未だかつてそういう人を2名しか知らない。たぶん、統合失調症は狭義の認知症になりにくいのであろう。

 

統合失調症はかつて早発性痴呆と言われたが、これは狭義の認知症ではなく、精神病による精神の荒廃を言っているのだと思う。だから若い患者でもそう呼んだのである。

 

そのように考えていくと、彼らがずっと服薬してること考慮すれば、向精神薬自体はそこまで認知症に至らしめないように見えるのである。

 

参考