新型肺炎と日本人のセーフティーネット | kyupinの日記 気が向けば更新

新型肺炎と日本人のセーフティーネット

最近は新型肺炎の話が多い。いつもちょっとだけ精神科のことに触れている。なぜ多く記事を書いているかというと、近未来の日本人の精神衛生について本当に心配しているからである。

 

現在、日本では「新型肺炎にかかっているのでは?」と思った時、一定の条件が揃わないとPCR検査が受けられない。咳、高熱が続いていてもPCR検査が受けられず、体調が悪い上に不安も強くなるといったニュースが報道されている。

 

希望者の全てにPCR検査が3000円くらいで受けられるようになったとしよう。これは国民の不安感を払拭し良いように見えるが、次々と困ることが起こることが予想される。

 

その理由は、現在の新型コロナのPCR検査は精度があまり高くないからである。これはクルーズ船の下船者の陽性患者をみてもそれがわかる。今の検査精度では、偽陽性や偽陰性がかなりの確率で出ると言われている。

 

偽陰性とは、実際は陽性なのに陰性と判定されることである。熱や咳があり実は感染しているのに陰性と判定され、自分は大丈夫だと思って人が集まる場所に頻繁に出入りすれば、多くの人たちに感染させかねない。感染させなくても多くの人たちを濃厚接触者にさせるわけで、しばらく仕事ができないなどかなりの制約を受ける。偽陰性の判定は社会的影響が大きい。

 

逆に偽陽性(陰性なのに陽性とされること)だった場合も、実は何もする必要はないのに、本人だけでなく、家族や同じ職場の人たちが濃厚接触者として自宅待機になったり、ショップや飲食店の場合には、しばらく閉店しないといけないなど悪影響が甚大である。職場が病院だと、外来をしばらく閉めないといけなくなる。

 

また容易に検査ができるようになると、潜在的な陽性患者が多くの市中の病院クリニックに受診するのもよろしくない。たまたまそこにいた外来患者さんに加え、多くの医療従事者も濃厚感染者になるからである。また精神科の視点では、不安がって何度も多くの病院やクリニックを受診する人が必ず出てくるので、医療現場が大混乱することが予測される。

 

今や医療の破綻をいかに防ぐか、あるいは経済的損失をいかに抑えるかに対策の視点は変わってきている。

 

好都合なことに日本では新型肺炎死亡者があまり出ていない。検査体制が不十分で真の感染者数がわからないとは言え、死亡者数は嘘はつかない。日本人が果たして新型肺炎に強いかどうかは時間が経たないとわからないが、期待値的に最も良い対処方法はあると思われる。

 

現在の感染者数の数倍から10倍くらいの真の感染者数がいたとしても、死亡者は現実的には今の数なので、日本人口全体に比べ新型肺炎で死に至る人はほとんどいないと言えるレベルである。実際に80%の人は普通に風邪くらいで治癒すると言われている。新型肺炎は症状が軽く済む人が非常に多いことは重要である。

 

新型肺炎は肺にウイルス感染が及ぶと深刻になると言われている。高齢者は持病があることが多いし、その世代の喫煙率などの高さから肺が痛んでいる人が多く、予後が悪くなると思われる。子供たちはまだ肺がきれいだし、感染症全般に強いことも死亡率が低い理由である。

 

重篤な病態になるケースは、スペイン風邪の記事で記載したような過剰な免疫反応も関与しているように見える。ステロイドが入っている喘息薬が有効なのもそのような機序も関係していると思う。少なくとも若い世代は高齢者より重くならないと言われているので、免疫反応の規模もそこまではないと思われる。その理由は、今の若い世代はアレルギー反応は高齢者より過剰に起こりそうだからである。

 

現在、いかなる場所がよりリスキーか国民に周知されるようになった。当初の日本の甘い対応は、いかなる環境が悪いか良くわかってなかったことが大きい。

 

中長期的には、どのくらいのボリュームで感染症対策を行うかが議論されるようになるだろう。少なくとも、今の状況が良くないと思うのは、新型肺炎が感染症として過大評価されていることだと思う。

 

また、今のようにほぼすべての職種が思うように仕事ができず、多くの人の収入が減っていくと、近い将来、ウシジマ君や灰原さんが大活躍する状況になり、遂には経済的苦境から自殺者が続出すると思われる。社会的弱者ほど無収入になりやすいからである。

 

さて、現在は小中高校に長い春休みを取らせ、スポーツや音楽系コンサートは行わないか無観客で実施されている。また呼吸器系感染症を疑われる場合、安易に医療機関を受診せずしばらく家で安静にしておけと言われている。

 

これはある意味、もし新型肺炎だったら家族も感染したとしてもやむを得ないと言っているのである。これはパンデミックを少しでも抑え、医療機関が新型肺炎で機能しなくなるのを防いでいるとも言える。

 

これは期待値的な対処法で、細かい部分は犠牲にしたとしても、セーフティーネットを維持する手法である。これなど、日本という国がほぼ単一民族でなかったとしたら、けっこう難しいことではないかと思ったりする。

 

このように考えていくと、今の日本政府の国民への要請は、いかにもまとまりがなく首尾一貫していないように見えるが、最初の落とし処としては結構絶妙なのかもしれないと思う。これからイベント自粛が次第に緩められそうなのも悪くない。また、このように緩い対応ができるのも、新型肺炎はエボラ出血熱とは悪性度という点で全然異なるレベルなこともある。

 

日本経済が破綻し機能しなくなり、経済的苦境により、新型肺炎以上の死亡者が出る方がもっと重大だと思う。

 

時間が経てばより良い治療法が見つかると思われる。そう思う理由は、全世界が全力で治療法を研究しているからである。

 

今は新型コロナウイルスの真の疾患性と、国民の不安感のバランスが崩れている。