新型肺炎と精神科病院について
今回は、中国、武漢から始まった新型肺炎と精神科病院の話。このようなことはテレビや新聞でも話題にすらならない。
ここ数日のニュースを見ると、武漢からの帰国者やクルーズ船だけでなく、数週間前から既に日本国内でヒトからヒトへの感染が始まっているようである。
数年前、日本国内でもし新型インフルエンザのパンデミックが起こったら、精神科病院患者はどうするのか?と言った議論があった。
ここで整理したいが、その地域で精神科病院入院患者さんを入院を前提とした身体疾患を治療する場合、搬送できる総合病院は限られている。精神科に入院しているほどの精神症状がある患者さんは、総合病院内で精神科が併設されているとか、対応できる医療環境がないと引き受けてくれないのである。
例えば大人しいタイプの認知症やうつ病くらいだと総合病院でもおおむね問題ないと思われる。そういう患者さんでも拒絶する(基本受けない)総合病院が大半である。このようになる背景には、何か病院内で起こったら責任はだれがとるのか?といった問題も関係している。
うちの病院では、リエゾンで行っている総合病院でかなりの範囲の患者さんを受けてくれるので助かっている。ここがリエゾンを行うことの大きなメリットの1つだと思う。
リエゾンの医療サービスは結局は病院同士のギブ・アンド・テイクになっているのである。
引き受けてもらうとは言え、できるだけ迷惑のかからない程度の患者さんを搬送するようにする。このように記載すると、もし新型インフルエンザが精神科病院内で大流行したら、とんでもないことになるのがわかるであろう。
行政からの要請は、もし新型インフルエンザのパンデミックが起こったら、精神科病院患者さんは(どこの総合病院にも搬送せず)精神科病院内で治療してほしい、と言ったものであった。
実際のところ、それしかないようにも思う。
精神科医や病院職員は、命をかけて病院内で治療をしないといけないのか?と言う苦情が出たのは言うまでもない。というのは、ノロウイルス患者やインフルエンザ患者さんが院内で数名出ても大変なことになるからである。
精神科病院に長期入院する患者=病棟内の生活に援助や介助が必要なので、職員は自然に濃厚接触になる。
また、患者さんも衛生面など決まったルールを守れるだけの精神症状のレベルに達しない人たちが多いことも、悲惨な状況になりやすいのである。