眠剤の補助になりうる向精神薬、サプリメント | kyupinの日記 気が向けば更新

眠剤の補助になりうる向精神薬、サプリメント

近年は眠剤2剤制限のルールがあるので、不眠に対し多剤治療ができなくなっている。今日は一般の眠剤の補助になるような向精神薬、サプリメントを取り上げる。ここで言う一般の眠剤とは、ベルソムラ、マイスリー(ゾルピデム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、ロヒプノール(フルニトラゼパム)などをいう。(全ての眠剤は挙げていない)

 

また、眠剤のカテゴリーではないが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は催眠作用もあるが、ここでは取り上げない(デパス、ソラナックス、ワイパックス、セルシン、レキソタンなど)。これらは脳の同じような場所に親和性があり、薬理作用的に似ているからである。

 

〇抗精神病薬

セロクエル(ビプレッソ) レボトミン コントミン リスパダール液など。

 

セロクエル(クエチアピン)のマイルドな鎮静作用は眠剤の補助として使われやすい。その理由はEPSが出にくく忍容性の低い人にも処方しやすいからである。どのくらい用量が必要なのかは人による。セロクエルは統合失調症にしか適応がないが、さまざまな精神疾患に適応外処方されている。セロクエルは非定型抗精神病薬の中では比較的半減期が短い向精神薬なので、その点でも眠剤の補助に優れている。

 

なお、ビプレッソは眠前服薬を推奨されているが、添付文書には眠剤とは一言も書かれていない。ビプレッソの正確な効能効果は、双極性障害におけるうつ状態の改善である。就前1回処方なのはこの薬が眠いことと関係がある。セロクエルとビプレッソはなぜか服用感が違うようで、セロクエルの方が効き味が好きという人がけっこういる。(それどころか、ビプレッソの副作用で使えない人がいる)

 

セロクエル、ビプレッソの難点は糖尿病の人に使えないこと(禁忌)。

 

レボトミン、コントミンは非定型抗精神病薬でない古典的な鎮静系抗精神病薬である。副作用的に服薬できない人がセロクエルに比べて多いが、この2剤はセロクエルほどは体重増加がない。またセロクエルで中毒疹など診たことがないほどだが、コントミンは向精神薬の中でも中毒疹、光線過敏症が出やすい薬である。少量のレボトミンやコントミン追加で睡眠が良くなるなら悪くない選択である。この2剤は糖尿病の人にも処方できる。

 

リスパダール液は夜間の不眠や不穏によく使われているようだが、服薬するにはある程度のレベルの忍容性の高さが必要だと思う。夜間輪番でリスパダール液を服薬しすぎてアカシジアのために受診する人がいる。つまり、リスパダールは抗精神病作用を持つ薬なので、多くなりすぎるとかえって逆効果になるのである。

 

リスパダール液がこのように使われるのは鎮静作用があり、特に液剤だと効果が良いからである。同じような目的でセレネースも使われなくはないが、リスパダールは0.5、1、2mlといった風にパッケージされており使い易いため汎用されている。

 

他、ジプレキサザイディスやシクレストなども処方されることがあるが、頻度は低い。シクレストは鎮静の出方に個人差がかなりあるように思う。

 

〇抗うつ剤 

レスリン(トラゾドン)は不眠に対し定番と言える抗うつ剤である。うつ病で眠剤2種類で効かない人では勧められやすい薬だと思う。この薬は抗うつ作用は弱いが睡眠の改善にはかなり良い人がいる。またそのような人にはうつにも治療的に見える。難点は既にサインバルタ+SSRIなどの処方をされている人たちは2剤制限のために1つ止めないといけないこと。レスリンは抗うつ剤でも効果が弱いためか、統合失調症の人たちに使っても精神症状を乱さないことが多い。しかし、統合失調症の人にレスリンを処方しても眠剤的な効果が弱い。

 

リフレックス(ミルタザピン)も眠剤的に処方されることが多い抗うつ剤である。ただし、正式?な抗うつ剤なので、うつがあるならともかく、うつがない人たちには補助的に使いにくい。またたいした催眠作用もないように見える。リエゾンで既にリフレックスを処方されている人たちは、不眠も合併し眠剤も併用されていることが多い。このようなことから、おそらく眠剤の補助として、リフレックスよりレスリンの方がまだマシなのだろうと思う。

 

他、トリプタノールなども鎮静的な抗うつ剤だが、副作用も多いため昔ほどは使われなくなった。

 

〇抗ヒスタミン薬系

ヒベルナは精神科では抗精神病薬のEPSに対して処方された歴史があるが、本来、抗ヒスタミン剤である。抗ヒスタミン剤は眠いことが多い。これは市販の風邪薬を買って飲むと気付くと思う。アレルギー性鼻炎の薬は昔はこのタイプの薬しかなく眠さの副作用が出やすかったが、アレグラやザイザルは眠さが出にくい。市販されているエスエス製薬のドリエルは抗ヒスタミン剤タイプである。抗ヒスタミン剤は長期だと慣れてしまうので眠剤としては良くはないが、補助的には使えるといったところか。酔い止め、メニエール症候群の薬のトラベルミンもこのタイプである。かなり昔のことだが、精神科病院の夜間不眠の約束処方にPL顆粒があったのにはビックリだった。これも同じような使い方である。

 

〇アルコール

これは推奨されない併用である。よく言われるのが、「寝酒をするくらいなら普通に眠剤を飲んで寝た方が遥かにマシ」というものがある。アルコールは肝臓など身体だけでなく、脳への悪影響も大きい。全てが劣化するといった感じ。重度の薬物の後遺症、例えば覚醒剤、シンナーなどは深刻な不眠になることが比較的多い。ある患者さんが言うには、眠剤をアルコールで飲まないと全然効かないのだそうだ。これだけ聞いても、いかに薬物が脳に悪いのかがわかる。

 

〇サプリメント系

これはかなり種類が多い。例えば、レスキューレメディを就前に併用するとよく眠れる人がいる。ただし、レスキューレメディの効果が得られるためにはある程度の安定した精神状態が必要だと思う。つまり、抗精神病薬が必要なほどの精神病状態には意味がない。

 

レスキューレメディにはバッチフラワーレスキューナイトという銘柄?がある。不眠の原因にもよると思うが、レスキューレメディとあまり差がない。ずっと以前はレスキューレメディは単独で使うなら良いが、西洋薬の眠剤(例えばロヒプノール)を服用していたら、あまり意味がないのではないかと思っていた。しかし、不眠の原因(例えばフラシュバック的な交感神経興奮)などによれば、併用でも治療的なのである。

 

(この記事は目に触れやすいようにセロクエル、ビプレッソのテーマに入れました。