医師が舌打ちした話 | kyupinの日記 気が向けば更新

医師が舌打ちした話

精神科では向精神薬だけでなく他科の薬も処方される。例えば下剤などの副作用を緩和する薬だけでなく、降圧剤や高脂血症薬、泌尿器系の薬、骨粗鬆症の薬などもそうである。

 

胃腸系の薬はともかく、例えば糖尿病薬を扱うのは精神科医には荷が重い。これらの薬は日々進歩しているし、どのくらいの強さで治療するか感覚がつかめないからである。これは専門外なのやむを得ない。

 

ここ20年くらいで併用薬が増えた理由は、患者さんの高齢化によるところが大きい。少子高齢化はこのようなことにも影響している。成人病のために患者さんは向精神薬のみの服薬では済まなくなっているのである。

 

たまに75歳の人がSSRIだけ服用していて内科薬を服用しておらず、他科受診も全くない人がいる。このような人たちは何らかの精神疾患があるとしても、かなり健康で体の出来が良いと言える。

 

精神科薬に内科、外科、整形外科などの薬が加わる理由の1つは、患者さんがいくつもの病院を受診するのが面倒になるからであろう。例えば2つの病院を1日で受診する場合、まず1日仕事になる。これだと精神科で処方をまとめたいと思う気持ちはわかる。自分も同じことを思うだろうから。単科の精神科病院はなんだかんだ言って外来であまり待たない。

 

自分の患者さんの若い世代(40歳以下)の人で、内科医や外科医などの医師から診察中、「舌打ちされた」ために、全ての薬をここで処方してほしいと希望したことがあった。似たような理由として、目の前で外来担当医が急に怒り出したと言うものもある。

 

これは患者さん1名ならともかく、数名同じようなことを言っているので、どのような状況で起ったのか調査したいところである。

 

いったい患者さんの目の前で舌打ちする医師がいるのか?というのもある。

 

先日、「精神科医は平均してあまりえらそうにしていない」と言う記事をアップしている。このようになる理由の1つは、いつも精神科医が周囲からどのように見られているのか注意していることもある。いかなる状況であれ患者さんに舌打ちなどできない。

 

医師が舌打ちした状況についてたまたま周囲にいた人から聴取すると、なるほどと思うことがあった。患者さんの方が明らかに失礼と思われるやりとりがあるからである。

 

これは患者さん側の問題点として、医師の気持ちを汲み取れないまま結果的に失礼な言葉を発したり、態度をとったりすることがある。この原因は心の理論も関係ありそうである。精神科以外の医師ではこのタイプの耐性ができていないので、トラブルになりやすい。

 

この耐性は結局は精神疾患の「疾患性の理解」の有無にも関係している。精神科医はなぜその人がそのような対応をするのか比較的わかっている上に予測もできるので、診察のやりとりが穏やかになりやすいのであろう。

 

時に医師のその舌打ちも実際にあったかどうか疑わしいことがある。一部の患者さんは相手の心の動きを読めないなどがあり、とっさの表情の動きを誤解することがあるからである。過去ログでは「真に困ったとき複雑な笑みになる」話が出てくる。

 

参考

真に困ったとき、複雑な笑みになる話