レキサルティとエビリファイはどちらがスタビライザー的なのか? | kyupinの日記 気が向けば更新

レキサルティとエビリファイはどちらがスタビライザー的なのか?

レキサルティはエビリファイから発展した非定型抗精神病薬だが、その薬効は意外に相違がありあまり似ていない。今回は、レキサルティとエビリファイはどちらがよりスタビライザー的なのか?という話。

 

この2剤の処方時の印象を挙げてみる。

 

○躁状態にはエビリファイの大量が効きそう。

躁状態にエビリファイの大量を最初から処方すると鎮静的に作用する。しかし、レキサルティの上限2㎎はそこまで鎮静的ではなく、躁状態にレキサルティを投与した場合、最高量投与したとしてもエビリファイの大量ほどの鎮静は難しいのではないかと思われる。

 

○情緒不安定にはレキサルティも良い。

情緒不安定な人たちに対し、レキサルティが落ち着きをもたらすことは良く診る。例えばある女性患者さんの服薬後の感想(0.5㎎服薬)

 

レキサルティを服薬して以降泣かなくなった。情緒不安定がなくなった。家族に対する怒りが減った。気分は上がっていると感じないが、鬱々とした感覚がない。

 

精神科でスタビライザー的と言う場合、双極性障害、とりわけ躁状態への薬理作用を言うことが多い。これは一般の日本語(日常語?)とは異なっている。「躁状態にはエビリファイの大量が効きそう」であれば、エビリファイはレキサルティよりスタビライザー作用が強いと言える。

 

なお、「レキサルティを服薬して以降泣かなくなった」は、日常語的にはスタビライザー的なものだが、精神科で言う狭義のスタビライザー的と言えるかは微妙だと思う。

 

「気分は上がっていると感じないが、鬱々とした感覚がない。」は、うつ状態における鬱陶しい感覚が改善していると言っているわけで、ラミクタールの薬理作用に似ている。うつ状態への効果ながらスタビライザー的である。

 

特に重要な点は、ラミクタールの少量よりレキサルティの少量の賦活作用の方がずっと大きいことであろう。(ラミクタールもレキサルティも服薬できる人はおしなべてそう言う)

 

これらを整理すると、エビリファイとレキサルティの相違は、躁状態での効果の期待値が、エビリファイの方がずっと大きいこと。これは上限のエビリファイ30㎎とレキサルティ2㎎のパワーの相違でもある。

 

それに対し低用量での実感できる作用はレキサルティがずっと上回る。これはD2遮断作用はレキサルティの方が上回り副作用の出現も抑える薬理作用を持つことが大きい。少量だと、エビリファイはいくらかまとまりがつかないのである。(レキサルティとエビリファイを使い慣れると、エビリファイのこの欠点に気付く)

 

前半に挙げた、

レキサルティを服薬して以降泣かなくなった。情緒不安定がなくなった。家族に対する怒りが減った。気分は上がっていると感じないが、鬱々とした感覚がない。

 

だが、レキサルティのたった0.5㎎でここまでの結果が出ているが、エビリファイの少量だとおそらくこのレベルのパフォーマンスは難しい。逆にエビリファイだと「家族に対する怒りが減った」は逆の結果すらありえる。これはレキサルティのスタビライザー作用と言うより、真の抗精神病作用、「(器質性)妄想様思考の減少」をもたらしているものと思われる。

 

異なる視点では、エビリファイは少量だと真にドパミンライクな振る舞いにより抗うつ作用を発現するが、スタビライザー的とは言えない。しかしレキサルティは、ドパミンライクの振る舞いに加え、より抗精神病薬的な薬理作用により情緒不安定を改善する。

 

「少量のエビリファイは散漫だが、レキサルティは少量でもコンパクトにまとまっている」とも言える。このような相違があるから、この2剤はそれほどは似ていないと思うのだろう。

 

これらのことから、エビリファイよりレキサルティの方が遥かに優れていると思うかもしれないが、臨床ではそう簡単なものではない。エビリファイの方がレキサルティよりずっと良いと言う人たちもいる。

 

おそらくエビリファイは操作的あるいは人工的ではないのである。

 

レキサルティは微妙に薬理作用がコントロールされている上に、その幅(効果の幅的なもの)がそこまでないので、薬に敏感な人は違和感をおぼえたり、かえって悪化していると思う人もいる。レキサルティは非定型抗精神病薬として完成され過ぎているのかもしれない。

 

一部の患者さんに、エビリファイとレキサルティを一緒に服用した方が良いと言う人たちがいる。これはエビリファイがレキサルティの薬効(特にD2)を打ち消すように働き、バランスがとれるのではないかと思われる(私見)。つまりレキサルティのやり過ぎを抑制しているのだろう。

 

異なる視点から言えば、エビリファイとレキサルティは相補的になっていると言える。つまりD2はエビリファイがレギュレーションし、一方、レキサルティはD2作用を減損されているものの、それ以外のレセプターへの効果により抗精神病作用をもたらしているのであろう。

 

だからこそ、レキサルティはエビリファイより従来の非定型抗精神病薬のように見えるのである。レキサルティはエビリファイより多くの作用点を持ち合わせているのだろう。

 

 

補記

https://helps.ameba.jp/faq/blog/neweditor/post_1030.html


を参考にしてもどうしても文字色が変更できない。パソコンの問題なのか?