精神科のジェネリック医薬品の考え方 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科のジェネリック医薬品の考え方

患者さんは安いのであれば後発医薬品(ジェネリック)でもよいと言う人の方が多い。実際、経験的にジェネリックに変更しても何ら変わりがないことの方が多いからである(多い言うよりほとんど全て)。

 

ところが医師に先発品信仰がある人たちが少なからずおり、先発品をできるだけ処方しようとする。それどころか先発品しか処方しないことをウリにしている病院、クリニックがあるほどである。

 

日本ジェネリック医薬品協会によると、

 

ジェネリック医薬品は、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使っており、品質、効き目、安全性が同等なおくすりです。

 

とアナウンスしているが厳密には異なる。その理由は製造方法に特許があり迂回して製造するとか、剤型に特許があって異なる剤型で発売せねばならないからである。また賦形剤が異なっていることが多い。

 

僕の患者さんでハルシオンでは起こらないのに、トリアゾラムで中毒疹が出た人が2名いる。しかもそのうち1名は、まさかそんなことはないだろう?と思い、2か月後に再処方するとなんとまた出たのである。

 

なぜ1回失敗(ないし失敗したかもしれない)したものをまた処方したかというと、生活保護受給中で指導され、先発品が使いにくかったためである。

 

これは賦形剤の相違から生じた可能性が大きく、ジェネリックメーカーを変えたらあるいは出なかったかもしれない。しかし経営的にも数種類のジェネリックメーカーの同じ医薬品を準備することなどできない。

 

精神科のジェネリック医薬品は先発品とほとんど差異がないものと、相違が出やすいものがある。例えば、元々温和で副作用が少ないセロクエル(クエチアピン)やデパケン(バルプロ酸Na)は服用感の違いが患者さんに感じられにくく、また効果も差がないことが多い。

 

しかし抗不安作用にかかわる薬は眠剤も含め、微妙にイライラ感が出たり、服用感が悪かったりするようである。それでも20人に1人くらいなので、概ね95%はパスしている。

 

一部に先発品を求めて放浪している人たちがおり、うちの病院にもよく流れ着く。彼ら(彼女ら)は、ジェネリックで副作用らしきものが出たり、効果が不十分か、服用感が悪かったために先発品を求めているのである。

 

ソラナックス、ワイパックス、ハルシオン、ユーロジン、デパス、ジプレキサ、リスパダール、セロクエル、ルーラン、エビリファイ、レスリン、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフトなどはそういう人たちのために先発品とジェネリックを両方準備している。しかしものによれば、先発品だけとかジェネリックだけのものもある。トロペロン、セレネースなどは、今はジェネリックしか扱っていない。

 

ここ5年くらいで最も驚いたのは、ジプレキサのジェネリック(オランザピン)で著しく幻覚妄想が悪化したケースである。これも生活保護なので変更せざるを得なかった。

 

オランザピンでは元々落ち着いていたのに、「自分は妊娠している」などの荒唐無稽な幻覚妄想が惹起するのである(本人は60歳くらい)。これはたまたまそう見えたのかもしれないと思い、3か月後に再トライしたところ、不思議なことに同じ幻覚妄想が出現した。それ以外の不穏状態、暴言、放浪なども悪化していたため、一時、従来に比べ2倍まで増量したものジェネリックではうまくコントロールができなかった。この患者さんはジプレキサに戻すと速やかに穏やかになった。この患者さんは訪問看護やデイケアでも診ていたので、その相違は十分というほどわかったのである。

 

ところが、この人以外のオランザピン処方の人たちは、ほぼ問題なく移行できている。

 

つまり、ジェネリックに変更して病状が悪化したり中毒疹が出る人は処方できないが、そうでない人はできるだけジェネリックに移行した方が良い。その理由は品質的にそこまで大きな差はないからである。

 

日本の医療費は年々増加しており、ジェネリック医薬品を積極的に使っていかないと、財政破綻に至りかねない状況にある。