統合失調症は果たして軽症化しているのかという議論 | kyupinの日記 気が向けば更新

統合失調症は果たして軽症化しているのかという議論

過去ログで統合失調症は次第に軽症化している話に触れている。しかしながら、30年くらい前の精神病院の様子を知らない若い世代の精神科医は、果たして軽症化しているのかよくわからないのではないかと思う。

 

実際、統合失調症が軽症化しているのか?というアンケートを取ると、むしろ重くなっているという精神科医もいる。

 

なぜそのように意見がわかれるのか、僕は良くわかるのよね。

 

一応整理しておくと、軽症化しているという理由としてよく早期の介入などを挙げる精神科医もいるが、実はその部分はさほど大きくはないと考えている(私見)。

 

だいたい、統合失調症の軽症化は抗精神病薬が発見される以前から始まっているからである(つまりコントミン以前)。

 

その後、新規抗精神病薬が発売されて以降、副作用の軽減とともに極端に重く見える人が減少してきたのも事実である。なぜなら古典的抗精神病薬の錐体外路症状などが統合失調症という精神疾患の重さを脚色し、一層重篤に見せていたからである。

 

ここ15年くらいに限れば、新規抗精神病薬で治療されることが一般化したため、薬物の進歩の部分はいくらか減じ、相対的に統合失調症という疾患の複雑化から治療が難しい人が増えてきているようにも見える。

 

一般に言えることだが、精神科のICD10DSM5の操作的診断名がいくつも付いている人たちは、広汎性発達障害の色彩が強い。

 

これらは統合失調症と診断されていたとしても、古典的中核群の統合失調症とは異なるように思うが、今は幻聴があるとか被害妄想があるなどの視点で診断されるので、操作的に統合失調症と診断されてもやむを得ない。

 

たとえば過去ログで器質性荒廃などと記述しているような人たちである。このような人たちは若いうちから急激に荒廃が進むので、彼らを見る限り統合失調症が軽症化しているようには見えない。

 

一部の精神科医が「統合失調症はむしろ重くなっている」と指摘するのは、診断法にかかわる部分が大きいと思っている。

 

一方、表情的にあるいは目の動きなど抽象的な部分で、まったく統合失調症には見えない人が統合失調症と操作的に診断されており、このような人たちは完治もあり得るので、軽症化していると言わざるを得ない。

 

彼らは実は中核的な統合失調症ではなく、たぶん遺伝子的にも古典的な統合失調症とは異なるのではないかと考えている。(私見)

 

これらをまとめると、四半世紀単位で見ると統合失調症という精神疾患は軽症化しているのは間違いない。

 

一方、操作的診断法がとられるようになったことや、広汎性発達障害の相対的な増加から、ノイズのような中核的ではない人たちが増えてきたことで重篤化した人やかなり軽く見える人も増えている。

 

その視点で、ここ15年くらいでは統合失調症が軽症化した実感が持てない精神科医もいるのではないかと思う。

 

参考

器質性荒廃

統合失調症の荒廃と器質性荒廃の相違点

アスペルガーと前頭前野