統合失調症の興奮状態にリーマスを処方した際、長期的に必要なのか | kyupinの日記 気が向けば更新

統合失調症の興奮状態にリーマスを処方した際、長期的に必要なのか

今回は、確定的なものではなく私見を交えた話。

 

統合失調症の興奮状態で、大量の抗精神病薬やデパケンなどで収まらず、時間がかかりそうな際、リーマスを併用することがある。これはレセプト的には躁状態と記載すれば問題ない。

 

リーマスの問題点は1つは腎臓に負担をかけること、また比較的錠剤の数が多くなるとか、速やかに効果が出ず2週間以上かかることなどがある。他、長期的には細かい振戦が出ることなど。したがって高齢者には相当に処方しにくい。妊娠中も禁忌である。

 

リーマスは短期決戦ではないが、1か月決着しないとしたら、リーマスは無効か、この人には不適切なことがわかるので、比較的短期に判明する方針と考えられる。

 

統合失調症でも非定型精神病ないし双極性障害の要素が強い人、あるいは、家族歴に双極性障害がいる人などでは、リーマスが奏功し、抗精神病薬がさほど必要でなくなる人がいる。これはリーマスにより良好な経過になった人たちである。

 

いったん症状が寛解し、リーマスの服用を続けている統合失調症の人では、リーマスの必要性が微妙になる。元々、リーマスは統合失調症の薬ではないからである。多少振戦が出ていても、中年以降の非定型精神病の要素がある、あるいは家族システムを持つ人では、リーマスを継続した方が無難なことも多い。

 

なぜなら、いったん爆発的に興奮状態が生じた場合、まずくすると1年くらい入院を要することがあるからである。それはその人の限られた人生の無駄使いに等しい。

 

問題は、比較的若い人で双極2型もどきの経過を持つ統合失調症の診断が付けられているケース。

 

このような人はいったいどのような経緯でリーマスが併用されるようになったのか不明なことがある。ある日、その若い女性にリーマスが使われていた理由がわからないので漸減することを提案した。

 

すると、リーマスを減らすと、ややうつ転したのである。したがって、前医はうつに対しリーマスを併用していたことがわかった。もちろん、今だったらリフレックスもよく使われるが、リーマスと言うのがプロフェッショナルだと思う。

 

その理由は、双極性障害の要素を持つ統合失調症の人は、抗うつ剤、特に今だったらサインバルタなどを投与すると不安定要因になりうるからである。まだリフレックスはマシである。

 

ただし、その女性は結婚、妊娠を視野に入れていたので、本人に理由を説明しリーマスを漸減中止し、ラミクタールとエビリファイに変更している。

 

これで従来より、うつも含め自覚症状が改善したと言う。ラミクタールもエビリファイも躁転にはリーマスより力が弱いと思うが、長期に診ないとわからないものの、双極2型程度であればなんとかなる可能性の方が高い。

 

また、ラミクタールとエビリファイは催奇形性がリーマスよりずっと少ないとされる薬物である。(妊娠初期には薬ゼロかラミクタールだけ服薬が理想)

 

今回は統合失調症とリーマスの話だが、精神科医がいったいどんなふうに考えて治療しているのかも含め紹介している。

 

(おわり)