抗精神病薬注射剤の等価換算表 | kyupinの日記 気が向けば更新

抗精神病薬注射剤の等価換算表

 

今回、抗精神病薬の注射剤(持続性抗精神病薬も含む)の等価換算表をアップしてみた。これはヤンセンファーマ株式会社によるパンフレットだが、過去の稲垣、稲田先生による論文がソースである。

 

上の持続性抗精神病薬の表は2010年版なので、エビリファイLAIやゼプリオンは記載されていない。

 

リスパダールコンスタは2週ごとに筋注する製剤だが、2週ごとに50㎎筋注する人は、概ね毎日5㎎服薬する換算になる。25㎎の人は2.5㎎である。

 

過去ログで毎月ネオペリドール100㎎筋注するのは、概ね毎日6㎎服薬しているのと同じと記載しているが、上の換算表もほぼ同じでほぼ6.6㎎に相当する(セレネース)。

 

フルデカシン(フルフェナジン=フルメジン)は現在の持続性抗精神病薬は1か月ごとにするようになっている。ところが、上の表では2週ごとに換算されており、ひょっとしたら古いタイプの持続性筋注製剤(アナテンゾールデポー)のことではないかと思われる。これはエナント酸フルフェナジンと言われ、2週間に1度筋注が不便すぎることと、フルフェナジン自体があまり処方されなかったこともあり、ほとんど使われなかった。これと混同されているのかもしれない。

 

下の表は普通の筋注ないし静注製剤であるが、一部、換算が奇妙なものになっている。ドグマチール(スルピリド)、およびPZC(パーフェナジン)はほとんど注射剤では使われない。セレネース(ハロペリドール)は1アンプル5㎎は10㎎内服換算になっているが、これは概ね臨床でもその程度と思われる。コントミンとレボトミンも概ね上の換算程度だと思われる。プロクロルペラジンはノバミンのことだが、僕は使ったことがない。

 

チミペロン(トロペロン)の換算はかなり奇妙なものになっている。4㎎筋注(または静注)が28㎎内服になっているが、トロペロンは3アンプル筋注するケースもあるわけで、この換算だと、80㎎を超えてしまう。トロペロンは重いうつ状態の人にも1アンプルくらいなら筋注しやすいことを考慮すると、あまりにも臨床の実感と異なる。

 

そもそもトロペロンは添付文書的には1日12㎎までと記載されており、また適宜増減可能なので24㎎まで投与できる。しかしトロペロンは統合失調症の重い人でもせいぜい18㎎程度しか投与しないので、1アンプルでさえ内服薬換算すると、あり得ない用量に達している。

 

なお、持続性抗精神病薬、エビリファイLAIの最高量は400㎎であるが、大塚製薬によると、400㎎筋注では、毎日15㎎内服しているのと同等だという。

 

しかし臨床では、400㎎筋注では著しく副作用が出るため(錐体外路症状)、やむなくエビリファイOD24㎎に切り替えたところ、かなり副作用が軽減することがある。したがって門脈を通らず、いきなり脳に達するLAIはかなり作用規模が異なる印象である。

 

エビリファイLAIは400㎎筋注してしまうと、当初の数か月はともかく、高薬価なので15㎎相当とは言え内服でエビリファイは追加しにくい。したがってこのような人は内服で30㎎投与した方が良い。その方がジストニアが出た際にも対処しやすいし医療経済的にも好ましいと思われる。

 

エビリファイLAIを処方する価値があるケースは、忍容性が低いもののエビリファイなら継続でき、拒薬が強く退院させると全く服薬しない人である。