うつ病性亜昏迷と意識障害について | kyupinの日記 気が向けば更新

うつ病性亜昏迷と意識障害について

妄想を伴う年配の人のうつ病は、妄想を伴う「うつ病」と診断する精神科医と「非定型精神病」と診断する精神科医にわかれる。患者さんが年配の人の場合、統合失調症と診断する精神科医もいるかもしれないが、稀だと思う。

 

医師によれば、妄想の内容を吟味し診断を決める人もいる。自分はそのタイプである。つまり妄想の内容が、うつから来る二次妄想的であることが明確な人はうつ病の診断でかまわないが、妄想に荒唐無稽の要素が含まれているケースでは、非定型精神病的な印象を重視する。これらは今後の治療方針に影響する。

 

このいずれのタイプのうつ状態も、亜昏迷に至ることが稀ではないことは重要だと思う。

 

精神科では、うつ病性に限らず昏迷は意識障害がないのが一般的である。教科書的にも試験対策的にも、うつ病の昏迷には意識障害がない。声掛けしても反応がなく意思疎通ができないケースもそうである。実際、診ている限り意識障害はないように見える。

 

ところが、非定型精神病性の昏迷~亜昏迷では、明らかに意識障害があるように見えることも多い。これらは、既に悪性症候群ないし、非定型精神病性の破綻状態に至りかけているケースであり、何らかの炎症性要素も診てとれる。つまり非定型精神病は身体的要素も少なからず関与するが、これら症状精神病性の影響が及ぶために、意識障害を来すのだと思われる。

 

これは臨床の実際を反映しており、教科書的にも辻褄が合う考え方だと思う。

 

あるとき、年配者のうつ状態を治療中に、次第に亜昏迷に至った患者さんがいた。家族は体が悪いと思い内科に受診したところ、検査所見に異常がなく、胸部レントゲンや心電図なども異常がなかった。家族が精神科にかかっているというと、その薬の内容を見て、その内科医は、「薬の副作用でしょう」と言ったらしい。

 

全く迷惑な話である。これこそ誤診といってよい。その人には抗うつ剤と眠剤しか処方されていなかったのである。(これに対し、この記事の最初の部分は誤診とは言わない)

 

ところが興味深いことに、家族はすぐに内科医が間違っていると思ったらしい。その理由は、その婦人が発病し、次第に悪くなっていく様子をリアルタイムで見ていたからである。

 

亜昏迷になると、本人はどうしようもないため、家族がどのように判断するか非常に重要である。

 

その理由は、うつ病性昏迷~亜昏迷は、一見、全く動けないように見えても自殺既遂も十分にありうる重大な病態だからである。