ストレス耐性 | kyupinの日記 気が向けば更新

ストレス耐性

今回は、「九条良源のブログ」の「うつ病は甘えではなく「未熟」なのだ」というエントリにインスパイアされた記事である。

日本の会社は長く、悪く言えば軍隊式、良く言えば簡単には解雇されない終身雇用を基本としていた。

アメリカでは、ある街が気に入ったら、その街に転居し、その場所で働ける会社を探す話を聴いたことがある。日本では信じられないことである。

会社の都合で、社員に単身赴任を簡単に強いるのは、世界でも日本が飛びぬけて多いのではないかと思われる。つまり、会社は軍隊なのである。

バブル末期(1980年代後半)、非常に景気が良かったこともあり、非常勤の雇用形態でも結構なサラリーが得られた。当時、フリーターは急に転勤を命じられることもなく、辞めても文句は言われないため、憧れる若者も多かった。

フリーターは現在のような低賃金、不安定なイメージさほどはなかったような気がする。

普通、軍隊の規律内で就労するのはストレスフルである。雇用の保証がある代償に、かなりの時間を束縛される環境には、多くの若者は耐えられない。

それは昭和の時代に生きてきた人たちには、甘えに見えるかもしれない。しかし、現在社会ではそういう若者が多すぎて、会社のあらゆる活動を安定させるために、十分な配慮なしではおれない状況になっている。

つまり軍隊式では、会社は回っていかないのである。回っていかないのであれば、そのために会社の売り上げや収益が下がることになるので、回るように考慮するしかない。それは収益を目的としない市役所や県庁などの公務員も同様である。

同じ日本人でもバブル前くらいに就職した人と、ここ10年くらいに就職した人では、全くストレス耐性が異なる。これはいかなるものが影響しているのか簡単には言えない。見かけ上明らかに異なるので、日本人、あるいは日本社会で何かが変わったのであろう。

何らかの精神疾患で会社を休むようになると、会社の人事?の責任者が、その社員がいかなる状態であり、どのような見通しなのかを聴くために来院されることがある。「されることがある」と書いたのは、そういうアクションがない会社もあるからである。

近年、良く感じるのは、会社側は社員に何らかの精神疾患が生じると、なんとか継続雇用ができるようにできる限りの努力していること。本人が絶対辞めると言っているのに、それでもなお、そうならないように努力しているのである。従って、主治医のアドバイスもかなりの部分、受け入れられることが多い。

これは、会社内の人間関係やその他、業務上の理由で自殺者などが出ると、マスコミや一般世論の会社へのパッシングが厳しくなったことも無関係ではないように思う。

関東などから地方に転勤になると、県民性も全く異なることがあるし、同じ会社でも就労環境や人の上下関係の厳しさが違う。そのようなことで簡単にダウンするので、会社も大変だと思う。とりあえず、休職者の補充ができないことが多いからである。

主治医が何とか部署変更や転勤などで一変する可能性が高いことを説明すると、大企業ほど配慮し、主治医の希望通りになる。

主治医の要望に受け入れてほしい理由は、なんだかんだ言って、現代の元軍隊的会社では、適応障害的な不安障害、うつが多いからである。環境の調整で良くなるなら、その方がずっと良い。

適応障害は、精神科では精神保健福祉手帳すら受給できない疾患であり、短期間で治癒に近くなることが大半である。

このような環境変化により精神への変調を来す人が多くなったのは、今の日本人はストレス耐性が低くなったことに由来する。今の若者は昔の社員と全然違うという話をすると、面白いほど会社の上司は理解してくれる。これは実感的に、そうだからだと思う。

そういえば、過去ログに出てくる脳神経外科の友人が面白いことを話していた。今の研修医の指導にはマニュアルがあり、頭ごなしに叱責しないとか、教える側にもかなり配慮を要求していると言う。

また、うまく研修が終えられない研修医が出ると、その研修医の責任ではなく、研修病院側の責任になるらしい。

彼によると、医師の業務や社会に対する責任を考えるに、これは本末転倒ではないかと。(笑)

彼は、今の研修医に留年がないのはおかしいと指摘していた。このような話を聴くと、一般の会社に限らず医師の世界も大差はないことがわかる。

参考
僕の勤めている会社はブラック企業なんですよ・・
人をうつに陥れる達人