不安障害とアモキサン | kyupinの日記 気が向けば更新

不安障害とアモキサン

過去ログにパニック障害にアモキサンが効いた話が出てくる。また、不安やパニックは今はSSRIが推奨されているが、アンプリットやトフラニール、あるいはアナフラニールなどの旧来の抗うつ剤も有効と言う記載もしている。

アモキサンはSSRIではない抗うつ剤の1つとして、今でも存在感のある抗うつ剤である。その理由だが、アモキサンは純粋にアップさせる効果が高いし、不安感などにも有効なことがあるからである。

ただし、アモキサンは古典的躁転を来しやすい。しかしながら、SSRI的な病状の紛れや複雑化は少ない抗うつ剤である。こんな風に書いていると少し不思議な感じがする。

例えば、これ以上処方できないようなベンゾジアゼピンの併用患者が転院してくることがある。このような処方、

ソラナックス 2.4㎎
デパス 3㎎
ジェイゾロフト 100㎎


ここに書いたデパス3㎎は1㎎錠の3回処方ではなく、0.5㎎の6回処方であり、つまり彼女は1日6回デパスを服薬している。こうなる理由はデパスは半減期が短いことも関係している。自分の感覚的には、この処方は精神科医としては恥だと思う。

その理由は、うまく病状をコントロールできていないからである。この処方は、その後、紆余曲折があり、一時レクサプロなども試みたがうまくいかず、

アモキサン 10㎎
ソラナックス 1.2㎎


という処方に落ち着き良好な状態を維持できている。つまり、アモキサンが有効だったのである。そういえば、自分の患者で、ジェイゾロフト100㎎の人はいないという記載が過去ログにある。

彼女はある時、

デパスはいらない。

と言った。この言葉は時々同じ内容のことを聴くことに気付いた。デパスは案外中止できるのである。

最近、ある不安障害+うつ状態の男性患者さんで、長くうまくコントロールできなかったが、アモキサンの併用により寛解状態を維持できるようになった。彼の処方が、

パキシルCR 37.5㎎
アモキサン 200㎎


である。彼の場合、極端に悪化したことはなく会社を休むまでは1度もなかったが、やっとうまくいったと言った感じ。自分の患者は、パキシルを使うことはあまりないので、かなり踏み込んだ処方と言える。最初、パキシルに上乗せでアモキサンを試みた時、彼が

アモキサンは効果も副作用も全然ないですね。

と言った瞬間、これは見込みがあると思った。深い根拠はないのだが。

副作用を感じないという言葉は、ジプレキサなどは良い兆候と言う記載が過去ログにある。あれとも少し感覚が異なるのだが。

彼は忍容性が高く、おそらくアモキサンは最高量の300㎎まで可能だと思う。今の副作用はどんなものがあるか聴くと、口渇があるんだそうだ。それも酷くはなく、また便秘はない。

また、パキシルCRの後にアモキサンを加えているので、もう少しパキシルCRは減量できそうに思われるが、慌てて減らしたりはしない。失敗した時に酷いことになりかねないからである。(急いで減らす根拠がない。またパキシルは減量が難しいことも関係している)

この処方はぐずぐずした不安感を一掃している。また、彼が、

もうデパスは必要ないです。


と言ったのである。この言葉は非常に面白いと思った。

ある時、もう10年くらい前だが、知り合いの精神科医に、アモキサンを300㎎使うことってありますか?

と質問したら、1名だけいると言う返事だった。どのような患者なのか聴くと、

どうしようもないようなボーダーラインの患者。

と言われたので、不安感にもアモキサンは結構効いているように思われる。しかも良く聴いてみると、アモキサン単剤らしい。ただし、必要な用量はかなり個人差があるような気がする。

一般に、ボーダーラインの患者に気分安定化薬を使わず、抗うつ剤だけで治療しようとすると碌な結果にならない。だから、この「どうしようもないようなボーダーライン」と言う人物がいかなる精神症状を持つ人なのか少し興味を持ったが、酒の場だったので、それ以上聴いていない。

いずれにせよ、いかなる精神疾患も、治療に困った時には先入観や常識的手法にとらわれず、視野を広く持ち治療を進めることが必要だと思う。

参考
アモキサンのテーマ
レクサプロのテーマ