アメリカのパキシルCRの承認状況 | kyupinの日記 気が向けば更新

アメリカのパキシルCRの承認状況

日本では現在、パキシル及びパキシルCRの添付文書での効能・効果が異なっている。

パキシルの効能・効果及び用法・用量
うつ病・うつ状態
通常、成人には1日1回夕食後、パロキセチンとして20~40mgを経口投与する。投与は1回10~20mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日40mgを超えない範囲で適宜増減する。

パニック障害
通常、成人には1日1回夕食後、パロキセチンとして30mgを経口投与する。投与は1回10mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日30mgを超えない範囲で適宜増減する。

強迫性障害
通常、成人には1日1回夕食後、パロキセチンとして40mgを経口投与する。投与は1回20mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日50mgを超えない範囲で適宜増減する。

社会不安障害
通常、成人には1日1回夕食後、パロキセチンとして20mgを経口投与する。投与は1回10mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日40mgを超えない範囲で適宜増減する。

パキシルの処方で注意点は、精神疾患によりきめられた上限が異なることである。また、5mg錠が発売されてはいるが、5mgから開始することはできないようになっている。非常に薬に弱い人の場合、5mgから開始して良いかどうかは、レセプトでコメントすれば良い県とそうでない県があるように思われる(ローカルな面)。添付文書上、開始の際に5mgという言葉が一言も出てこないので、査定されても仕方がないとは言える。

それに対しパキシルCRは効能・効果として、うつ病・うつ状態しか挙げられていない。

パキシルCRの用法・用量
通常、成人には1日1回夕食後、初期用量としてパロキセチン12.5mgを経口投与し、その後1週間以上かけて1日用量として25mgに増量する。なお、年齢、症状により1日50mgを超えない範囲で適宜増減するが、いずれも1日1回夕食後に投与することとし、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として12.5mgずつ行うこと。

添付文書的には、パキシルでは使えるが、パキシルCRは強迫性障害や社会不安障害などには使えないことになっている。

さて、ここでアメリカとオーストラリアのパキシルCRの承認状況について紹介したい。

アメリカ 商品名 Paxil CR
剤型;12.5、25、37.5mg
適応
大うつ病 1999年2月
パニック障害 2002年2月
社会不安障害 2003年10月
月経前不快気分障害 1999年5月

オーストラリア 商品名 Aropax CR
剤型;12.5、25mg
適応
大うつ病 2004年5月
パニック障害 2004年5月
社会不安障害 2005年7月
月経前不快気分障害 2005年7月

アメリカの添付文書上の記載は以下の通りである。

大うつ病性障害
パキシルCRは1日1回、通常は朝、空腹時または食後に投与すること。推奨初期用量は25mg/日である。12.5mg/日の幅で増量し、最大62.5mg/日までとすること。用量を変える場合は、少なくとも1週間の間隔をあけること。

パニック障害
パキシルCRは1日1回、通常は朝に投与すること。12.5mgから投与を開始すること。用量を変える場合は、少なくとも1週間の間隔をあけること。

社会不安障害

パキシルCRは1日1回、通常は朝、空腹時または食後に投与すること。推奨初期用量は12.5mg/日である。増量する場合は、少なくとも1週間の間隔をあけ12.5mg/日の幅とし、最大37.5mg/日までとすること。

月経前不快気分障害
パキシルCRは1日1回、通常は朝、空腹時または食後に投与すること。医師の判断により、月経周期を通じて連日投与しても、あるいは月経周期の黄体期のみに投与しても良い。推奨初期用量は12.5mg/日である。用量を変更する場合は、少なくとも1週間の間隔をあけること。

となっている。アメリカ、オーストラリアとも日本とは異なり、パキシルCRにも広く適応を認めていることと、月経前不快気分障害という疾患にも処方できることに注意したい。

また、他の重要な点として、アメリカでは強迫性障害にはパキシルには適応があり、最高60mgまで処方可能とされているが、パキシルCRには適応自体がない。

パキシルにのみ適応が認められ、パキシルCRには適応がない疾患(アメリカ)
全般性不安障害
PTSD
強迫性障害
糖尿病性ニューロパチー
頭痛
早漏

パキシルCRにのみ適応が認められ、パキシルには適応がない疾患
月経前不快気分障害

月経前不快気分障害の場合、黄体期のみ処方してもかまわないことになっている。これはパキシルの離脱症状が、CR錠とは言え、アメリカ人には大きな問題になっていないことを示している。つまり人種による、あるいは日々の食事などの環境要因での忍容性の相違があるのであろう。 

SSRIは個々に構造式が異なり、種類によって強迫性障害などへの効果が微妙に異なる。それはうつ状態でも同様で、治療がうまくいかなかった場合、同じSSRIのカテゴリー内で種類を変更することは、1つの有力な対処法とされている。

参考
ジェイゾロフトとパキシルの力価の話