クリニックから転医してくる人は1ヶ月処方が多い | kyupinの日記 気が向けば更新

クリニックから転医してくる人は1ヶ月処方が多い

落ち着いた状態でクリニックから転医してくる人は1ヶ月処方が多い。

ここでは、入院加療が必要で転入院する人は含んでいない。

1ヶ月処方が多い理由だが、たぶん患者さんが多いからと思う。個々の患者さんの外来での待ち時間を考えると、自然と1ヶ月処方にならざるを得ない。また、最近はほとんどの眠剤が1ヶ月処方可能になったことで、1ヶ月処方がしやすくなっている。

実際、自分の場合でも、受け持ち外来患者さんが多くなると、1ヶ月処方で大丈夫な人はそうしている。その結果、キャパシティが増し、延べの持ち患者数は増える。実は増えたことにより、1ヶ月処方になったのだが。

生まれて初めて精神科にかかる人は、たぶん何週間処方が一般的か、よくわからないと思われる。

僕がそう思う理由は、かつてほとんど精神科クリニックがなかった黎明期、全然、患者さんが来ず、初診の人を1週間処方し毎週来院するように言っても、それに不満を言う人は非常に少なかったと聞いたからである。

当時のたいていのクリニックの医師は週に1日か2日、一般の精神病院にアルバイトに行っていた。つまり、それだけ暇であり、収入を補充していたのである。

また地方によると、心療内科と標榜した場合、通院精神療法が算定できない地域もあった。これでは経営が難しい。

僕が研修医の頃、オーベンの知り合いの医師がクリニックを開業した。当時、オーベンに、いったい経営が成り立つものか聴いたところ、「極めて厳しい」と言う返事が返って来た。しかし、彼はこうも言った。

○○先生はベッドが19床あるので、たぶん大丈夫だろう。

19床分の入院患者がいると、外来が少なくても、かなり経営の厳しさが緩和すると言う。入院患者1人分は外来患者20名分に相当するという彼の意見であった。

時代は変わり、今は19床なんて中途半端なベッドがあると、かえって無駄な経費がかかると思われる。経営的にも有利とは言えない。その理由は19床あると、日々の給食、夜勤の看護者、当直医が必要だからである。

基本的に、100ベッドでも300ベッドでも夜の当直医は1名で良い。だから、入院患者の数が多いほど、相対的に経費率が低くなるといえる。結局、そのクラスの小規模のクリニックは入院患者がいると、かえって厳しくなると考える方が自然である。

クリニックはリストラできるところはそうすべきであり、19ベッドこそ、真っ先にそうするものだと思う。実際、当時、19床のクリニックを開業していた先生は、ほとんど夜は外出ができなかった。旅行なんてとんでもない話である。つまり、24時間、縛られていたのである。

精神科クリニックは、他科のクリニックに比べ、売り上げは少ないが、初期投資や経費が少なくて済むという利点がある。そのために、他科のクリニックに比べ、経営のリスク(大借金を負い倒産など)は低い。

入院ベッドを作るというのは、初期投資が大きくなるというデメリットもある。

現在では、精神科の入院ベッド数は削減の方向に行っているので、クリニックが19ベッド、精神科病棟を持つことはできないと思う。

精神科クリニックはストレスフルだと思う理由の1つは、1日中、座りっぱなしで、患者さんの話を聞かないといけないこと。これは入院ベッドのある一般の精神科病院の医師の日常とは異なっている。

僕は、普段、全くといって良いほど運動をしないので、病棟にはなるだけエレベータを使わず、歩くか早足で移動する。時には、駆け上がるように移動するので、「先生、いつも元気ですね」などと言われるが、実はそこまで元気ではない。そういう風に努めているだけである。

僕の患者さんは、担当日以外にも勝手に来るので、よく外来に呼ばれるが、終日、上がったり、下がったりの繰り返しで、実に良い感じのエクササイズになっていると思う。

外来に加え、病棟も診るというのが仕事のアクセントになっている。1つのことだけ、1日中、ずっとしているというのが、たぶん不健康なのである。

だから、自分は、今院長だからというのもあるが、クリニックを開業する意思はさらさらない。嫁さんも同じ意見である。