パイロットはトラブルの際にマニュアルをチェックする | kyupinの日記 気が向けば更新

パイロットはトラブルの際にマニュアルをチェックする

ナショジオでは、「メーデー」と言う航空機事故のドキュメンタリーを時々放映しているが、とても面白いので良く観ている。

うちの家では、テレビで最も観ているチャンネルは、民放でもNHKでもなく、たぶんナショジオだと思う。他は、スターチャンネルやWOWWOWである。以前ではディスカバリーチャンネルをよく観ていたが、今は逆転している。

メーデーはカナダの製作会社により製作されているため、アメリカの航空会社の事故でも、明らかな身内びいき姿勢ではない。多少は遠慮があるだろうが。

例えば1988年のアメリカのミサイル巡洋艦「ヴィンセンス」によるイラン航空655便撃墜事件。

この事件はイランのエアバスを戦闘機と間違えて撃墜したものである。この事故の民間人犠牲者は290名で航空機事故としてはかなり多い。

日本版のウィキペディアでは、アメリカのその行動の是非について触れていない。しかし、メーデーでは、アメリカのミサイル巡洋艦はしなくても良い、つまり余計なことをしたため事故が起こったとコメントしている。

つまり、ミサイル巡洋艦は作戦行動で張り切りすぎてイランの領海に侵入してしまったため、安全策を取らざるを得ず、その結果、悲惨な事故を招いたと言う。アメリカはその事故による被害者に補償をしているが、エアバスの航空機の補償は今もしていない。

様々な航空機事故では、トラブルが生じてから、パイロットはマニュアルを取り出し調べている。航空機の重大なトラブルの際に、1分、1秒を争っているのに、おもむろにマニュアルを取り出して調べていることに非常に違和感がある。(もちろん、その余裕もなく墜落するケースもあるが)

1人のパイロットは全ての機種に乗るわけではない思うので、(アメリカのパイロットはロシア製の航空機には乗らないと言う意味)、パイロット1人が乗る航空機の機種は有限である。

それなのに、重大なトラブルが生じてから、読み始めるものなのか?と言う疑問が非常にある。

医師とパイロットの仕事は異なるが、もしトラブルが生じて、患者さんの目の前で専門書を取り出して調べているようでは、患者さんが不安を覚えると思う。もちろん、トラブルの難易度にもより、専門書で調べても問題がないような事例もある。

素人ながら、たぶん自分だけでなく、あのメーデーで繰り返される「あの場面」には、同じような疑問を感じる人がいるはずと思う。

航空機の事故はパイロットの責任だけでなく、整備や構造上の欠陥など人為的な事故がとても多い。例えば、タイヤの空気圧のチェックをおろそかにしたとか、消耗品の交換を怠ったなどの整備不良などである。

また、インターフェースのデザインが錯覚を起こしやすいものだったために、墜落事故が起きることもある。

その意味で、航空機は何十年も経った中古機も不安があるが、新型機も思わぬ事故が起こるリスクがあると思う。

航空機の事故で死亡する確率は、宝くじの1等に当たる確率と比べられるほど低いものだが、いったん事故が起こると、非常にインパクトが大きい。

メーデーを観てよく思うのは、個々の事故の綿密な検証が、それ以後の大事故を防止することに繋がること。結果的に多くの生命を救うのである。

その時の苦労は、決して無駄にはならないのであった。

参考
メーデー
若いパイロット
医師は薬の色を知らない