学習障害とトピナ | kyupinの日記 気が向けば更新

学習障害とトピナ

今回の記事はトピナが学習障害に効く、効かないの話ではないことを予め書いておく。

本当はタイトルは「トピナとディスレクシア」にしようかと思ったが、そうすると学習障害の中でも失読症など言語系に限られる感じになるため、上のようにしている。

学生の頃、友人たちと一緒に麻雀をしていた時、一部の友人になかなか点数計算ができないとか、聴牌の待ちがよくわからない人がいた。そのような人は牌効率の良い打牌もできない。いわゆる麻雀下手である。

皆、入学後に麻雀を覚え、ほぼ同じ時間、麻雀をしているのにこの差が生じるのは、やはりそのタイプのゲームが苦手と言う他はない。

一方、驚異的に上手い人もいて、ある友人などは理牌していない清一色の手牌を一瞬見せ、すぐに牌を倒し聴牌しているかどうか聞くと、聴牌かどうかわかるどころか、待ちまで即座に言えた。(その人が強いかどうかはまた別だが、有利なのは確かである。)

聴牌がわからず点数計算ができない人と、理牌していない清一色の待ちが一瞬に言える人の差は何なんだ!

と当時思った。同じ医学生でこの相違である。その学生もとても麻雀が好きなので、熱心さが足りないとかでは片付けられない。

これはたぶんある種の学習障害であろう。ただし日常生活や医学を学ぶのには支障がない。更に言えば、名医になる可能性も他の学生に比べ低くはないと思われる。

学習障害は、文化や文明にパラレルに存在しており、例えば3000年前に生まれていれば、学習障害と言えない人もいるはずである。また現代社会でも何らかの学習障害でありながら、それが顕在化しない人たちも多いとも言える。

ディスレクシアは日本人はたぶん漢字、かなの文化なので表れにくいらしい。一方、アルファベットを用いる国では日本に比べ多い(顕在化しやすい)。日本人でも、日本語は支障がないが、英語になるとアルファベットが読めなくなる(あるいは読めるが書けない)人がいる。

ディスレクシアの人は、脳内の言語系の情報処理の場所が違うと言われている。つまり、普段から脳の働き方が一般の人とは異なるのである。

民放かディスカバリー・チャンネルか忘れたが、事故で脳を外傷し、その後、脳死と判定された男性の話が紹介されていた。

臓器移植のために、まさに肝臓などを取り出されようとした瞬間、偶然「睫毛反射」が出現したのである。(あるいは単に瞬きだったかもしれない)

医師は、この男性はまだ脳死には至っていないと判断し摘出を取りやめた。しかも、医師らの様子は、本人はずっとわかっていたというのである。その後、この男性は特殊な意識障害から回復している。

その番組では、「脳の未知の回復能力」をテーマに語られていたが、その男性は「難読症」だったらしく、普通の人と脳のあり方が異なっていたことが誤診の原因になっていると思った。

そこでやっとトピナの話になるのだが、トピナは時々、「一瞬、言葉が詰まる」など「換語障害」と言われる言語の副作用が出現する。頻度は臨床的には問うとよく「それがあります」と言われるので、軽重はあるが頻度は比較的高いと思われる。

人によると詰まるどころか上手く喋られないほどの影響を受ける人もいる。周囲が気付かないほどの言葉の詰まりなら継続が可能だが、会話ができないようなら、トピナは中止せざるを得ない。

トピナは人工的にディスレクシアをつくるのかもしれない。

その結果、脳の各部分の役割が変化し、場合によると、それまで機能不全だった部分の脳の機能を活性化し、精神症状に好影響を与える。


しかしうまく行かない場合は、病状悪化を来たす。とにかくトピナの場合、精神症状に噛み合うことが重要と言えるだろう。

こんな風に思った理由の1つは、換語障害が全くなく、効果もなく、悪化も全くない人に何人も遭遇したからである。(効果も副作用もない人。トピナは抗てんかん薬の中でも服用しにくい薬である。ただし、この部分は根拠として自信なし)

トピナという薬は、効果なのか、あるいは副作用なのか、すぐに判断できない現象がかなりある。例えば、過食行動に対しての効果などである(過去ログではこれは副作用を利用しているのではなく、効果と記載している)。

ある女性患者さんは、うちの病院に来て、「過食に効く薬が本当にあったことに驚愕した」と話していた。(彼女は中くらい効いていたように思う)。

そのように考えていくと、トピナが器質性ないし内因性幻聴を遮断したりあるいは弱めることがあるのは、ひょっとしたら、トピナの副作用なのかもしれないと思ったりする。

参考
トピナ再考
過食に対するトピナの作用は副作用ではない
横文字文化とアスペルガー症候群
自分は2度死んだので多分長生きしますよ