統合失調症の人の癌の罹患率 | kyupinの日記 気が向けば更新

統合失調症の人の癌の罹患率

統合失調症の人の癌の罹患率が一般の人より低いことは、1909年に既に報告されているという。しかしながら、それが正しいかどうかは決定的には証明されていないと言われていた。(罹患率及び死亡率)

台湾で調査された興味深い論文がある。癌の罹患歴のない統合失調症の患者約6万名と対照群(年齢、性別などをマッチさせた約18万名)を9年間追跡したと言うものである。(2011年の論文)

その結果だが、統合失調症の患者は1145名(1.93%)、対照群は5294名(2.97%)が癌に罹患したと言う。これは統合失調症では対照群より有意に低い(つまり癌に罹患しにくい)ことを意味している。

また、台湾は肝細胞癌の主な原因であるHBV、HCV感染の高度流行地域であり、統合失調症の患者では、HBV、HCVの感染率は健常者より高いとされている。ところが、統合失調症の患者群の肝臓癌のリスクは健常者に比べ42%低かったという。

統合失調症の患者の癌の死亡率は、対照群より高い。その理由は、彼らが痛みの閾値が高く(つまり痛みを感じにくい)、これに認知障害、思考障害、重要な症状を伝える能力が低いことなどから、癌が進行した状態で初めて受診するためと思われる。

結論的には、統合失調症の人は癌になりにくいが、いったん発見された時は既に手遅れの場合が多く、死亡率が一般の人よりは高い、といったところであろう。

参考
高プロラクチン血症
統合失調症と痛みの感覚