濃い色の絵の具、薄い色の絵の具 | kyupinの日記 気が向けば更新

濃い色の絵の具、薄い色の絵の具

向精神薬を絵の具に例えると、本来、濃い色と薄い色の絵の具があると思う。

濃い色、つまり強い色の絵の具を使って描くと、もちろんケバくなる。

薄い色の絵の具は、抗精神病薬の範囲で考えると、例えばルーラン、エビリファイ、ロナセンのような薬物が相当するが、これらは本質的なパワーがない。ここが薄い色に擬える理由である。

しかし、こういう薬を使いこなせるようになると、服用感のない処方になる。患者さんが、全く服用している感じがしないという。その他、セロクエルもどちらかというと薄い色の絵の具だと思う。

抗精神病薬は普通、幻覚や妄想に対し処方される。時に、薬の量が極端に多くなったり、あるいは多剤になるのは、薬が思うように効果が出ないという理由が大きい。薬が効かないから多量処方になるのである。

薬が効かないのは、入院している場合、服薬は遵守できているので、本人のせいではないし、また看護者のせいでもない。むしろ、疾患性そのもの(個人差)及びその病状のタイミング(病期と言っても良い)が大きい。

つまり、同じ薬でも効く時と効かない時がある。過去ログで、何度か失敗していたのに、何度も同じ繰り返しをしていると、4回目とか5回目に効いたという話が出てくる。

薄い色の絵の具は最初はうまくいかないが、時間が経ち病状が安定して来ると、次第にフィットすることがある。これはあらゆる効果がはっきりしないタイプの薬に言えることである。

これは、昔、失敗した薬が、今、失敗するとは限らないことを言っている。

向精神薬は柔軟に使いこなさないと、硬直した処方になり患者さんへの負担も大きくなる。

きっと・・
向精神薬の再トライの失敗ですら、寛解、治癒に向かう1ページなんだと思う。

参考
赤と黒の壷