附子 | kyupinの日記 気が向けば更新

附子

これは、普通「ブシ」と読む。トリカブトの子根を乾燥させたもの。キンポウゲ科に属するトリカブトは有名な有毒植物であり、かつて殺人事件にも使われたことがある。主な成分はアルカロイドの一種、アコニチンで特に根に多く含まれる。トリカブトを誤って食べてしまうと、嘔吐、下痢、呼吸困難のため死に至ることもある。  

このトリカブトの有毒物質を熱処理など弱毒化したものを生薬「附子」として使うのである。この附子だが、さまざまな漢方に使われている。ポピュラーなものでは、真武湯、八味地黄丸、牛車腎気丸などであろう。  

附子は体の新陳代謝を高め体を暖める作用を持ち、また痛みをとり水分循環を改善する働きなどがある。そのため体が虚弱な人で、冷えや痛み、むくみなどを伴う時などに適している。たとえば真武湯はかなり体の衰弱した虚証の人向けの生薬である。

「体を暖める作用」というフレーズが出てきたが、これはきわめて東洋医学的な考え方で、この効果を持つ漢方薬はけっこうある。

しかし、おそらく体を暖める西洋薬は基本的にない。

向精神薬では、メジャートランキライザーは典型的な実証タイプの薬と思われる。パキシルやジェイゾロフトなどのSSRIも、微熱が出ることがあっても暖めているとはとうてい思えない。虚証の人は下痢などの胃腸障害で飲めそうにない。ただ、マイナートランキライザーは、個人的には冷やすも暖めるもないような感じがしている。マイナーにはそういう色がない。

漢方ではいろいろな反意語的なカテゴリーがあり、よく出てくるのが実証と虚証であろう。この実と虚だが、区分けが難しいが、結局は体力的なものを言っているような気がしている。陰と陽というのもある。陰はいろいろなものが足りない。これは補中益気湯などが適応になる。基本的には虚の人は陰が多い。体力がないのに活発な人は陽虚証などと言ったりする。

こういうことを話すと、幾人か、患者さんを思い出してしまう。

なぜこのようなことを突然書いたかというと、夕方、嫁さんが突然「ウナギが食べた~ぃ」などと言ったため。そこで、うな重の出前を取ることになった。風邪を引いた時に、特に嫁さんはウナギを食べるとなぜか一発で治癒することがある。喉が痛いので、一刻も早く治したいらしい。それで、こういうことを思い出したのである。

ウナギは、なぜ刺身で食べないか知っている?

実は、ウナギの皮のすぐ下くらいに毒があるらしい。だから火を通さないと食べられないのである。

動植物に含まれる血液に入ったらすぐに死ぬような強い毒性のある物質は、熱処理などで毒性を落として口から食べると元気を出させるものが多い。というかこれはセオリーなのである。

例えば、マムシ、ハブ、ウナギ、附子・・
サソリやムカデがこれに当たるかどうかは僕は詳しくない。

モノによっては、十分に加工しないと口からでも死ぬものもある。本来、毒性の強いものは、食べると滋養強壮に良いのである。紙一重というのはこのことだろう。

最初に、このことに気付いた人はすごいよ。