アスペルガー症候群 (後半) | kyupinの日記 気が向けば更新

アスペルガー症候群 (後半)

アスペルガー症候群の人たちは、知能指数の極めて高い人もいるので、実際に旧帝大を卒業して学歴も備えていることもある。しかしこんな人でも、あるとき不適応を起こし、なんらかの精神症状が出てくることがある。例えば子供なら不登校として発現したりする。年長あるいは成人している人なら、強迫性障害であったり、うつ状態であったり、時に幻覚妄想であることもあるだろう。また、個人的問題にとどまり、どこにも病院にかからない場合もありうると思われる。

僕の場合、たまたま統合失調症的な精神症状を持つ患者さんを治療する機会があった。アスペルガー症候群は、統合失調症やうつ病のようにありふれた疾患ではない。そのうえ、いわゆる単科の精神科に入院が必要となって受診する人は、その中でも特別なケースと思われる。そういうこともあり、僕がアスペルガー症候群のすべてのパターンを網羅して診て来たわけでは決してない。幻覚妄想を伴うようなアスペルガー症候群の人たちが統合失調症と誤診されて入院治療を受けていたりする理由は、精神科医があまりこれを診る機会がないことが大きい。精神科医が、診察時にアスペルガー症候群の可能性を意識していないと診断できないと思うのである。

また、アスペルガー症候群の人は精神病状態になると、対人接触性が怪しいものになる。なぜならアスペルガー症候群の人には、本来そういう対人接触性の問題をかかえているから。もちろん、統合失調症のそれとは違ったものなのだが、すぐ違いわかるほどの大きな差がないように見えることもある。ここ2年ほどで僕が診た2人の患者さんは、精神科医10人に聞くと、3人くらいは統合失調症の診断を下すと思う。ひょっとしたら、もっと多いかもしれない。ただ、アスペルガー症候群と言う人も必ずいると思うし、診断を保留する人もいると思うのである。だいたい僕はアスペルガーと診断したが、その生物学的な証拠は全くない。それは統合失調症の証拠が全くないのと同じことなのである。

参考
統合失調症の診断は・・