手を伸ばせば届いたものと、自分が届けられなかったものと | きゅっきゅ8のえんがわで

きゅっきゅ8のえんがわで

人生は演劇だ。社会劇場、世間の目を観客に、何者かを演じて生きる。無限大の可能性を信じて、制服に征服されぬよう、着たい服をまとい息をする。こころの店、きゅっきゅ8(きゅっきゅや)のえんがわで、うたたねしながら感じる音や光。
ゆき過ぎる日常をたねに、うたう。


それは確かにそこにあって

目に入れるには眩しすぎて

それでも手を伸ばしてみた

確かに感じた希望を掴んで

ぎゅっと ぎゅっと 二つの手で包むような握りしめた


誰かに夢を届けたくて

頭も目も耳も口も手も足も……

伝えたくて

伝えたくて

嬉しい楽しいを届けたくて

いつの間にか

何かを握りしめていた手を見ることすら忘れて


そして、ある日

強く握りしめていた手のひらは震えていた

力を入れた爪が食い込み、血だらけになって震えていた

頭も目も耳も口も手も足も、そして心も、みんなみんな震えていた


そっと、そっと開いた手のひらには、何もなくて

少し上から、あたたかい水が落ちてきた

いくつも

いくつも


溜まってゆく水に、どこからか光があたり、眩しく輝いた

さっと吹いた風が、その輝く水を運び、何かへ届けた

手を伸ばせば届く、なくならない、いなくならない何かへ