寒さが戻ったのだけれど冬晴れの日曜日の朝のことです。
妻が外出する前に
いまは使っていない、こども向けのラルフローレンの傘二本を共通の友人へ渡して欲しいと言いました。
その日は、その友人に会う可能性が高かったし、断る理由もまったくなかったので了解して、目立つ場所に置いておきました。
ぼくが出かける少し前に同居する母が風邪をひいて具合がよくないことを伝えてきました。
お医者さんには行けたようなので、薬を飲んで、あたたかくして休んでいるように話をしました。
母は、ぼくがこれから出かけていく場所で販売されているくるみパンを買ってきて欲しいと言いました。
ぼくもそのくるみパンの大ファンなので快諾をしました。
人気があるパンなので残っていたらということにしました。期待をして待っていてくれて持ち帰ることができなかったらかわいそうだからと思ったからです。
やり取りをしているうちにそのパンの味覚が感覚的によみがえってきて、少しだけ早めに出かけることにしました。
目的地には娘が少し遅れて合流することになっていましたが、ぼくが出かけるときに彼女の準備状況はまだまだで、たとえば目玉焼きを作ろうと思っているのだけれど、いまから卵を買いに行こうかくらいの感じです。
目的地は自転車で10分以内の場所にあります。
少し早く出発したこともあってくるみパンを無事ゲットすることができました。
建物に入って、そのコミュニティーでの準備や打ち合わせなどをしている最中に「あっ」と思い出すことがありました。
傘を持ってくるのを忘れたのです。
今日は晴れているし、友人には来週にも会えるし、などと忘れた言い訳を瞬時に列挙しましたが
やっぱりそれでは自分をも納得させることはできません。
速攻で、娘に連絡をしました。
本当は出かけていたほうが良い時間だったのですが娘は家にいて、嫌がることもなく傘を持ってくることを了解してくれました。
携帯電話を切った瞬間に何かを伝え忘れたのかなという微妙な違和感があったのですが深く追いかけずにスルーしました。
5分ほどして携帯電話に着信があります。
娘からということをiPhoneの画面が伝えてくれたその刹那に
伝え忘れた何かがアタマに明確に展開されました。
マウンテンバイクに乗ってやってくる娘にどうしても伝えなければならなかったこと
「ハンドルに傘をかけて走ってきちゃダメ。」
通話をオンにすると
案の定、娘は泣きたいのを我慢するような声で
「ごめん、傘、二本ともグニャグニャに大破しちゃった。」
「前輪に巻き込んだのか、転んだんじゃないの?」
「うん、二回転んだ。一本目を巻き込んだ時に自転車の下敷きになるような転び方をして、それでも急いで行こうと思った時に二本目が絡まって自転車のライトとか何かが壊れちゃった。サドルの横も裂けたみたい。」
ぼくも過去に同じ経験があったので酷い転び方をしたであろうことは想像できたし、しっかりアドバイスができなかったことを後悔しました。
「傘や自転車はイイけど、カラダはだいじょうぶ?」
「どんなふうに転んだのかよくわからないけど、たぶんだいじょうぶだと思う。」
自転車を自宅に置きに戻って歩いてくるという娘が心配で途中まで走って迎えに行きました。
手のひらに少し擦り傷があった程度で大きなケガや事故にならなかったことを安心しながらも
怖い目にあわせることになってしまった自分の浅はかさを省みました。
傘と自転車が娘の身代わりになってくれたのかもしれません。
友人には事の顛末を話をして謝りました。
もちろん友人は、傘や自転車の事ではなく、娘のことを心配してくれました。
妻も驚いていましたが、理解してくれました。
瞬時の判断
余裕
優先順位
「何か」のサインやシグナルをキャッチできる感覚
老化とのせめぎ合い
油断をしてはいけないということ
大切なこと
大切なもの
たいせつな人
しょうがないで済ませられること
しょうがないでは取り返しがつかないこと
本当の思いやり
This is HASHIMOTO☆QUALITY