嫁ぐと決めたはいいものの、夫側の事情で二世帯住宅での半同居生活は免れない。
それでも・・・
実家から、地元から逃げたかった。
辛い・苦しい思い出しかない「そこ」から、少しでも遠くに逃げたかった。
後にさらに苦しむことになることにも気付かずに。
ここで、誤解のないようにしておきたいのは、夫に対する愛情について。
ただ逃げる為だけに夫と結婚を決めた訳ではない。
今までは、与えるばかりの愛情(だと私が思っていた事)だったのと比較して、夫はたくさんの愛情を私に与えてくれた。
今までに感じた事のない、親からも与えられたことのなかった温かい気持ちに包まれて、
この人とならずっと一緒に居られる!と思った。
夫との結婚に関しては、猛反対はあったものの、夫の誠実さも手伝って話はとんとん拍子に進んだ。
本当は、結婚式などしたくはなかった。
ただただ、遠くに逃げられさえしたら良かったのだから。
世間体をもの凄く気にする実父と義父・・・
結婚するには、式を挙げるという「形」が必要だった。
嫁ぎ先は、私には全く無縁の土地。
という事は、招待する方々には遠方から来ていただかなくてはならない。
私のために遠くまで足を運んでくださった方々には本当に感謝している。
しかしその結婚式には、私のACっぷりが如実に表れた。
チャペルでの挙式・・・父と一緒に人前で歩くなんて絶対できない、という事で却下。
夫とはお互い無宗教だったこともあり、人前式という形をとることで「父と歩くバージンロード」を避けた。
どんなにどんなに考えても、父に「感謝」の言葉が思い浮かばない。
当日まで一応考えてはみたものの、上辺だけの薄ら寒い言葉しか浮かばなかった。
という事で、結婚式前日や当日の朝には付きものの「長い間お世話になりました」の挨拶もなし。
披露宴での「感謝の手紙」もなし。
花束贈呈というイベントは一応したけれど、ウェディングプランナーさんから「どちらの両親に花束を渡しますか?」と聞かれ、
「もちろん、相手の両親に・・・」と、即答した。
何処まで親の事嫌いやねん!!
と突っ込みたくなるくらいの徹底ぶりだった。
一応親の顔もたてなければならないのでそれなりのイベントも準備はしたけれど、結婚式如きで「花嫁(ワタシ)の父」面をされるのがとても嫌でたまらなかったのだ。
でも、式さえ終わればこれで最後。
もう、毎日実家に帰る必要もない。
父親のご機嫌をうかがう必要もない。
私の新しい人生が今から始まる。
明るい未来が見えた。
はずだった。
現実は、そうではなかったけれど・・・
つづく
きこきこ