私には兄がいる。
小さいころは、私が怪我をしたりいじめられたりした時、泣きながらかばってくれた。
私が小学校に通い始めた頃から照れくさくなったのか、学校内で私と会うと「ばーか!!」と言うようになった。
下校時に、通学路で会うと先に走って逃げて行ってしまった。
家でも外でも、頼りたいときにも頼れなくなった。
機能不全家庭で同じような環境で育った兄。
やっぱり私と同じようにACなのかもしれない。
成長に伴い、力も強くなってきた兄。
いつも私を「暴力」でねじ伏せるようになった。
父と同じように、殴ったり蹴ったりするわけでははい。
まずは恫喝から始まる。
とにかく大きな声で怒鳴り散らす。
もちろん、私が恫喝に怯えることを知っての上での行動だ。
理由は本当に些細なこと。
おやつの量が多いとか少ないとか、こたつの中で足が当たったとか、チャンネル争いとか。
巷でよくある兄弟げんかである。
そのうち、気分が収まらなくなると手当たり次第物を投げつけてくる。
ただし、私本人に当たらないように一応彼なりの「配慮」をしていたらしく、当たって怪我をしたことは一度もなかった。
襖や壁についた傷が、私の恐怖心をさらにあおった。
小学校高学年の頃、ちょうど学校でいじめに遭い始めた頃から、兄に対しても恐怖心を抱くようになった。
一層私は母に依存することになった。
虐待は連鎖する。
まさにその通りなんだと思う。
父の無言の虐待は時に兄に向かい、兄はそのはけ口として私をターゲットとした。
今でも兄に会うと緊張する。
父に対する緊張感と同じだ。
以前兄が私に対して抱いている感情を、一度だけ話してくれたことがあった。
私は高校卒業と同時に実家を出た。
それに引き替え、兄は地元での就職を選んだ。
「学費・東京住まい。お前ばかりずるい。俺はいつも我慢していた。」
これが兄の言い分だ。
兄の気持ちが分からないでもなかった。
でも、兄の就職も、私の進学も自分で選んだ道。
そんな事さえも私のせいにしたかったみたいだった。
父=兄
私の中で出来上がった構図。
恐怖心を消し去ることは、決して簡単なことではない。
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