2006年

3年間の沖縄勤務を終えて、東京に戻った頃から、NHKに異変が起き始めていた。

不祥事で海老澤会長が失脚。



橋本会長が後を引き継いだ際、労働組合からの要望もあったと聞いているが、生え抜きのNHKマンではない、

いわば「民間」の役員を招聘しようと、自動車会社の幹部がNHKの理事(役員)として入ってきていた。後に視聴者サービス局長に就任した時この役員が直属の役員となった。彼の自動車会社の経験は確かに「新鮮」ではあったが、どうしようもない「文化の違い」も感じた。丁度その頃、橋本会長の下で「三か年経営計画」を作ることなり、私も「視聴者サービス」の担当局長として参画した。この際、この「民間会社」出身の役員は我々にこう言った。「NHKの経営計画には受信料以外に数字がない。こういうものは経営計画とは言えない。」と。私たちとのやり取りでこの役員は「視聴率とか、接触率とか、目標とする数字があるだろう。」というのだ。勿論我々NHK育ちは、猛烈に反駁した。結局「溝」は埋まらず。「文化の違い」であきらめた。

それから「民間」からの会長が続き、今やNHKの経営計画には、「10%の接触率」という「数字」が書き込まれている。私が退職した後のことだが、労働組合んも了承したとのこと。ところが、この目標が、実際にはなかなか達成できないという。そこで現場では、接触率全体の数字を向上させるため、NHKが弱いとされる30代の女性が見てくれるように、あらゆる番組の出演者を民放によく出る「お笑いさん」を登場させるなど、あの手この手の作戦に出ているという話が聞こえてきた。こういう展開を危惧していた。2013年春の朝ドラ「あまちゃん」が工藤官九郎を作者に迎えて大ヒットとなったが、これもその一環らしい。





最近私の知人や古い友から、NHKと民放の放送の区別がつかなくなったという指摘を繰り返し受けることになったが、私も同じ思いである。勿論国民から広く、等しく受信料を集めている公共放送としては、出来る限り多くの人に見てもらわなければ立ち行かないことは、我々の現役のころからの了解事項であったが、こちらから「数字」を取りに行くことは違うのではないかと今も思う。

とにかくNHKは変わった。

いい変わり方であることを祈りつつ、毎日

後輩たちの作る放送番組を見ている。