風速70メートルの超大型台風が人も車も、ひいてはSDMの指揮車両までをも吹き飛ばし、

 

さらにビルにそれが突っ込むことでビルの一部が崩落。雲田(出口夏希)がそれに巻き込まれてしまう。

 

どのようにして助けるかを考えた結果、晴原が導きだしたのは“台風の目”のなかに入って

 

風を避けながら現場まで移動し、わずか27分(途中で滞在可能時間が短くなるので25分ということになる)

 

ですべての要救助者を搬送する。多少大げさになりつつも、災害の脅威とそれに必死で抗う

 

者たちを可視化させることこそが、このドラマの根幹にある「自然のなかで人は無力である」

 

というテーマを証明することになるのである。

 

その一方で、時間内に救助にあたるという制限下での緊迫した活動を遂行して以降の展開は、

 

極めてシンプルにまとめられていく。救助された雲田の容態が安定するまでの過程には

 

大げささを求めることなく、それまでのシーンと比較するとまさに台風が過ぎた後の静けさのように

 

運ばれるのである。このあたりは、現在フジテレビが置かれている、制作費の問題があるのか

 

そして、立花(真矢ミキ)からSDMの正式運用の話を持ちかけられた晴原は、

 

まだ対応しきれない災害があることを理由に粛々とそれを辞退する。 

 

たしかにこれまでこのドラマで描かれてきたのは雪崩に始まり、風によって拡大する火災、

 

想像を絶する降雹、土砂崩れに線状降水帯や台風。他にも地震によって孤立した集落に

 

いかに救援物資を届けるかという課題まで、実にさまざまな災害にかかわるトピックを扱ってきた

 

一方で、津波や火山の噴火などは扱われてこなかった。

 

“自然災害”と呼ばれるものをひとしきりカバーしたところでも、人智を超えた何かが起こりうることこそ

 

自然の脅威であり、あくまでもそこに諦観することなく、また可能なことだけに驕るのでもなく、

 

まだ立ち向かう余地があることを認めて“抗っていく”。

 

それこそが先述した根幹にあるテーマへの、ひとつのアンサーであるわけだ。

 

ラストでSDMの活動にかかわる者たちが皆で揃い、大勢で“ブルーモーメント”の空の下に集まる様子は、

 

このドラマに最も求められていたものだった。天才ひとりではなく、チームで戦わなければならない。

 

その意味ではまだ、キャストが薄い印象が強かった。パート2があったら、力のある医師や、

 

能力のある技術者が必要だろう。

 

ここではもうひとつ、ワンマンで機能していた組織に後継を見出すことが拡大や持続への糸口となる

 

と見出されていく。それを踏まえれば、晴原の“弟子”であり“バディ”であり、

 

なによりも第1話からはっきりと成長を遂げた存在である雲田の救出に特化した最終話は、

 

この『ブルーモーメント』というドラマのさらなる拡がりを予感させるのである。

 

何とか、パート2に繋げて欲しい。