このドラマは、医療ミステリーだ。主人公の藤巻達臣(反町隆史)が発見した“殺人球菌”を意図的に投与しているのは誰なのか

 

――その真犯人を藤巻とても抑えている演技で、昔とはまったく違う。が追う、いわゆる考察ドラマとしての側面も持ち合わせている。

 

  サスペンス要素に触れる前に、初回の放送を観て驚いたのが、反町隆史が演じる藤巻のボソボソ声だ。

 

『グレイトギフト』で演じる藤巻は、うだつの上がらない病理医。

 

明鏡医科大学付属病院の職員からも見下され、仕舞いには娘のあかり(藤野涼子)

 

からも反抗されている、コミュニケーションが苦手な、顕微鏡の中の世界だけを

 

覗いていると揶揄される人物だ。そこには藤巻自身の内に秘めた葛藤も垣間見えるが、

 

やはり俯き加減な反町の芝居は新鮮だ。思わず字幕設定をONにしてしまうほどに沈んだ声であるが、

 

案外聞き取りはしやすく、同じメインキャストの佐々木蔵之介、(こんなにたくさんのドラマや

 

映画に出ずっぱりでいつせりふをおぼえているのだろう?)

 

そして津田健次郎と渋い“イケボ”が揃ったドラマでもあることに気づく。

 

そんな主人公の藤巻が見つけた未知の殺人球菌「ギフト」は、体内に侵入するとすぐに患者は死亡するが、

 

球菌は完全消滅し死因は急性心不全としか診断できなくなるという、完全犯罪を

 

可能にする殺人球菌だ。公式サイトには、「『第1話』で判明した特性」として

 

「右頸部に黒いシミが残る」「1リットルほどの水差しに5ミリリットルを一口のんだだけで1分以内に心停止」といった

 

「ギフト」の謎が列挙されていることから、回を追っていくごとに「ギフト」のさらなる特性が明かされていくのだろう。

 

  第1話で「ギフト」によって殺されたのは、元総理大臣の愛宕克己(山田明郷)と郡司博光(津田健次郎)が担当していた患者、

 

さらに病院理事長の奥野信二(坂東彌十郎)。藤巻は心臓の病気を患う妻・麻帆

 

(明日海りお)の主治医で信頼する白鳥稔(佐々木蔵之介・非情に野心家で、

 

日本の医療界を変えようとしている。)に「ギフト」のことを相談するが、

 

白鳥は理事長選で敗北を喫した奥野の水差しにあろうことか「ギフト」を混入させ、

 

藤巻の前で殺人を犯してしまう。 「決めたんです。私が医療界のトップに立ち、

 

日本の医療を改革していこうと」 「共に日本の医療界から膿を取り除きましょう」

 

  白鳥が事件に関与していた証拠はなく、藤巻が警察に通報すれば球菌を培養していた、

 

さらに教授でもないのに会議に参加していた藤巻自身が真っ先に疑われる。

 

それに藤巻は奥野の隠蔽工作に加担しているだけでなく、次期理事長となる白鳥に

 

心臓病で入院している妻の命も握られている状態。藤巻は白鳥にまんまとハメられて

 

しまったのだ。  第1話のラストには藤巻の元に消印がない「私の球菌を

 

勝手に使いましたね 代償を払っていただきます」と書かれた手紙が届いたことで、

 

犯人が病院内にいることが明らかになる。それでは連続殺人の真犯人は一体

 

誰なのだろうか。  現段階で最も怪しいのは、藤巻と同じ病理部の検査技師・

 

久留米穂希(波瑠)になるだろう。本作のヒロインのポジションに位置する彼女は、

 

合理的で部内では変人扱いされている人物。藤巻が新種の球菌を発見し、黒いシミにもすでにたどり着いている久留米は、

 

この後藤巻と共闘関係を結ぶようだが、いまだそのベールは謎に包まれている。

 

波留さんはきっと、反町さんを助けて病院内の犯人を捜そうとする側なのだと思う

 

あり得ない設定だけれど、重厚な役の人たちがみんな現実的にない設定を

 

もしかしたら、と病院内のことを推測させるうまい引きつけ方だ。

 

たくさんの医療ミス、あり得ない事故や勝手な判断の医療によって、

 

この国の現場が混乱しているのは、たぶん本当なのだろうから。