優里、蘭のマッサージを受ける


「優里君リラックスリラックス」


初めて行く店に対して緊張しすぎて挙動不審になっている俺が面白いのかクスクス笑いながら落ち着かせようとする聡子さん。
解ってはいるのだけど同性同士でイチャイチャしている店に行くのは勇気がいる。
俺の中であらぬ妄想が肥大化していくからだ。
それが解っているのか聡子さんは童貞君をリードするお姉さんの気持ちなのかな。
爆笑したい気持ちを抑え込み俺の背中を押しながら入店したのだけど、受付に居た女性はBさんだった。
Bさんは山科志保さんと言うらしく、占い師兼L&Jの店員さんとのことだ。

「此方の方は初めてなので手続きお願いします」

聡子さんが俺を紹介すると、志保さんは興味なさそうに淡々と入店手続きをする。
このお店は男性も女性も入店するので間違いが起きない様に身元確認はシッカリしている。
男装さんも女装さんも遺伝子上の性別で行く部屋は指定されているし、入店後もお互い交流出来る場以外は女性は男性の部屋に男性は女性の部屋に行くことは出来ない。
それを無視したりしたら、2度めまで注意で終わるけど、3度目は問答無用で出禁になるとのことだ。
まぁ、俺はそんなことはしないし、純粋にマッサージを受けに来ただけだから。
けど、過去に何人か出禁になった人がいるみたいで、逆恨みされてネット上でお店が叩かれたみたいだけど、他のお客さんの逆襲にあい消えていったとのことだ。
後で聞いた話しだけど、出禁はまだ良い方でお店の協力者でもあるSMクラブの経営者の女性にお仕置きされてしまう事もあるとのこと。

一通り説明を聞いた後で女性専用ルームであるLルームへと行き、ロッカーに持っていた持ち物を放り込んで取り敢えずお風呂へ向かった。
お風呂へ行くのは、単にマッサージの効果を高める為だ。

「じゃあ、私は彼女が待っているから行くね」

マッサージは予約制で受け付けで予約しなければならない。入店手続きの時にマッサージの予約をした時にお風呂に入る時間があったので入っただけ。
お風呂まで一緒に行動していた聡子さんは此処でサヨナラ。
この後は彼女とラブラブタイムだとのことだ。

いらっしゃいませ。
台の上でうつ伏せになって

俺の顔を見ずに施術台に上がれと言うマッサージ師さんの指示に従い、施術台にうつ伏せになる。

・・・肩と・・・腰ですか?
あと、背中も痛くないですか?

俺が何も言わないのに少し触れただけで俺の身体の状態を言い当てるマッサージ師さんに素直に返答しようとしたのだけど…

カナリヤバいですよ…!!

ぎゃぁ!!

ツボを押された影響で、電撃が駆け抜ける様な激痛に思わず悲鳴を上げてしまう俺の反応にも面白がることなく冷静に激痛ポイントを押したり凝った箇所を揉み解していく。
最初は激痛でしかなかったのが次第に楽になり、逆に気持ち良さに変わっていく。
俺の口から激痛の悲鳴とは違う吐息が漏れる。
あまりの気持ち良さに軽く感じてしまったほどだ。

あっ…言っておくけど、決して性感マッサージの類ではないよ。
飽くまで真面目なマッサージだからね。

そして…

ハイ!終わり!

施術を始めて約1時間
メッチャ軽くなった
俺の身体が別人になった様に感じられたほどだった。
施術が終わってマッサージ師さんにお礼を言った時に初めてお互いの顔を見た。

エッ…
マジ…

何と、マッサージ師さんは神社で遭遇していたCだった。
こんな所で出会うなんてと何と言う偶然…イヤ…此処まできたら最早運命としか思えない。

突然こんなこと言っても信じて貰えるか解らないけど、俺は貴女を知ってます。
今日受け付けしている山科志保さんと何人かで御朱印集めしてますよね?

あまりの嬉しさに一気に捲し立てる俺の勢いに気圧されたマッサージ師さんは少し思い出す様な仕草をしていたけど、記憶に残っていないのか怪訝な表情をするのみ。それどころかストーカーかと疑われてしまった様だった。

「決してストーカーではないよ
俺は神社巡りが好きでアチコチの神社へ行っているんだ。最近では京都の神社ですれ違ってます」

「京都…?確かに行ったけど…何社も行ったから…」

「この神社です」

尚も疑いの目を向けるマッサージ師さんにスマホから神社の写真を出して見せて説明をする俺であったが、他のお客さんが来るからと追い出されてしまったよ。
俺…こんなにヘタレだったか?

………
……

今日は楽だな
朝から2名程予約が入っていただけで、飛び込みのお客さんが何人来るかと言った状況。
予約状況は、一人目が午前中で二人目が午後からなので、間の時間は昭さんと陽子さんをマッサージしてあげようかな?なんて考えていたところに飛び込みで来たお客さん。
志保さんからの情報では男装さんとのこと。
一人目の方は中々の難敵だったこともあって少々疲れたから少し時間を開けて入って貰ったのだけど、このお客さんも難敵だったの。
施術台にうつ伏せになったお客さんを診たのだけど、カナリ酷い状況で正直言って整体に行った方が良いレベルだったの。
それでもツボを刺激しながら凝りを揉みほぐしてあげたおかげでカナリ良くなったのだけど、あの状況なら1週間もしない内にまた悪くなると思う。
施術を終えた後で知り合いの整体師さんを紹介しようと思ったのだけど、トンでもないことを言い出したの。
神社ですれ違っていたと言われてもピンと来ないし自己アピールが必死すぎたから面食らってしまい、怖くなった私は次のお客さんがいるからと追い出してしまった。
それからもう一人飛び込みのお客さんが来た後でお昼休憩をしたのだけど、その時に話しかけて来たのが聡子さん。
聡子さんも私のお客さんの1人でちょくちょくマッサージを受けに来ているのね。今日は彼女とお楽しみのようで、たまたま私の姿を見かけたから話しかけて来たの。
あの男装さんは聡子さんが連れて来たみたいで、純粋にマッサージを受けに来たみたいで私が此処でマッサージをしているなんて知らなかったみたいね。
一通り話しを訊いて、ストーカー疑惑は晴れた訳だけど、あの必死さはヤッパリ怖い。
お客さんとして来店される度にあんなアピールをされるのも迷惑だから、知り合いの整体師さんのお店に行った方が良いと言う事と、撫で肩なので筋トレも考えた方が良いと伝言を頼むだけにしたの。
その後、聡子さん情報によると男装さんは整体に通いだしたみたいね。
以外に真面目君だったみたい。

ストーカーかと疑った私は少しだけ反省したけど、お客さんとしか見れないし、整体に通いだしたみたいなのでもう会うことはないと思っていた。