ミス・サイゴンが終わって、、、 | 【公式ブログ】 週刊「神田恭兵」―明日も絶対晴れるっしょ!―

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俳優・神田恭兵。その日々をちょこっと覗いてみませんか?

ブログの更新を本当に疎かにしてしまい、なんと本日今年初の更新。
明けましておめでとうございます。IMG_4211.jpg
 
本当に失礼なことをしてしまい申し訳ございません。
最近は何でも、ツイッターのつぶやきに任せることが多く、いかにフォロワー数を増やすか、そんなことを考えたり。
よくないですね。
 
でもね、この前事務所の後輩「桜田航成君」と話をしていて、「今の時代キャスティングはツイッターのフォロワー数で決まることも多いんですよ」という助言を頂きました。
まずは10000フォロワーからがスタートライン
 
え?
 
1万?
 
 
新年早々に現実の厳しさを思い知る神田でした。
 
 
まぁそんな役者事情はどうでも良い。そろそろ真面目な文章で語りたいと思います。
ご存知の方も多いかと思いますが、ミス・サイゴンの全国ツアーで走り回った日々が終わってしまいました。
実は、こうやって作品を振り返ろうとするのは、あまり好きなことではないんです。
僕は一つ一つの作品、カンパニーにどっぷりと心をそして人生を掴まれる人間なんです。
それは作品の終わりが毎回悲しいということ。
 
「作品は終わっても、また出会えばいい。自分が努力さえすればこの作品とも、出会った尊敬する俳優の方々ともまた会える。」なんて言ってますが、それは精一杯の強がりなのかもしれないと、最近思うことが多いです。
作品に飲み込まれ、その中を生きること、俳優の仕事の本丸のような話ですが、俳優を続けていくこと、それを仕事にしていくためには何足をも草鞋を履き続ける必要がある。
これからのステップアップを考えていくためには、必要になってくる思考と行動力です。
まずは、そんなセンチな自分を認めるところから(笑)
 
ミス・サイゴン
 
この作品と出会って、オーディションの時から考えてみると10年が過ぎてしまいました。嘘か誠か、うちの事務所の社長が僕の名前を「恭兵」と兵隊の「兵」をつけたのは、トゥイをやってもらいたいからと言ってました。僕はその話を疑ってますが…(別の時は字画が‥と言ってたので。「柴田恭兵」さんから来たんじゃない?って笑)
 
また脇道にそれたぞ。
 
僕がサイゴンでトゥイを初めて演じたのは2008年の時。
その時の僕がどれくらい初心者だったか。
 
芝居というものに答えを探すほどに初心者でした。
ただガムシャラにその瞬間を必死に向き合ってました。
 
でもあの時の自分と今の自分の何が変わったのか?と聞かれれば、個人的には大きく変わってません。
同じように舞台に向き合ってます。
ガムシャラな中見つけた「答えなんてない」でも「形ではなく伝えることができる」そして「相手からも伝わって来る」ということを大切に。
そんなことを芝居を通して教えてくれた2008年のミス・サイゴン。
 
今回もそのことを実感することがありました。
毎回の話なんだけど、キム役とのやりとり(特にクークープリンセスの間)は難しい。どうやってキムの言葉を聞いていればいいのか?ミュージカルだと話し出すタイミングまで全て決まっているから、簡単でしょ?と思う人も多いかもしれないけど、そんなことはないんです。限りなく人の心の動きを的確に捉え計算尽くされた作品だからこそ、生理的に正しい瞬間に言葉が入っている。
でも、あのシーンでは、時間の早さを飛び越えてそのセリフの重さ(その裏にあるメッセージ)が重要視されていることが多い。
だから初めて演じた稽古の時(2008年)に、このキムの話す長い時間の間、どうやって心を動かしていけばいいのか?それを時が止まっていないようにどう表現したらいいのか?ものすごく悩んだんです。
そして迎えたプレビューの中、「この時トゥイは動かないんじゃなくて動けないんだ」と気がついたものです。
それには物凄い集中力が必要で、一人一人の役者さんが何を思って何を大切に感じて言葉を紡ぎ出しているのか?毎日違うエネルギーを繊細に感じ取ることが必要でした。
 
そして今回更に驚いたこと。
キム役を、韓国人であるキム・スハさんが演じていたわけだけど、トゥイとして役に入っていると、スハが話している言葉の背後にある感情の流れと思考というものが、言語という壁なんてないかのように伝わってくるということ。
「何でか分からないけど、何を考えてるのか分かるんだけど」と何度か彼女に伝えました。
でもよく考えたら、それは今までだって同じことだった。
全ての役者さんとの役として向き合っている時は、その向こう側が見えてくるもの。
伝えようと思う人の潜在的なエネルギーは凄いと思います。
 
なんか意味わからないことを言ってゴメンなさいね。
 
ざっくり言えば「共通言語は芝居です」って話です。
 
全ては出会い。
 
右も左も分からない自分が帝国劇場という特別な場所で役を演じることができたこと、そして結果的にこの役に育ててもらい、この役を更に突き詰めるチャンスを与えてもらったこと。
 
プリンシパル、アンサンブル。芝居をする・演技をする・作品を作るという意味では何も変わらないと思います。
でも、ミュージカルを志す人ならば誰でも、プリンシパルとして役を演じてみたいと思うもの。それが役者。
役者仲間と飲むたびに話題となるこの議題。
 
テレビに出て有名になる?
別の団体に行ってみる?
フォロワー数を増やす?笑
 
僕も含めて大きな問題です。
 
そんな中、自分はトゥイ役を演じるチャンスを3度ももらった。
それは運なのか、巡り合わせなのか。
分からないけど、ここからまたその巡り会いを模索する日々は続いていくんです。
 
役者としてまだまだ道半ばである自分。
これから様々な役に巡り合えるのかどうか?
そのために一つ一つの作品にどう向き合っていくのか?
今まで以上に突き詰めることが要求されていると実感しています。
 
大千秋楽から1週間以上経ち、今年待ちわびている様々な現場が動き出しています。
今年はね、ここ数年の仕事の流れから違う仕事の流れに進む大切な年です。
転換期。
だからこそ、楽しみでもあり不安でもある。
 
でもよく考えたら、僕はずっとそうやって色とりどりな現場を体験し、そこで育てられてきた。
もしできたら、これを読んでる方々にも、僕の行く末を見届けてほしいです。
必ず役者として常に何かを伝えていきます。
 
まぁ先のことも大切だけど本当にトゥイ役に感謝。
ありがとう。
 
そして、まためぐり会えますように。
 
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神田恭兵