リップシンク | 【公式ブログ】 週刊「神田恭兵」―明日も絶対晴れるっしょ!―

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俳優・神田恭兵。その日々をちょこっと覗いてみませんか?

『リップシンク=口パク』禁止法。
というものが、韓国で出来るかもしれないと二日前のYahooのニュースで読んだ。

そんなことに政府が口を出すな。

とか、もっと色々ニュースにすべきことがあるだろ

とか、まぁ当然と言えば当然の意見が寄せられていた。

そもそも口パクは、いけないと思いますか?


俺は、若い頃はテレビ番組を見ていて若いアーティストとかが口パクで歌ってたり、友達がデカイライブハウスで働いてて、あのアーティストの○○さんはステージ脇で別の人が楽器を弾いてるんだよって教えられて、『そんなの詐欺だ』って怒りを覚えたもんだ。

でも、今限りなく同じような職業をしていて思うことがある。

仮に口パクをしていようと、弾いたふりをしていようと、観ているオーディエンスが、嘘だと思わないものはパフォーマンスなんじゃないかと。

誤解のないように言っておくが、俺の働く現場ではリップシンクは一切無い。むしろ、リップシンクするのが限りなく難しい。生のオケがいて、何よりも感情をそのまま伝えないといけないのが芝居なので、口パクしちゃうと、嘘がバレてしまう。
そりゃ踊って歌うって、
死ぬほど辛い。
どんなアーティストだって、本気で歌って下さいって言われたら、その場でリズム刻む程度の動きで、歌に集中するでしょ?
踊って歌うってのは、歌ではなくて、パフォーマンスという、視覚と聴覚(あとは音波が身体に当たるから触覚か?)に働きかける別ものなんだよね。
必然的に、リップシンクはミュージカルではなりたたない。

だから今は、
仮に口パクだろうと、観ている人間が楽しければいいじゃんって思う。

もしも、流れてる音楽に芝居に完全に合わせて速度や強弱とかがコントロールできる音源とかができちゃったら、皆口パクになっちゃうかもしれないけどね。
でもそうなったら、逆にそういったことをコントロールするためのエンジニアの需要が増えて、いわゆるDJのレベル高いバージョンの人間が必要になる。その次元は難しいかな?
まぁ、ようは音楽は生であるって考えは間違えだと思う。これだけコンピューターミュージックが増え、サンプリングした音源を使って、どんな音楽も作り出せるわけだから、その技術を使わないことこそ、リスナーの気持ちをくみ取っていないと考えるべきだ。
生には生の良さがある。
そうじゃないものにも、その良さがある。
適材適所!
リスナーのことを考え最適なものを作るのが重要なんだ。


まぁ、上で述べたことは俺の自論の範囲だし、色んな人に様々な考えがあっていいと思う。

本題はこれからだ。



最初にあげたリップシンク禁止法→公演法改正案の記事の面白いところは、別にある。

どうも韓国の政治家の目には、近年韓国の音楽は口パクをするダンスアイドルグループが増えている。海外のアーティストは、ちゃんと歌いながらパフォーマンスをするのに、我が国のそれにはできないんだ?

という趣旨のもとにこのような改正案をあげている。

うーん、どっちもどっちの意見だけど、この韓国って国の羨ましいところは、政治家がたかが口パク禁止と言ってるけど、根本では自国のアーティストに対しもっと一流になるために口パクをやめよう、能力が向上して欲しいんだという意見を持っていることだと思いませんか?

政治が絡んでいいかどうかは置いといて、一人一人がもっと上を目指すべきだと働きかけようとする社会。

ただ目の前のお金を追いかける社会では生まれない考え。(トータル的にはビックマネーを引き出すことになるんだけどね)

決して、芸術を取り巻く環境は良くはないのが現状だけど、少しでも、俺らのやってるものにスポットライトがあたるようになって欲しい。

恭兵。