十兵衛「きじ丸、そなたの祖父は猿飛佐助。父はどうしたのだ?」
きじ丸「父さんは、俺がまだ5つの時に死んだんだ。」
十兵衛「そうか…」
きじ丸「昔、この里の山に一揆を起こした残党とそれを鎮圧しにきた徳川の兵が侵入したことがあったんだ
。その侵入をくい止める為に、討ち死にしたと…
父さんは、俺に忍の技を教えてくれなかった。何故だか分からないけど、教えてくれなかったんだ。」
十兵衛「そうか、それは悪い話を聞いてしまったな…」
今日の月は、美しい…
こんな状況なのに、私の心は落ち着いていた。
竹虎「小頭、お頭の守る北の方面に、一揆衆の残党が現れたようです。」
荘次「そうか…お頭は、結界内に侵入されない限り動かないはずだ。しかし、徳川の兵の動きが掴めない以上、結界に侵入を許してもむやみに一揆衆に手を出せない。なんとしても、我らが徳川方の動きをつかまなくては。」
私は、徳川方の動きを探る為に夜の山道を何人かの仲間と駆け下りていた。
荘次「左馬乃助、大丈夫か?お前はまだ若いからな、無理についてこなくても良いぞ。」
左馬乃助「大丈夫です。父から預かった、この銃がありますので、小頭の助けになりますよ」
荘次「そうか、頼もしいな」
本当に美しい夜であった。木々の間から差し込む月の光がまるで私達の進む道を示しているかのような、そんな気持ちになった。
明け方、徳川の兵の一行をの位置を捉えた。
徳川の兵は、真っ直ぐ私達の里の方面に向かっていた。
時同じくして、残党はお頭の忍術で道を失い彷徨い出した。
正午近くの頃か、結界の外で徳川の兵と一揆残党が出会い、戦が始まった。
小一時間で、圧倒的な戦力を持った徳川方の勝利に終わった。
しかし、予期せぬことが起きた。突然道を失った残党の動きを不信に思った徳川方の兵がいたのだ。
彼らは、腕が長けていた。
わずか少数の部隊であったが、我らの尾行に気づき、戦いが始まった。
「尾張柳生か…」
竹虎が討たれた。
ここで尾張柳生のものに出会うとは。気がつけば、こちらは私と左馬乃助以外が討たれていた。
敵は、左馬乃助をまず狙った。
荘次「左馬乃助!!打てっ」
銃声と同時に、敵の動きが一瞬止まった。私はその隙に、左馬乃助にかかる敵を数人切り、左馬乃助に支持を与えた。
荘次「私がなんとしてもここをくい止める。お前は走って頭に伝えてくれ。それと…秋葉にも達者でいろと。あとな、あと、きじ丸に武芸を教えてやってくれ。頼んだぞ!」
左馬乃助「はっ」
私は持てる力を全て出し、敵を、くい止めた。
しかし、敵はさすがの剣豪、私がやられるのも時間の問題であった。
薄れゆく意識の中で、妻のことを思い、里のことを思い、きじ丸のことを思った。
きじ丸、戦い螺旋にそなたを迷いこませたくなかった。だが血の因縁からは逃げられないのかもしれん。
強く生きろ!!強く!!血は繋がっていなくても、お前は私の息子なのだからな。
きじ丸「でも、小頭が俺に武芸を教えてくれたんだ!!」
十兵衛「もうすぐ若君殿達が尾張より帰ってくるのではないか?」
きじ丸「小頭達、十兵衛様の活躍を聞いたら驚くぞ、きっと!!みんなが驚く顔が楽しみだ!」
荘次を助けに来た才蔵達の目の前に、尾張柳生のものたちが立ちはだかった。しかし彼らは、言葉を残し帰っていった。
「あの男は強かった。」
数日後、尾張からの使者が真田の里を訪れ、里と尾張の同盟が始まるのであった。
恭兵。