●京都きものオーディション研修会●
⑥たたみ方とメンテナンス
前回のブログに引き続き、
最終回となる第6回目の研修会、夜の部の後半レポートです。
後半は、悉皆について、
悉皆とは、「ことごとくみな」という字の通り、
きものに関するありとあらゆる相談に乗り、頼りとなる頼もしい存在です。
講師の遠藤明さん(京染卸商業組合)から、
悉皆業のいろは、知っておいて役立つ、
いろいろなことを教えていただきます。
メンテナンスや仕立て、素材については、
本で読んだり、説明を聞いても、なかなかわかりづらいことですが、
今回は、実際に実物を触ったり、目の前で実演してもらったりしながら、
ひとつずつ解説いただくので、非常にわかりやすく納得がいきます。
まずは、さまざまなきものの生地を触ってみます。
「これはなに?」「じゃあ、これは?」「絹かな?ポリエステルかな?」
素材は、絹、ポリエステル、麻など、さまざま。
実際に触ってみて、それぞれの素材がどんな質感をもっているのか、
感じてみます。触れば触るほど、なにがどれだかわからなくなってしまいそう。
同じ絹でも、きものになるちりめん、大島紬、裏地になる八掛の生地、
それぞれに風合いや肌触り、厚みなどが違います。
コートになるつるっとした絹の生地など、一見、水に強そうに感じるものもあり、
知らずに、洗えそうと勝手に判断して水につけたら、
大変なこと(縮む!)になることが理解できました。
続いては、反物を広げていきます。
青、白、赤、緑と染め分けられた一反の反物。
よく見ると、切り分けられた部分ごと、色が異なり、
それぞれの部分をミシンでつなげてあることがわかります。
これは、一反のきものを解き、端縫いした状態。
きものをほどいてつないで1枚の反物に戻し、水洗いすることを
「洗い張り」と言いますが、その洗い張りの見本といった感じでしょうか。
わかりやすいように、
袖(青と白)、身頃(赤)、おくみと衿(緑)と染め分けてあり、
一反の反物がどのように裁断され、きものになるのかが一目瞭然です。
合わせて、ぼかしの八掛の解き、端縫いしたものも見ました。
オレンジ色のぼかし、それぞれがどこの裏になるか、わかりますか?
身頃の裾裏はすぐにわかりますが、衿先裏と袖口布が盲点ですね。
※この写真を見てもよくわからない方は、
最後に、ベンジンでのメンテナンスの実演です。
前半にたたむ練習をした帯が少し汚れていたので、
試しにベンジンで処置をしてみました。
手垢汚れだったので、ベンジンでこするだけで、だいぶきれいになりました。
ベンジンをびしょびしょになるくらいたっぷりつけて、専用のブラシでこすります。
すると、下に敷いてあるタオルに汚れが移っていくのです。
帯についている汚れを、下のタオルに叩いて振り落とすイメージです。
ベンジンは揮発するので、窓を開けて、火気厳禁!静電気も注意です!
揮発して乾いてしまうと汚れを浮かす効果がないので、たっぷりつけてこすります。
絹のハギレに口紅をつけて、ベンジンでこすって汚れ落としをしてみました。
ちょっと擦っただけで、下のタオルに口紅の色が移っているのが、
わかりますよね?ベンジンの効果です。
油性の汚れは、ベンジンで浮かして、他の布(タオル)に移し取ってきれいにします。
みんなで順番に、ベンジンの汚れ落としを実際にやってみました。
何事もやってみないと、いざというときに実践できませんよね!
ベンジンは、自分でやってみることができますが、
水洗いは、こすれて絹の表面が毛羽立ってしまうため、
素人はやらないほうが懸命です。
油汚れは油(ベンジン)で落とす、水汚れは水で落とすのが基本。
水汚れは、自分で落としたいと思っても、
肝心な汚れは落ちず、絹の表面を毛羽立たせてしまうのがオチ。
プロに任すほうがいいと思います。
早めの処置なら、しみ抜きもそんなにコストはかかりませんので、
染織補正のプロに任せましょう!ということになりました。