●京都きものオーディション研修会●


 ⑥たたみ方とメンテナンス


前回のブログに引き続き、

最終回となる第6回目の研修会、夜の部の後半レポートです。


後半は、悉皆について、

悉皆とは、「ことごとくみな」という字の通り、

きものに関するありとあらゆる相談に乗り、頼りとなる頼もしい存在です。


講師の遠藤明さん(京染卸商業組合)から、

悉皆業のいろは、知っておいて役立つ、

いろいろなことを教えていただきます。

メンテナンスや仕立て、素材については、

本で読んだり、説明を聞いても、なかなかわかりづらいことですが、
今回は、実際に実物を触ったり、目の前で実演してもらったりしながら、

ひとつずつ解説いただくので、非常にわかりやすく納得がいきます。


京都きものオーディション-3/11研修会  京都きものオーディション-3/11研修会


まずは、さまざまなきものの生地を触ってみます。

「これはなに?」「じゃあ、これは?」「絹かな?ポリエステルかな?」


素材は、絹、ポリエステル、麻など、さまざま。

実際に触ってみて、それぞれの素材がどんな質感をもっているのか、

感じてみます。触れば触るほど、なにがどれだかわからなくなってしまいそう。


同じ絹でも、きものになるちりめん、大島紬、裏地になる八掛の生地、

それぞれに風合いや肌触り、厚みなどが違います。

コートになるつるっとした絹の生地など、一見、水に強そうに感じるものもあり、

知らずに、洗えそうと勝手に判断して水につけたら、

大変なこと(縮む!)になることが理解できました。


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続いては、反物を広げていきます。

青、白、赤、緑と染め分けられた一反の反物。

よく見ると、切り分けられた部分ごと、色が異なり、

それぞれの部分をミシンでつなげてあることがわかります。


これは、一反のきものを解き、端縫いした状態。

きものをほどいてつないで1枚の反物に戻し、水洗いすることを

「洗い張り」と言いますが、その洗い張りの見本といった感じでしょうか。


わかりやすいように、

袖(青と白)、身頃(赤)、おくみと衿(緑)と染め分けてあり、

一反の反物がどのように裁断され、きものになるのかが一目瞭然です。


合わせて、ぼかしの八掛の解き、端縫いしたものも見ました。

オレンジ色のぼかし、それぞれがどこの裏になるか、わかりますか?

身頃の裾裏はすぐにわかりますが、衿先裏と袖口布が盲点ですね。

※この写真を見てもよくわからない方は、

きもの検定教本Ⅰのp.151を確認ください。


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最後に、ベンジンでのメンテナンスの実演です。

前半にたたむ練習をした帯が少し汚れていたので、

試しにベンジンで処置をしてみました。

手垢汚れだったので、ベンジンでこするだけで、だいぶきれいになりました。


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ベンジンをびしょびしょになるくらいたっぷりつけて、専用のブラシでこすります。

すると、下に敷いてあるタオルに汚れが移っていくのです。

帯についている汚れを、下のタオルに叩いて振り落とすイメージです。

ベンジンは揮発するので、窓を開けて、火気厳禁!静電気も注意です!

揮発して乾いてしまうと汚れを浮かす効果がないので、たっぷりつけてこすります。

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絹のハギレに口紅をつけて、ベンジンでこすって汚れ落としをしてみました。

ちょっと擦っただけで、下のタオルに口紅の色が移っているのが、

わかりますよね?ベンジンの効果です。

油性の汚れは、ベンジンで浮かして、他の布(タオル)に移し取ってきれいにします。


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みんなで順番に、ベンジンの汚れ落としを実際にやってみました。

何事もやってみないと、いざというときに実践できませんよね!


ベンジンは、自分でやってみることができますが、

水洗いは、こすれて絹の表面が毛羽立ってしまうため、

素人はやらないほうが懸命です。


油汚れは油(ベンジン)で落とす、水汚れは水で落とすのが基本。


水汚れは、自分で落としたいと思っても、

肝心な汚れは落ちず、絹の表面を毛羽立たせてしまうのがオチ。

プロに任すほうがいいと思います。

早めの処置なら、しみ抜きもそんなにコストはかかりませんので、

染織補正のプロに任せましょう!ということになりました。