現在チームは活動自粛が続いており、各々でトレーニングなどに励んでいます。そんな中、一人の部員に着目し、今その胸に秘める思いをお伝えします。第一弾はチームの元気印、義村(4・西京)。



 ノック中のグラウンドから、試合のベンチから、いちばん威勢よく響き渡っているのは義村の声だ。チームメイトは「義村がおらんとなんか今日寂しいなってなる」と口を揃える。本人に直撃してみたところ、「声出しは実は意識している」という。そのきっかけとなったのが2回生の冬、後に自身にとって大きな転機となるメンタルトレーニング講習だった。

 2回生まではどん底だった。入部後すぐに京大野球部の予想以上のレベルの高さに圧倒され、どんなに練習をしても自分が試合に出るビジョンが全く見えなかった。周りからの評価を気にして思うようなパフォーマンスが出来ていなかった。オープン戦の他人の成績と比べては一喜一憂していた。そんなとき、京大野球部のOBから野球部へメンタル講習の案内があり、怪しいなとも思ったが、どん底だったからこそ何か光が見えればと、自ら志願して参加した。そこで学んだのは、「人の言葉でも自分の言葉でも、耳から聞こえた言葉は自分の深層心理にはたらく」ということ。この日を境に、自分がミスをしても無理やりでも元気な声を出すことで、落ち込まなくなった。「『反省』に意味はあるが『落ち込む』ことには意味がない。」気持ちの持ちようが変わると、他人と比べてしまうのはネガティブになるからだ、自分はできると思えば比べなくなると気づいた。

 今では声出しは「自分のため」、そして「周りのため」でもあるという。野球経験者なら思い当たるかもしれないが、野球ではミスをしたとき「おい~」というようなミスをした選手を責める声がありがちだ。しかし彼の場合はこうだ。「ネクスト!」ミスに落ち込むのではなく、次のプレーに集中するための声かけだ。耳に入る言葉が心理状態やパフォーマンスに影響するなら、自分の声が他の選手の耳に入ることでその選手のパフォーマンスも上がることになると考えている。アドバイスはあって良いが責めることは次に何も生まない。元々ポジティブな性格ではあったが、他人に分け与えるという発想が生まれたのはメンタル講習の影響だ。ポジティブな声掛けは次第にチーム全体に浸透し、今では練習中の雰囲気だけでなく、リーグ戦でのスタンドの選手たちの雰囲気もがらりと変わり、チームの結束力はますます高まっている。

 現在は部としての活動は自粛中で、春季リーグ戦は延期になった。先行きが見えない状況に誰もが不安を抱える中、それでも彼はもちろんポジティブだ。「自粛でマイナス面はあるが、その代わりできるだけ多くのプラスをもって戻りたい。」この自粛期間中は、youtubeの動画を参考にして得意のバッティングの上達と走力アップに励んでいる。「リーグ戦で打たないと納得して終われない。素晴らしい応援とグラウンドがある場で打ちたい。」そのために、彼は今日も前を向いている。