京フィル第215回定期公演 リレーコメントNo.1 | 京都フィルハーモニー室内合奏団のブログ

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1972年に結成。2022年で創立50周年を迎える。
一人一人がソリストの個性派揃いのプロの合奏団。

京フィルブログをご覧のみなさま、こんにちは。
京フィル打楽器奏者の越川雅之です。

土曜日に予告のありましたように、10月14日の定期公演にむけて本日より週に2回(月曜日と木曜日)に恒例のリレーブログを連載いたします。
(昨日の齊藤マエストロの投稿はリレーとは別枠だそうです)

記念すべき第1回が私に回って参りました。

なぜなら・・・・・

10月を迎えて京フィル入団から17年が経過したから

・・・・・

・・・・・・・
ではありません。

 

 

それはチラシ(裏面)に写真が載っているから。 

(おそらく市川さんと柳原さんにも回ることでしょう)





写真が載っている理由

それは・・・・・

今回のソリストだから
…正しくは『ソリスト[も]するから』…



はい、それではチラシの表を見てみましょう。



小さく名前も載っていますね。
(探してください)


でも、どの曲の独奏なのかわかりません。

☆印の上から2つめ、少し小さい文字になっている

北爪道夫/サイド・バイ・サイド 〜室内オーケストラ版

 

というのがご覧いただけるでしょうか?
保護色のように(改訂初演)という文字も見えます。

特に何も書かれていませんが、この曲は打楽器独奏と室内オーケストラのための作品で、その独奏担当が私なのです。


この作品について少し書いてみたいと思います。
できれば、このブログをお読みいただいた方に「聴いてみたい!」と思っていただけるように。

この【サイド・バイ・サイド】は打楽器を勉強する音大生なら知らない人はいない超メジャーな曲です。
演ったことはなくても聴いたことはある、100歩譲っても存在は必ず知っています。
ところが、ここから先は少し話が違ってきます。
打楽器ソロのための作品だと思っている人が少なからずいます。
かく言う私も打楽器ソロのための作品だという認識から入りました。

実は、1987年に開催された「第5回オーケストラ・プロジェクト」で発表された【サイド・バイ・サイド 〜打楽器独奏とオーケストラのための 】から打楽器を独立させたもの、それが独奏曲になっているのです。日本管打楽器コンクールの課題曲にもなっています。

そもそも、オーケストラと打楽器ソロが同じ時間を共有しながら、それぞれ独自の音楽を展開して『並びゆくもの』という意味での〈サイド・バイ・サイド〉なのです。なので本来ならばオーケストラがあってこそ〈サイド・バイ・サイド〉が成り立つのですが、打楽器ソロの中にもポリリズム(複数のリズムが同時に存在すること、多声部にきこえること)による〈サイド・バイ・サイド〉も多く存在します。

そして[version Ⅱ]として1995年に書かれた室内オケ版がありますが、今回はさらに京フィルの編成に合わせて委嘱した[version Ⅲ]を初演いたします。

そんな成り立ちはともかく、内容に関しても少し。


切り離しても打楽器独奏曲としても成立する、、、つまり、それは打楽器ソロには全く休みがないことを意味します。10分ちかく叩きづめ、そんな協奏曲は他にないのでは!?

 

 


この曲の特徴として同じリズムの反復があります。

 

 

これには注釈がついています。



打楽器だけの独奏ならば個人の自由なのですが、チェンバーオーケストラがあり、指揮者も居る。
同じ時間を共有しながら、それぞれ独自の音楽を展開して〈サイド・バイ・サイド〉すれば、どんな音楽が現れるのか今から楽しみです。


また、楽譜には例としてボンゴ、コンガ、トムトム、バスドラムで書かれています。


が、このような但し書きもあります。
【楽器の変更は膜質打楽器の範囲で自由である】

世界中には様々な膜質打楽器、つまりタイコがあります。
アフリカの太鼓で演奏する人もいれば、和太鼓で演奏する人もいます。

 

 

 


今はこんな感じで演ってみていますが、公演当日には総替えになっている可能性もあります。
今までソロとしては何度も演奏していますが、選ぶ楽器はそのたびごとに違います。

7つの太鼓の持つ7つの個性や世界観を生かすのか、[つながり]や[歌]を大事にするのか、はたまた単に[リズム]だけで創り上げる立体的な世界を求めるのか、壮大なテーマと向き合うことになるのです。いずれにしても『ただ複雑なことが正確にできてスゴい』といった技巧(身体の動力性能的な意味合いで)を見せびらかす演奏で終わらせることはありません。

どうぞお楽しみに!

 

京フィル打楽器奏者 越川雅之