母に続き、次女もコロナから無事生還を果たした。
私はと言えば、熱こそ出なくなったがとにかくダルい上に嗅覚をやられ、すっかり匂いが分からなくなってしまっていた。
次女も普段から鼻炎持ちなので嗅覚だけは帰って来ていなかったが、食欲は旺盛になった。
『インフルと違ってコロナってめっちゃキレが悪いよね…』
などとぼやいた。
旦那はと言えば、会社の方でも皆コロナに倒れ、暫く休業となり、なおかつ出勤日が近付いても一向に良くなる兆しが見えなかった。
奴は殆ど食べる事が出来なくなっていた。
『やっぱり肝臓が悪いから治りも悪いのかね?』
しかし、このまま食べずに酒なんか飲んだりしたら……
4年前の悪夢が蘇ってきた、そう
アルコール性ケトアシドーシス
空腹続きの状態にアルコールを摂取する事によって、体の電解質に不具合を起こし、最悪死に至る!と言うアレだ。
『いい!?何も食べないで酒なんか飲んだらまたあの時のアレになるよっ!!』
と奴に厳重注意をしておいたが、私は匂いが全く分からなくなっていた為に、
酒臭いかどうか、臭いが全く分かんなくなっちまっていた!
奴の、トイレで寝ちゃった事件の後、私もポヤポヤ
していた訳では無い。
体調が良くなったら直ぐにでも何処かの機関に相談しに行こう!と、4年前に行った救済施設の事を思い出し、即そこに電話した。
1週間後にアポイントを取った。1週間あれば体も元気を取り戻していることだろう。
体の怠さと匂いは復活していなかったが、発病してから1週間以上経っていたので頑張って仕事に行き、とてつもなく長く感じられたが遂に相談日が到来した。
次女も行きたいと言ってくれたので、35℃を超える暑さの中、実に丸4年振りにその施設へと赴いた!
奴はその日、依然体調は良くならず仕事を休み家に居たが、
『ちょっとこれから酒害相談に行ってくるから』
とだけ言い残して出掛けた。
施設で出て来てくれた方は、なんと4年前と同じ男性だった!相手も、
『4年前も私でしたよ!前の書類を探しておいたのでこれを見ながら話しを進めて行きましょう!』
と、私と次女それぞれに名刺を渡してくれた。
肩書きがいっぱいだ!
凄い頭が良いんだろうな…と感心する事しきり。
『先ずはご主人のお酒の問題をどうにかする前に、お二人が少しでも楽になれる方法を考えましょう』
この言葉が物凄く心に沁みた!!!
4年前からの経緯を説明した。
2回断酒をした事、そのうち1回、2年前に入院した事。
引越しをして母と同居を始めた事。
離脱症状が普通と違って長すぎる事。
その為、骨折した時入院を諦めて通院だけで治療をした事。
病院をタライ回しされた事。
母と旦那、二人に気を遣いながら日々生活していてしんどい事。
そして、
今後一緒に生活して行くのは厳しい事。お金が無い事。
ひとしきり話し終えると相手の方は、
『それは…とても大変なご苦労をされていますね…』
と、真剣な表情で言ってくれ、思いがけず何か込み上げて来るものがあった。ジーン…。
この人なら!
この人ならきっと何か打開策を考えてくれるはずだ!!!
『とにかく、先ずは一度仕切り直しをしてもう一度キチンと治療をしないと前に進むことは出来ないです。ご本人は入院はしないと仰ってるんですよね?そこを何とか上手く話しを持って行くように考えましょう』
そう、奴は
『酒は止めない、入院もしない』
と私達に断言していたのだ!
『自分達が今どんなにか不安に思っているかと言うことを伝えて入院してもらうんです』
『でも…殆どシラフの時が無くって、何を話しても無駄なんです…』
『ご本人にこちらまで相談に来てもらうことも難しいですか?』
『それは多分出来るとは思いますが…』
『入院をして、ケースワーカーの人にもう入院代は払えないし、これ以上一緒に生活したくないと言って、ご主人の生活保護を申請してもらうという方法がベストです。個人で生活保護を申請しても、そう簡単に申請は下りないでしょうし、途中で諦めちゃう人も多いんですよ。でもワーカーが間に立つことによって話しがスムーズに進む事が出来るんです』
『そ、それは…』
要は、
奴を病院にぶち込み、その間に奴を家から追い出すべくワーカーにその旨を相談して、生活保護を受けさせ奴を家から追い出す、といった算段だ。
断酒を開始して解毒し、そして身寄りも無く、生活保護を受給していればここの施設で引き取ってもらえるのである。
要するに騙し討ちである。
そんな事…私に出来るのか!?……
『もう一度皆で話し合いをして、治療をする事が大事で、お家で話し合いが出来ないようであればここに来てもらって話し合いをしても良いですよ』
『はい…』
担当の人は本当に優しく親身に話しを聞いてくれて、あまりのその優しい口調に感動すら覚えたが、
言ってる事はかなり辛辣だ(笑)
まあ私ももう一緒に住みたくないとはっきり言っちゃったからなのだが。
『精神科ではどんな事をやってるんですか?』
『なんか全然大したことなくて、飲んでますか?飲んでません。眠れてますか?寝れてます。じゃあ次回は4週間後。これだけです…行ってても何の意味もないんです』
『うーん…それでも毎回キチンと通院出来ている人って本当に少ないんですよ。通院出来ていると言うことは少なくとも治したいと思ってるんだと思います』
『睡眠薬もらいたいから行ってるだけみたいに思うんですが…前は私も一緒に行ってて、飲んじゃって困る!って先生に訴えたりしてたんですけど』
『先生は何と?』
『ご主人!ダメですよ!ご家族に迷惑掛けて!絶対に隠れて飲んだりしてはダメですよ!って…これだけ…』
『ええっ!?そ、それは…何というお名前の先生か教えてもらえますか?』
『え、、K先生です…💧』
先生の名前、メモに取ってる!!!
えっ、何!?本当はもっと別の事やったりするもんなの!?
何か…不安になって来た(笑)。
『あと、なんか未だに自分は依存症じゃないとか言い張ってて…』
『それはですね、結局は自分がお酒を飲んでとてもだらしなくなっている、そう言った自分の姿を見たくないし、認めたくないから自分は病気ではない、と言ってるんです』
『えぇ?』
『他の方も皆さんそうなんですよ、そういう病気なんです』
なんつう自分勝手な病気なんだ!!(笑)
『アルコール依存症と言うのは分かりやすく言うと、頭の中のガンと同じような感じなんです。再発率は80%、殆どの人が再発してしまうんですね。しかし、病院で診てもらっている人は本当に数少ないんですよ』
それは聞いた事ある…
『そうですか…』
『でもね、断酒している期間が長ければ長いほど再発のリスクは低くなるんですよ』
『そうなんですね?でも離脱せんもうが治まったと同時に飲んじゃって…。あんな変な離脱を起こすと他の病気に掛かった時に入院も出来ないし、本当に困ってるんです』
『そうですね…でも結構同じようなタイプの離脱を起こしてる人もいるんですよ』
『へえー!そうなんだ!?』
『離脱症状もね、周囲の人が想像している以上に物凄く辛いんです。不安ですし怖いし、自分が何処に居るのかも分からなくなって、ホント辛い期間なんです。だから余計にもう入院はしたくないと思ってしまうんですね』
そうなのか。
こっちからしてみれば、毎日規則正しい生活させてもらって、ベッドで日がなゴロゴロして、時間になるとご飯が出て来て。
羨ましい、こっちが入院したいわ!とか思ってたけど、やっぱり病気の為の治療なんだなあ~!
『しかしご主人が骨折した時に通院を選んだと言うのは正解です』
『もう、そうするしかなくて
』
『よろしければ一度こちらにご主人とおいで頂いて、話し合いとか出来ますのでね、お家でもご主人とお話ししてみてください。あと、他の家族会とか興味があれば書類を揃えて来ますけど』
『お願いします!行ってみたいです』
他の相談機関や家族会などを開催している所の書類を沢山用意してもらい見てみたら、、
何これ!こんな遠い所ばっか!?
ほぼほぼ小旅行じゃん!!
『こ、これしか無いんですか??』
『そうなんですよ、少ないですよね…』
『い、行けそうであれば行ってみます
』
『本当にね、よく4年前の事を思い出してうちに来てくださってもらえて良かったです!また何かありましたらいつでもご相談に乗りますから来てくださいね!』
『はい、本当にありがとうございました!』
面談は1時間以上にも及んだが、とにかく誰かに話しを聞いてもらった!それだけでもかなり気持ちが軽くなった!
来月になったらどこかの家族会に参加してみようか……。遠いけど…
家に帰った後次女に、
『さっきの…入院してる間に生活保護うんぬんして家を追い出すって話し、さ、どう思った?』
と聞いてみた。
『さすがにそんな鬼のような事出来ないよ💧』
やっぱり…
『じゃあ来月どこかにまた2人で行ってみよっか?』
奴はと言えば、私達には何も聞いては来なかったし、私も何も言わなかった。
言った所で今はどうこうなるような問題ではないからだ。
しかし何かを察してはいたようだ。
相談に行ってきた日から酒を控えているようだった(少し)。
『まあ続く分けないけどね!』
『そうそう!飲まなきゃせん妄起こすもんね!』
私も次女も散々裏切られて来たのだ。
1日2日、酒を飲まなかったからと言ってそれが何だ!って感じである。
それから少しづつだが奴の体調も良くなったり悪くなったりを繰り返しながらもなんとか復帰出来そうな兆しが見えてきた。
それでもコロナ発病から10日以上経っても未だ弱っているとは…(私より若いのに…)。
やっぱり肝臓かな、もしかしたらこのまま弱って死ぬのかな…
だが、入院は絶対に出来ない!
奴は精神科以外の病院には入院出来ない体なのだ!!
家で最後まで看取るとか
絶対に無理!!(`・ω・´)
私の苦悩はまだまだ続きそうだ。