そうだ!精神科へ襲撃に行こう!! | 怒涛の3ヶ月~2年目

怒涛の3ヶ月~2年目

旦那のアルコール依存症→精神科外来→離脱せん妄→借金地獄→断酒→スリップ→精神科入院→現在



ここ数週間私の気持ちは晴れなかった。


心の中にずっと重たいわだかまりがあった。

目には見えない速さで、少しずつ以前の旦那へと戻って行っていると確信したからだ。

このままでは一年、いや下手をすれば半年後くらいには元通りのアルコール依存生活に戻っているかもしれないのでは無いかと恐怖を抱いた。


当の本人は時々少しだけしか飲んでいないと言うが、確かに少しなのかもしれないがその少しが大問題なのだ。

体は正直だ。少しだろうが何だろうが、体的には大量に接種した事と変わりはないのでは無いだろうか?

なぜならば、奴は休みの日は殆ど眠っているか、うつらうつらしながら過ごしている。
起きている時でもその動きは緩慢で、どう見積もっても正気とは思えない。

まともか、そうでないかはひと目見れば分かる。一目瞭然だ。

『ほんの少し』と言ってはいるが、それは違うだろう。
休みの日等は一日複数回飲んでいるだろうと断言出来る。

いずれこのままではまた体を壊して倒れるか、連続飲酒をしていなくとも同じような状況になってしまうのではないかと、私は懸念した。



七月に精神科へ着いて行った時に、医師から

『入院してもその期間断酒出来るが、退院後にはまた飲んでしまう。それがアルコール依存症と言うものなんです』

とやや投げやりな態度に私は非常に憤慨し、もう二度と私は精神科へは行かない、と決めていた。


『どうですか?飲んでませんか?』
『飲んでません』
『お薬は効いてますか?眠れてますか?』
『眠れてます』
『じゃあ今回も同じお薬を出しておきますね』


とこのように医師と患者とで数分間の茶番を永遠に繰り返していれば良いのだ。などと思った。


しかし、このままずるずると続けて行った所で結末は最悪のシナリオだと言う事は、血を見るよりも明らかだ。


そう言えば。
ずっと以前、何ヶ月も前に

『もしまた飲んでしまったら最初から仕切り直せば良いんですよ』

と医師が言っていた台詞が蘇った。

そうだ、やはり次は私も着いて行こう。
そして『仕切り直し』をしてもらおう。それしかないのだ!

でももしまた『様子を見ましょう』などと言われたら……


私は鬱々とひたすらどうしようどうしようと頭を抱えていたら次女が、

『私も一緒に着いていこうか?』

と言ってきた。

確かに。
私一人がついて行くよりも、頭数多い方が『深刻度』がより高くなりそうだ。


だとしたら、思い切って家族全員、四人で行ってみようか!?


四人で診察室に入ったら一体先生はどんな顔をするだろうか。

女三人で口撃すれば、先生も何かしら手を打ってくれそうな気がしなくもない。


セカンドオピニオンの事も当然考えた。

しかし、『精神科のセカンドオピニオン』など、聞いた事がないが、あるのだろうか?

調べて見ればなくも無い。



どうやらこの病院はセカンドオピニオンとは言え、通院目的の為のセカンドオピニオンと言うよりも、
今現在行っている治療に対する意見提供をするだけ、といった相談のみのようだ。

それにしても、高い……。
何となく弁護士事務所へ相談に行った時の事を思い出した…。


仮にここへ相談に行ったとしても、現状維持のままで、などと言われでもしたらそれこそ金をドブに捨てるようなものだ。

しかも今現在の主治医に
『セカンドオピニオンしたいです』
とは非常に言い難い。
何かもっと内臓疾患、とかならばまだしも…。

それとも他の医師の意見も聞きに行きたいとでも言ってみようか…。


とにかく次回、また一緒に精神科へ着いて行って今の現状を何とかして伝えなければ手後れになる。
そしてまた抗酒剤を再開してもらわなければ。

しかし何故、前から思っていたが毎回睡眠薬は出して来るものの抗酒剤を出そうとしないのか凄く疑問に思っていた。


結局は本人が
『何とかして止めたいんだ』
といった気概を見せないと意味が無いのか。

それとも、万一抗酒剤を服用中に何かの弾みでアルコールを飲んでしまった時の事を懸念しているのか。

そこも尋ねてみなくてはならない。


運が悪い事に今週の木曜日の診察日、出張に当たってしまっていた。

『次いつになる?来週の木曜日くらい?』
一週間くらい延びるのだろうかとげんなりしながら旦那に聞けば、

『いや多分土曜日かな』

『ええっ!?』

土曜日は私は毎週仕事があるので着いて行くことが出来ないのだ。


『それは困るよ!私が行かなきゃ意味がないじゃない!もう一度仕切り直さないとダメでしょう!?』


この『仕切り直し』と言った瞬間旦那の顔色は変わった。

『分かっているよね?』

『……』

ここ数週間、私は非常に腹が立って仕方がなかったのでまともに旦那とは口も聞かずやり過ごしていたのだ。
しかしこれ以上目を背けていても事態は悪くなる一方だ。

『嫌かもしれないけど抗酒剤でも出してもらって最初からやり直さないと。またあっという間に元に戻ってしまうよ』


相変わらず旦那は言い訳じみた事しか言えない。
仕事で嫌な事があっただの、ほんのこれだけ、だの、聞いているこちらが恥ずかしくなって来る。

終いには黙って私の前から逃げてしまった。


ああこれは、もう本人は治す気がないんだなと思った。

私は、自分が死ぬまでか、奴が死ぬまでか、
ずっとこのような日々を送って一生を過ごさなければならないのか。


仮に七十代で死ぬとしたら、あと二十年しかない。
二十年もの間、私が死ぬまでか奴が死ぬまでかは分からないが、ずっと悩み続けながら生きて行かなければならないのか。

たった二十年しかないのに、にも関わらず自分のこれからの楽しみよりもそのようなくだらない酒なんかの事で……。


それは何がなんでも阻止しなければ、でなければ心底やり切れない気持ちでいっぱいになった。

やはり、

家族皆で精神科に、診察室に襲撃するしかなさそうだ。