拝啓、小川あると様
あなたに手紙を書くのは初めてですね。
まずはじめに「本当にありがとう」
最後の夜、僕のベッドの横に簡易ベッドを作りましたね。
その前の夜あなたがベットからずり落ちてしまったのもありお互いにその方がいいと思ったんです。もしかして嫌でした?
あなたがモゾモゾ動く度に寝苦しいのかと思い寝返りをさせてましたがあの時から僕の近くに来てくれようとしてくれてたんですね。
すみません、何度かリセットさせちゃいましたね。
下半身は完全に、上半身も右腕は点滴用の針がついていたのでほぼ動かせなかったはずなのに、夜中あなたが横に寝ていたときは驚きました。
布団から顔を出して僕の方を見てましたね。
動けないはずなのに頑張って這ってきてくれたのですね、本当に嬉しかったです。
小川あると様、あなたは僕の最愛の娘です。
血の繋がりこそないですが本物の娘です。
いつもお出迎えありがとう。
常に近くに居てくれてありがとう。
トイレやお風呂に入っている時も着いてきましたね。ストーカー行為も可愛かったよ。
おかげで僕は戸を開けて入る癖がついちゃいました。今後なおるか不安です。
昔話でもしましょうか
あなたの幼名は『きよ』でした。
「きよ~」「きよちゃ〜ん」そう呼ばれながら薄暗くなった頃あなたはうちにやって来ました。
小さくておてんばのすごく可愛い子でした。
うちに連れてきたしほさんは兄弟姉妹の中で1番の美猫って言ってましたよ。自覚ありました?
確かにあなたは美猫らしく、写真を見せた相手やうちに来た人は「ほんと美猫」って言ってましたよ。
正直僕は自分が親バカで可愛いと思ってるだけかな?と思ってたんですが違うらしい。
あなたは僕の自慢の美猫な娘でした。
ごくたまに思ったもんです。
あるとが人間になったらすごく可愛い女の子なんだろうなって。
人間になってうちに来ないかなって何度思ったことか
こうやって手紙を書いているとふと、あなたが邪魔してきそうって思っちゃいましたがあなたはもう動かないんですよね。
多分高確率でテーブルの上に乗ってきて邪魔したよね?言いがかりだって怒るかな?
そういえばあなたとはガチな喧嘩を2回ほどしましたね。
実家にあなたを連れてゆき、関東に帰るためにお出かけケースに入れようとしたらガチな抵抗、あれには驚きました。
そんなに嫌だったの?危なく仙台に置いて帰るところでしたよ?
今隣を見るとベットの上にあなたが居ます。
いつも通り眠っているだけで呼べば嫌々ながら起きてきそうな感じさえします。
「あると」
1回呼んでみます。
反応がない、眠いんだね。
耳が大きいあるとさん、
目もぱっちりクリクリのあるとさん、
しっぽが細くて長いあるとさん、
右足の裏だけ全部がピンクなあるとさん、
激ヤセ前は何故かお腹の皮だけたるんでたあるとさん、
元々小柄で童顔、幼児体型のあなたはロリでした。ロリBBAって言ってごめんなさい。
でも歳を感じないその容姿は凄いなと思ってたんですよ。
僕が結婚しなかったのもあなたに惚れていて人間の女性を必要としてなかったのもあるかもしれません。
いつも帰ると玄関先までお出迎えしてくれる。
辛い時、病気の時は寄り添ってくれる。
長く家を開けたあとはいじけて目を合わせてくれない。それなのに背を向けた状態で近くにいてくれる。
このツンデレ娘どこのアニメのヒロインでしょ?
言葉が通じないはずなのに言葉を話す誰よりも僕の理解者であった気がします。
最近はあなたがいれば独りもさみしいとは思わなくなっていましたが、あなたと別れ独りがものすごく怖いです。
さっきから泣いてばかりです。ほら、お嬢様の出番です、慰めてください。
小川あると様、こんな父を置いていくのはさぞかし不安もあるかと思います。しかし、おとうさん、あなたと過ごした6310日の思い出を胸に頑張るからさ、安心して旅立って。
でもさ、おとうさん弱いからさ、空から見守ってるくれると嬉しいな。
本当にありがとう。
あなたと過ごせた日々は宝物です。
そちらにはおとうさんの父、あなたのおじーちゃんもいるので仲良くしてあげてください。
またあなたと会える日を楽しみに今後の人生を過ごしていきます。
あなたのことが世界で1番大好きな父より。