デニムのパンツ「ジーンズ」を地球にやさしいものに

            - 地球のミライ - NHK みんなでプラス

 

 世界中の人に愛されているジーンズ。カジュアルだけれど、ガーリーにもなれるし、

かっこよく着ることもできる万能のファッションアイテムです。皆さんも 一度は手にされたこと

があるのではないでしょうか。

  一方で、製造工程は 環境に負荷をかける側面もあり、世界的な課題にもなっています。

こうした中、日本のジーンズ製造の現場で、地球にやさしいジーンズを作りたいと奮闘する製作者

を取材しました。
                                                 (BS1「Ethical Every Day」ディレクター 小藤理絵)

INDEX

地球にやさしいジーンズ作り

   瀬戸内海に面した倉敷市児島。繊維産業が盛んな町で、日本有数のジーンズ生産地です。
ジーンズ作りは 分業制になっていて、町のあちこちに 生地を作る織物専門の会社、ジーンズを
縫いあげる縫製専門の会社、洗い加工を手掛ける会社などが点在しています。
その技術や質の高さから 海外からも人気が高いそうです。
 
  2018年から地球にやさしいジーンズ作りに取り組んでいるのが、ジーンズを製造する会社で
製品開発に携わる岸本裕樹さんです。
地球への負担をなるべく少なくした「エシカル・プロダクト」を作ることにしたきっかけは、
自分たちの街をハッピーにしたい という思いからでした。 岸本さんは、地球になるべく負荷を
かけずにジーンズを作ることで、作り手とその家族、友人も より良い生活を送ることができる。
そして、環境にやさしいモノづくりは次の世代にもつながっていくと考えました。
 
    岸本さん
    「 児島は 海に面していて、漁業も盛んだったり、他の産業も色々あります。繊維産業は 水を
     よく使う産業でもあり、その水を 海に流してもいます。他の企業の方とも共存していくなかで、
     改めて 自分たちの町を見た時に 僕らができることは何だろうと考えました。
       環境にやさしいモノづくりだとか、人がやさしいとか、遊ぶ場所があるとか。ジーンズ作りを
     通して この町に 何か貢献できないかと考えスタートしました。」
 

   岸本さんの会社のジーンズは、ヨーロッパなど 海外にも輸出されています。ヨーロッパの

ファッション業界では 当時から、環境に配慮した製品作りが進んでいたことも、岸本さんたちを

動かした動機の一つでした。

 岸本さん
 「 ヨーロッパの人たちの環境への意識の高さを感じていました。ヨーロッパに商品を売る
   となると、環境に負荷を与えていないことを きちんと説明しないといけない時代になって
   きているのです。」
 
ファッション産業が直面する課題

   近年、ファッション産業は 環境負荷が大きい産業と指摘されています。中でもジーンズ産業は、

水を大量に消費することで知られています。国連によると、ジーンズ1本作るのに、約7500リットル

の水が使われています

 世界的な環境意識の高まりの中、日本でも雑誌などで「エシカル・ファッション」や「サステナ

ブル・ファッション」という言葉を目にするようになりました。環境に負荷がかかりにくい素材を

使用したり、働く人の人権に配慮したりして作られた製品のことを指しています。

 
 

 

コートジボワール綿で作るデニム生地

  岸本さんの会社は 創業以来、ビンテージに近い風合いを出すことにこだわり、デニム生地の開発

を行ってきました。
   岸本さんは エシカルな素材を使って、そうした ビンテージ感のあるジーンズを作ることが

できないか、各地の綿を取り寄せて試していたのです。
こうした中で出会ったのが、アフリカ西部に位置するコートジボワールの綿でした。

  仕事の関係者から、コートジボワールが 2002年の内戦の影響で経済がまひ状態に陥り、主要産業

の一つである綿花産業が 長く停滞していることを聞いたのです。岸本さんは 少しでも、綿花農家の

助けになりたいと考えました。

コートジボワールの人々は、昔ながらの方法で綿花を栽培していました。

   世界各地で行われる綿花の生産には、一般的に 多くの農薬が使用されていて、農地の汚染などが

問題になっています。さらに、遺伝子組み換えによる品質改良は、生物の多様性を損なう恐れがある

とも言われています。

   しかし、岸本さんたちが知り合ったコートジボワールの農家の人たちは、大型の機械を使わず、

手摘みで収穫し、農薬もほとんど使っていませんでした。

 

     岸本さん
    「 綿は 品種改良され、より白く きれいに長くなるのですが、コートジボワール綿は そういった
      ことが一切されていません。繊維は 太く短く、最も原種に近い綿と言われています。」
 

   約100年前から変わらない綿で糸を作り、機械で織り込むと、少しむらやおうとつがある、

岸本さんたちが求めている風合いの生地ができあがりました。
   コートジボワールの綿は、岸本さんたちが求めるエシカルでビンテージ感のあるジーンズを作る

ことができる綿だったのです。

 

   岸本さんたちは コートジボワールの綿花農家への支援も行っています。
ジーンズの売り上げの一部を使って、綿花栽培のための農機具を購入して 綿花農家に提供したり、

専門家を雇って 現地で農業技術指導も行ったりしています。

 

   今では ジーンズの30%が コートジボワール綿で作られ、店では人気の商品になっているそうです。

ジーンズのポケットの裏には、友情の証しである地図が描かれています。

 

大人気!バナナからできたジーンズ

   岸本さんたちの環境にやさしいモノづくりは、これだけにとどまりません。なんと、バナナの

繊維を使った「バナナデニム」も開発したのです。

開発のきっかけは、岸本さんがタイの出張で友人宅を訪れた際の何気ない会話からだったと言います。

 

    岸本さん
  「 庭に バナナの木が植えてあったので、“バナナ食べ放題だね” って話をしたら、“もう その木に

    バナナはならないよ” って言われたんです。そこで 初めて、バナナの木が一度しか実をつけない

    ことを知りました。」

 

   当時、タイでは バナナの木の焼却で出る二酸化炭素が大気汚染の一因とも言われていました。

バナナの茎から繊維が取れることを知った岸本さんたちは 紡績工場と協力して バナナデニムの開発を

スタートさせたのです。
   バナナの繊維は これまでも、カーペットやロープなどに使われていましたが、その硬さから 

衣服への利用には 広がっていませんでした。

 

   そこで 岸本さんたちは、バナナの繊維とコートジボワール綿を混ぜて 糸を作ることにしました。
まず 繊維の割合を半々にして作ってみましたが、着心地は ゴワゴワして イマイチ。
そこで、バナナの繊維の比率を少し減らして、バナナの繊維 40%、綿 60%で試しましたが、

しっくりきませんでした。

  開発を始めて およそ2年―、バナナの繊維 30%、綿 70%で混ぜた糸が黄金比率ということに

たどり着いたのです。表面に 白いぽつぽつとしたバナナ繊維の毛羽立ちがある、おしゃれで味わい

豊かなジーンズが完成しました。

 

    岸本さん
   「 商品力とデザインを高めていきたい と思っています。お客さんには、日々使用してもらう中で、

     エシカルを意識した商品であることに気づいてもらえればいいのかな と思っています。」

 

〈取材を終えて〉
    岸本さんのチームが進める「エシカル・プロダクト」の製作は、多くの企業の協力があって

進められています。

   水の消費を 大幅に減らす取り組みを進めるために、まず相談に行ったのは、児島にある老舗の

洗い加工の工場だったそうです。そこから 4年の歳月をかけ、水の再利用をするための技術開発を

進め、今年の初めから最大で 8割の水削減を可能にしたシステムを稼働させています。
バナナデニムの開発も紡績工場との協業で開発したものです。

 

 

   BLUE CYCLE JEANS:ジーンズを、地球品質へ。 |  UNIQLO Sustainability

     ・・・ これまでの技術では、ジーンズの自然に色落ちした風合いを出すために、

    大量の水や手作業を必要としていました。それが 環境に、また働く人に、大きな負荷

            となっていたのです。ブルーサイクルジーンズは、水の使用量を 従来に比べ 最大99%*

            削減(仕上げ加工時)。

               ヴィンテージ加工も レーザーで行い、手作業をかつてなく軽減。地球にも、人にも

           心地いい、次世代のジーンズが生まれました。ユニクロは、これを第一歩に 未来の

           ジーンズづくりを進めていきます。・・・

 

    ※ 知ってるようで知らない「デニム・ジーンズ・ジーパン」の違い

          (季節・暮らしの話題 2019年07月31日) - 日本気象協会