新型コロナ変異株「KP.3」流行

                                                                        コロナ 第11波も入る
 
新型コロナ変異株「KP.3」感染拡大へ 毒性は?症状は?対策は?

 

                                     2024年7月19日   NBC長崎放送 

  全国的に感染の拡大傾向が見え始め「第11波」に入ったとの見方もある新型コロナウイルス。

今 主流となっている「KP.3株」について、現時点で分かっていることを長崎大学高度感染症

研究センターの森内浩幸センター長に聞きました。

 

新型コロナウイルスの「KP.3株」とは どんなウイルス?

  「 新型コロナウイルスは どんどん変異を繰り返している。 最初に武漢から出たものから

『アルファ』、『デルタ』、『オミクロン』になり、オミクロンの中でも『BA.1』、『BA.2』と

変異してきた 」

「 いま流行している『KP.3』は 『BA.2』の子孫の子孫が さらに変異したもの。オミクロン株という

大きなグループの中での変異が続いている 」

 

すでに ゲノムの1%が変異した

 「『武漢株』が生まれてから 今の『KP.3株』に至るまでの変異を 全部合わせるとゲノム構造の1%

を超えている。人とチンパンジーのゲノムの違いが 1%。《種の違い》がある程の変異が 既に起きた

ことになる 」

「 当初のウイルスに対して 免疫を持っている人でも、完全に逃れることはできない。これは

新型コロナに限ったことではなく、インフルエンザでも 他の風邪ウイルスでも同じ。一度かかれば

終生免疫のできる「はしか」や「水疱瘡」のような病気とは違って、いわゆる 風邪のウイルスは

何度もかかる宿命にある 」

 

■「KP.3株」毒性や感染力は?

  「 生き残るウイルスは 必ず他のウイルスに比べて 感染が広がりやすくなっている。変異によって、

既に 私達が実際に関わったり ワクチンによって身につけた免疫からすり抜ける力が強くなっている。

「KP.3」が しばらくの間は中心となって 流行が起こるだろう 」

 「 ウイルス自体の『病原性』『毒性』は 従来株と極端な違いはない 」
 「 デルタ株までは 一気に 肺炎が酷くなって命を落とすような病気だったが、オミクロン以降は

インフルエンザと同じように、高齢者が感染することで 寝たきりになり誤嚥性肺炎を起こすとか、

元々持ってる基礎疾患が悪化することなどによって 命に関わるケースが出ている 」

 「 健康な大人や子供たちにとっては、それほど深刻なウイルスだということではない。一方で

高齢者や基礎疾患を持っている人など リスクの高い人たちの感染には気をつける必要があるという

ことだ 」

 「 久しぶりに孫に会いたいおじいちゃん・おばあちゃんたちが コロナを理由に諦める必要はないが、

会いに行く 孫や子どもは 感染リスクが上がるような行動はできるだけ慎む必要がある 」

 「 病状は ウイルスの特性より、その人が どういう免疫状態、体調にあるか、基礎疾患はどうであるか

などの組み合わせによって変わってくる 」

 

「KP.3」への感染は 症状で分かるのか?

   「 《より高い熱が出る》とか 《喉がより痛くなる》などの話もあるが 『 本当に 他の株の流行の

と比べて 明らかな違いがあるか? 』というと、何となく そういう傾向があるかもしれないね、

という程度 」

 「 インフルエンザや他の風邪と 極端に違いがあると捉える必要はない。唯一 コロナ感染で かなり

特徴的だった《嗅覚や味覚の障害》は オミクロン以降は相当少なくなっている。まず そういったこと

は区別をつける上では役に立たない 」

 

熱中症との区別は つきにくい?

   「 それは そうだと思う。熱が出るし 体がぐたっとなるのは、熱中症でもコロナやインフルエンザ

のひどい時でも全く変わりはない 」

  「 当初から分かっているように、このウイルスは 3密の中で広がりやすい。日本の夏は過酷なので、

当然 屋内に入って 窓を閉め切って冷房をつける。換気をする機会が減る。その中で 人から人への

ウイルスの伝播は起こりやすくなっている。《換気》も《熱中症対策》も 大事なので そのバランスが

難しいところだ 」

 

感染が疑われたらとるべき行動は?

   「 高齢者や基礎疾患を持っている方でなければ 慌てる必要はない。診断を絶対につけないと

いけないということでもない。検査のために 病院に殺到することで 医療が逼迫する恐れが出てくる

のは本末転倒だ 」

  「 一方で 新型コロナが厄介なのは 症状のない人からでも 感染が拡大すること。仮に病院に行かない

という選択肢を取るのであれば、少なくとも《 症状が 完全に良くなるまで 》は おとなしく 家で

過ごす。少しでも 症状があったら その間は 職場であれ学校であれ休む。それだけでも 感染の拡大

はかなり抑えられる。とにかく リスクの高い人を守るということに専念すべき 」

 

妊娠中の人のリスクは 高いのか?

  「 妊娠していない同じ年齢の女性に比べると、当然 リスクは高くなると思う。ただ、ものすごく

高いわけではないので すごく心配する必要はない。できるだけ 感染しないように、感染が疑われた

場合は ちゃんと診断をつけることを心がけるといいと思う 」

 

感染対策は これまで通りでいいのか?

   「 流行当初のように 学校でも職場でも店でも どこでも 消毒液を置いて 消毒しまくることは

ほとんど意味がない。そういう感染経路はゼロではないが 非常に小さいということがわかっている。

その代わり 換気が すごく大事だということもわかっている 」

  「 基本的に、ほとんどの屋外イベントは あんまり心配することはない。屋外ビアガーデンで

盛り上がるのは全く問題ない。でも、カラオケルームで 明け方まで大声でみんなで歌って騒いでー

というのは 当然、感染リスクが上がる 」

 

 「 コンサートも 静かに聞くクラシックのコンサートなら 最後の『ブラボー!』さえやめれば

問題ない。でも、地下アイドルなんかのコンサートで盛り上がるなど、換気が そんなに良くはない中

で みんなで大声出したらそれは当然、感染は広がる 」
「 そういった場所で過ごすときは マスクをちゃんとつけるなどが必要 」

 

ワクチンは打つべきなのか?

   「 ワクチンは 当初は 感染自体を防ぐ効果が非常に高かったので、むしろ 広げる可能性の高い

若い人ほど しっかりと打って下さい ー というワクチンだったが、今は 感染を防ぐ効果は ほとんど

期待できない。今のワクチンは、あくまでも 重症化のリスクのある人を守るためのワクチンに

変わった 」

  「 インフルエンザのワクチンと考え方は ほとんど同じ。65歳以上であるとか基礎疾患を持っている

場合に使いましょうと変わってきている 」

  「 そもそも健康な人にとっては 重症化リスクは低いので、ワクチンを打つことに そこまで一生懸命

になることはない。ただし コロナの後遺症と言われているものに対し、ワクチンを接種した人では

明らかに少なくなるというデータが出ている。後遺症を防ぎたいという場合は ワクチン接種は意義は

あると思う

 

今後の感染の波は?

   「 少なくとも この夏の間、感染が どんどん広がっていくこと自体は 間違いないと思う。それが

最終的に どの規模になるのかは分からない。コロナと共存する時代にはなったが コロナが終わった

わけではないということだ 」