ソニーグループの半導体工場 有害性ある「フッ化水素」処理量“0”と誤報告

           7月2日    熊本(RKK熊本放送) - Yahoo!ニュース

 

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化学物質に関する一部データの報告漏れについて|ニュースリリース

             ソニーセミコンダクタソリューションズグループ 

2024年07月08日

化学物質に関する一部データの報告漏れについて

                       ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
                    ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社

 

 ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社(以下、当社)が、PRTR法(化学物質

管理促進法)による制度※に基づき 毎年度報告している、化学物質の排出・移動状況において、

過去2年度分の報告データに誤りがあることが判明しました。

 誤りのあった届出データは、ウェーハのエッチングと洗浄の工程で使われるフッ化水素および

その水溶性塩のうち、事業所内での無害化などの処理後に、一部フッ酸成分が取り除ききれなかった

ものについて、廃棄物として 業者などを通じて事業所外に移動(排出)する量に関するものです。

誤りの内容としては、当社 熊本テクノロジーセンターの2021年度と2022年度におけるフッ化水素

および その水溶性塩のうち、廃棄物として 事業所外に移動(排出)する量について、届出データに

ゼロと記載していたことです。 2023年度の報告に向けたデータを準備する中で、過去分の報告データ

における誤りが判明しました。

    当該事案は、当社内におけるPRTR集計システムの更新に伴う不具合に加え、入力作業手順

における人為的ミス、対外報告用の当該データの確認体制の不備が重なる、複合的な要因により

生じたものです。 現在、過去分のデータを精査し、他に記載漏れがないか確認作業を進めており、

熊本県のご指導の下、報告データの修正手続きを進めてまいります。

    なお、フッ化水素は 腐食性の高い酸性の無機化合物ですが、当社事業所内で処理するものに

おいては 法規制基準よりも厳しい自主基準値を設けて 無害化の処理を行っているため、人体や環境

への影響が懸念される物質ではありません。

   熊本県内の地域住民の皆さま、ステークホルダーの皆様に、多大なるご心配をおかけすることと

なりましたことを 深くお詫び申し上げます。

また、当社の熊本以外の事業所についても、過去分の提出データを精査し、万一、記載漏れや誤りが

確認された場合には、関係当局に報告の上、速やかに 修正手続きを行ってまいります。

内部管理体制の一層の強化、社内規程の見直しを実施すると同時に、社員教育をさらに徹底し、

再発防止に努めてまいります。

 

    ※ PRTR制度:PRTR法(化学物質管理促進法)に基づく制度で、人の健康や生態系に有害な

     おそれのある化学物質が、事業所から環境(大気、水、土壌)へ排出される量 及び 廃棄物に

     含まれて事業所外へ移動する量を、事業者が 自ら把握し国に届け出をし、国は 届出データや

     推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する制度。

 

                                                                                                             以上

 

   PRTRインフォメーション広場 - 環境省

          PRTRインフォメーション広場 事業所データを見る [全国マップ]

         ふっ化水素及びその水溶性塩 (env.go.jp)

 

 

 

発がん性物質のPFAS。日本では規制強化見送りの公算。

規制強化を目指す欧米等のグローバルな動きとは真逆の流れに、専門家も首傾げる。

背景に「半導体」政策か?

      2024-03-10  (猪瀬聖) | 一般社団法人環境金融研究機構 

 

  国際機関や多くの専門家が発がん性や胎児への影響などを認めている有機フッ素化合物(PFAS)。

 グローバルに注目されており、欧米では 全面禁止も視野に入れた大幅な規制強化が進み始めている。

   だが、日本では 当面、規制強化は見送られる可能性が出てきた。日本政府の対応に、汚染地域の

   住民から懸念の声が上がっているほか、専門家も首を傾げている。

 

     予想外だった「健康影響評価案」

    1月26日、農薬や化学物質などのリスク評価を行う内閣府の食品安全委員会は、PFASに関する

    初めての「健康影響評価案」をまとめた。

 

    健康影響評価は、国が 当該物質を規制する際の重要な科学的根拠となる。例えば、委員会が

    健康に重大な影響を及ぼす恐れがあると評価すれば、その物質は 禁止を含む厳しい使用制限措置

    がとられる。逆に、健康への影響は 軽微と評価したら、規制は緩くなり、使用や利用の促進に

    つながる。農薬や新顔の食品添加物も、必ず 健康影響評価を行ってから、厚生労働省など

    リスク管理官庁が 残留基準値などを設定する。

     それだけに、PFASに どんな健康影響評価が下されるのか、汚染地域の住民や規制強化の必要性

     を訴える専門家らは固唾を飲んで見守っていた。

 

       健康影響評価は、詰まるところTDI(Tolerable Daily Intake :耐容一日摂取量)に集約される。

     TDIとは、ヒトが 一生涯にわたって 毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される量だ。

     食品安全委員会は 今回、PFASのうち 特に毒性の強いPFOA、PFOS、PFHxSのTDIの設定を試み、

     最終的に PFOA、PFOSのTDIを いずれも 体重1kg当たり20ナノグラム(ナノは10億分の1)と

     設定した。PFHxSは 設定を見送った。 結果的に、欧米の評価機関の評価と 大きく異なるもの

     となった。

 

       欧米で見直し相次ぐ

     では 実際に どれくらい違うのか。

     例えば 米環境保護庁(EPA)昨年まとめた新評価案は、TDIの最低値を PFOAは 0.03 

       ナノグラム、PFOSは 0.1 ナノグラムに設定した。日本の健康影響評価案よりも、最大で

       670倍も厳しい。

         EPAの前回 2016年の評価では、PFOA、PFASともに 今回の食品安全委員会と同じ20 ナノグラム

       だった。評価を大幅に修正したのは、この間、PFASに関する研究が増え、PFASの毒性がより

       明らかになってきたためだ。

          例えば、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は 昨年12月、PFOAを

      「発がん性がある」と評価し、PFOSについては「発がん性がある可能性がある」と評価した

       と発表した。

 

         欧州連合(EU)の評価機関である欧州食品安全機関(EFSA)は 2018年、PFOAとPFOSの

       TDIをそれぞれ 0.8 ナノグラム、1.8ナノグラムと設定したが、そのわずか 2年後の2020年、

       さらに厳しい 0.63 ナノグラムに設定し直した。しかも これは PFOA、PFOSを含めた4種類

       のPFASの合計値だ。

 

       一昔前の研究論文をわざわざ採用

       なぜ 欧米と日本で評価が大きく異なるのか。直接の理由は 採用した研究論文の違いだ。

       食品安全委員会で 実際に評価作業を行ったのは大学教授などで構成する「PAFS作業部会」。

       同部会は 約3000本の論文を吟味し、発がん性や遺伝毒性、生殖、免疫機能への影響など

       さまざまな観点から PFASの健康への影響を約1年がかりで検討した。

        膨大な数の論文の中から 作業部会が最終的にTDIを設定するために採用した論文は、

       実は、今から 少なくとも約10年前に発表されたもので、米EPAが 2016年に20ナノグラム

       というTDIを設定したときに採用したのと同じ論文だった。つまり、EPAが昨年、新たな評価案

       をまとめたときに、もはや中身が古すぎるとして相手にしなかった論文を、食品安全委員会は

       採用したことになる。

 

        また、この論文は、2020年に 政府が地下水と水道水のPFASの暫定目標濃度をPFOAとPFOS

       合わせて1リットルあたり50ナノグラムと定めた際に、算定根拠とした論文でもある。

 

       ということは、環境省が 近く設定する水道水と地下水のPFASに関する安全基準は、現在の

       暫定目標濃度と同じとなるのではないか。そんな観測が強まり、汚染地域の住民らは 一段と

       不安を募らせている。欧米では、TDIの引き下げに合わせて 米EPAが昨年3月、飲料水中のPFAS

       の上限濃度を 従来のPFOAとPFOS合わせた1リットル70ナノグラムから 各4 ナノグラム

       引き下げるなど、大幅な規制強化が進む

 

         疫学の成果を無視

         論文が古いだけではない。作業部会が採用した10年以上前の論文は、マウスやラットを使った

        動物実験の論文だった。これに対し、欧米の評価機関が評価を見直す際に重視したのは、

        最新の疫学研究の論文だ。疫学は 近年、学問として目覚ましい発展を遂げ、病気の原因究明や

        規制作りに果たす役割が大きくなりつつある。

        疫学研究の論文を評価に用いなかった理由を、食品安全委員会は「 研究調査結果に一貫性が

        ない 」「 証拠不十分 」「 研究は限定的 」などと、分厚い公表資料の冒頭部分でしつこいほど

        繰り返し説明している。これだけ繰り返すと、逆に 言い訳のように聞こえてくる。

 

         PFAS汚染の問題に詳しい小泉昭夫・京都大学名誉教授は 今回の評価の問題点をこう語る。

        「 作業部会には PFASの疫学研究の専門家も入っていた。だが、あれだけ『疫学は一貫性が

         ない』『信用ならん』と面と向かって言われたら、研究者としては ガクッときて何も言えなく

         なる。疫学の専門家の意見をもっと聞いていたら、評価結果は違ったのではないか 」

 

           見え隠れする政治の影

         小泉氏はさらに、作業部会が 疫学研究の成果を無視して評価案をまとめたことに「 強い意図

         を感じる 」と述べる。

         小泉氏が勘ぐるのは 半導体との関係だ。PFASは 半導体の製造に必要不可欠。その半導体を

         政府は 日本経済再生の切り札と考え、工場の誘致に異常なほど力を入れている。先日も、

         世界最大の半導体メーカー、台湾のTSMCが 熊本県内に巨大な半導体工場を完成させたことが

         大きなニュースとなった。

         今後 建設される第2工場も合わせて、政府は 工場の整備に1兆円以上を補助する予定だ。

         岸田文雄首相は 2月24日の工場の開所式に わざわざビデオメッセージを寄せた。経団連の

         十倉雅和会長(住友化学会長)も 3月上旬に福岡市内の半導体研究施設を訪れた際、「 九州は

         集積の地でもあり、強みを生かして半導体で日本を引っ張ってほしい 」とエールを送った。

         トヨタやソニーグループも 同プロジェクトに出資する。まさに国家プロジェクトの様相を

         呈している。

 

         これだけ 政府と財界が半導体に前のめりになれば、その足を引っ張るようなことはできない、

         と食品安全委員会の委員たちが考えても 不思議ではない。政官財の怒りを買えば、事務方は

         自分たちのキャリアが危うくなる。

          作業部会の座長を務めた姫野誠一郎・昭和大学客員教授は1月26日の作業部会終了後の

         記者説明会で、「(欧米並みの厳しい評価をくだすには)われわれも それなりの覚悟がいる 」

        「 20ナノグラム以外の数字も検討したが、無理だった 」など、およそ 科学者らしからぬ発言を

         繰り返し、政治的プレッシャーを相当感じていたことを伺わせた。

 

           小泉氏は「 食品安全委員会は(半導体政策の推進役である)経済産業省に忖度したのでは

         ないか 」とみる。

         環境脳神経科学情報センター副代表で医学博士の木村―黒田純子氏も「 評価内容は牽強付会

         のような印象だ 」と述べ、何らかの意図が働いた可能性を指摘している。

 

           ガラパゴス化する日本の食品安全行政

         実は、食品安全委員会の安全性評価やそれに基づく法規制が欧米と大きく異なるのは PFAS

         に限ったことではない。

         例えば、生態系に広範な影響を及ぼし、子どもの発達障害との関連も疑われている

         ネオニコチノイド系農薬は、EUは 2020年までにほぼ全面禁止した。米国でも 昨年12月

         ニューヨーク州で使用を厳しく規制する州法が成立するなど 規制強化の動きが広がる。

            これに対し日本では 2015年以降、逆に規制緩和が進んだ。発がん性が疑われ 米国で

         巨額訴訟が 進行中の除草剤のグリホサートや、健康への影響が懸念される一部の食品添加物

         も同様だ。

 

         農薬や食品添加物は半導体とは直接関係ない。とすると、日本の食品安全行政が 欧米の標準

         とかけ離れて ガラパゴス化している原因は何なのか。 考えられるのは、政治献金を 接着剤

         として形成された政官財の「鉄のトライアングル」だ。

 

         日本共産党の求めに応じて 国会図書館が作成した資料によれば、主要7カ国(G7)のうち

         米国、カナダ、フランスが 政党への企業献金を禁止。禁止していない国でも  様々な制限を

         設けている。また、国際NGO「民主主義・選挙支援国際研究所」によると、経済協力開発機構

        (OECD)加盟38カ国のうち、スペインやポルトガル、メキシコ、チリ、韓国など ちょうど

         半数の19カ国が政党への企業献金を禁止。EUも 約半数の国が禁止していると、2月19日付

         のしんぶん赤旗電子版が報じている。

 

         ネオニコチノイド系農薬の規制緩和では、その一つであるクロチアニジンも恩恵を受けたが、

         クロチアニジンの開発・製造企業は、経団連会長企業の住友化学だ。一方、グリホサートの

         製造元であるバイエルは 言わずと知れたドイツを代表する大企業だが、ドイツ政府は、企業

         への忖度はなく、グリホサートの全面禁止を打ち出している。

 

         こんな事件もあった。2022年、吉川貴盛・元農水相が、大臣在任中に鶏卵業者から計500万円

         の賄賂を受け取ったとして東京地裁で有罪判決を受けた。

         日本の採卵用鶏の約9割は バタリーケージと呼ぶ自由に身動きできない狭い檻に入れられて

         飼われている。これは アニマルウェルフェア(動物福祉)に反し、産んだ卵も不衛生だ

         として EUは とうにバタリーケージを禁止。米国でもカリフォルニア州が 2022年に禁止する

         など、世界的に禁止の動きが広がりつつある。いっそのこと 世界的に禁止にしようとOIE

        (国際獣疫事務局)が 日本政府に打診したが、業界が 有力政治家に取り入って、わが国での

         禁止を阻止した。これが贈収賄事件の真相だ。

 

          もちろん賄賂と献金は違う。だが、カネの力で 自分たちの利益になるよう政治家や、政治家

         を通じて 官僚を動かそうとする点では同じだ。

          みずほリサーチ&テクノロジーズが 昨年7月にネット上に公開した「速報・欧州PFAS規制案

         パブコメ提出状況と指摘されている論点」が面白い。EUが 昨年1月に公表したPFAS全面規制案

         に対し 誰が どんなパブリックコメントを提出したかを調べたものだ。

         あくまで途中経過だが、約600件寄せられたパブコメのうち 国別では EU加盟国を差し置く

         ように、日本からのコメントが 断トツで多く、全件数の46%を占めた。コメントの内容は

         「過度の規制に反対」を訴える内容が大半で、経産省や経団連もコメントを出していた。

 

          政治とカネの問題が改めて問われているなか、経団連の十倉会長は会見で、会員企業による

         寄付やパーティー券の購入を 今後も 従来通り続ける考えを強調した。固く結ばれた政官財の

        「鉄のトライアングル」に 国民の声が入り込む余地はほとんどない。

         食品安全行政のガラパゴス化に歯止めを掛けようとするなら、まず日本の政治のガラパゴス化

         を何とかしなければならない。