ニュースサイトの家宅捜索は「おかしい」、鹿児島県警の捜査手法への疑問 

     大学教授やライターが指摘

                2024年06月25日  弁護士ドットコム 

 

  鹿児島県警の元生活安全部長が 内部情報を外部に漏らしたとして国家公務員法(守秘義務)違反

   の罪で逮捕,起訴された事件をめぐって、元部長から情報提供を受けた北海道のライターや内部告発

   に詳しい大学教授らが 6月24日夜、県警の捜査手法やマスメディアの問題について議論した。

 

●渋谷で緊急イベント

   事件は、以前から鹿児島県警の不祥事を報じていた福岡のニュースサイト「HUNTER(ハンター)」

の事務所を、鹿児島県警が 別の情報漏えい事件の捜査として 家宅捜索した際に、元生活安全部長の

告発資料を発見したことが きっかけとなったとされる。

 これに対し、メディアに家宅捜索をして 取材源である内部告発者を割り出すという鹿児島県警の

捜査には 重大な問題があるとして、調査報道やノンフィクションを配信している「 SlowNews

(スローニュース) 」が 緊急的に この日のイベントを開いた。

 

   北海道のライター、小笠原淳さんは オンラインで参加。今年4月に送り主不明の郵便物を受け取り、

中には「 闇を暴いてください。」と書かれた文書とともに 警察の不祥事について書かれた資料が

入っていたことを紹介した。

   ただ 現場が鹿児島であったことから「 まともに裏付けを取るとかなり時間がかかると思った 」

といい、それまで記事を書いたことがあった HUNTERの編集部に資料を共有したと説明した。

 

●「 取材資料を対象に捜索差押えが行われたのは今回が初めて 」

   鹿児島県警の家宅捜索を受けた HUNTERの中願寺純則代表も 電話で参加。 家宅捜索を受けた際、

捜査員から 令状をちゃんと見せてもらえなかったことや、弁護士に電話しようとしたら 携帯を

取り上げられたことなど 捜査の問題に言及した。

   また、小笠原さんから送られてきた内部文書のデータには パスワードをかけておらず、パソコンを

起動すれば見れる状態になっていた とも明かした。

 

   内部告発に詳しい上智大学の奥山俊宏教授は「 私が知る限り、これまで 報道機関の物を特定して

差押えしたケースは いくつかあるが、報道機関や記者の取材資料を対象に 捜索差押えが行われた

ケースは この事件が初めて 」と指摘。

   そのうえで 「 今回のような事態が前例としてまかり通ると、権力機関中枢にいる人物から

報道機関への情報提供は 萎縮して行われなくなり、やがて 公式発表ばかりが報道されるようになり、

国民の知る権利は阻害され 民主制のプロセスが害される。 そうさせないためには、鹿児島県警

による HUNTER事務所への捜索は過ちだった と公の場で言わせる必要がある 」と強調した。

 

●「大手メディアの記者は何のために警察に四六時中張り付いているのか」

   元北海道新聞記者で 北海道警の裏金問題を報じた経験がある東京都市大学の高田昌幸教授は、

広島県警で問題となっている不正経理事件でも 大手メディアが 告発を知りながら報じなかった

ことに触れ、「 大手メディアの記者は 何のために 警察に四六時中張り付いているのかを考えない

といけない。警察の問題とは別に メディアも問われている。ずっと報道を続ければ きっと変わる 」

と話した。

 

   小笠原さんは 「 HUNTERへの家宅捜索がおかしい という声が もっと大手メディアからあがって

ほしい 」と語った。

   中願寺さんは 「 メディアの姿勢、メディアの力が問われている。特に 大手の新聞は鈍いと

感じています 」と述べ、報道機関に奮起を促した。