保 健 物 理, 32(3), 305~311 (1997)

原子力発電所放水口沖におけるトリチウムと 温排水の拡散状況

 
I は じ め に 
  トリチウムは濃縮, 貯蔵等の処理が 困難なため, 液体廃棄物処理の一環として, 原子力施設等から
 放出されている。 排水中のトリチウムは 放射能濃度規制を満たした環境安全上問題とならない
   低い濃度であるが,  放出 と 採取の時期が一致すると, 原子力発電所の放水口周辺の海水に
   10 ~ 数100Bq/ℓの 濃度のトリチウムが検出され得ることが報告されてい る。
      しかしながら, 日本国内の原子力発電所周辺海域における 放出トリチウムの拡散状況を調査
   した報告は, ほとんど見当たらない。 
   福井県の高浜町に立地する関電(株)高浜発電所にお いても, 原子炉4機から1年あたり数10TBqの 
   トリチウムが 海水中に管理放出されている。  10TBq=10×10^13=10兆㏃
            ※ 放射能に汚染された衣類や器具の洗浄水 や 原子炉冷却水に含まれる重水が中性子を
     吸収してトリチウムなどが、温排水のなかに入っている放射性物質。
  そこで, 原子力発電所周辺の環境放射線モニタリングの一環として, 高浜発電所から内浦湾内に
 放出されるトリチウムの拡散状況を調査するため, 放水口から沖合約8kmに至る教地点で定期的に
 採取された海水試料のトリチウム濃度について検討を行 った。さらに, 内浦湾口から沖合にかけて
   の海水の水温分布を調査し 温排水の拡散状況との関連についても検討を加えた。
                                  
 
 
      
    イギリス(2015)
      ヘイシャムB原発                液体放出:      約390兆ベクレル 
      セラフィールド再処理施設  液体放出:    約1540兆ベクレル 
                    気体放出:        約84兆ベクレル
    フランス(2015)
       ラ・アーグ再処理施設          液体放出:約1京3700兆ベクレル 
                                                         気体放出:        約78兆ベクレル
                  トリカスタン原発               液体放出:         約54兆ベクレル 
    カナダ(2015)
      ブルースA,B原発     液体放出:   約892兆ベクレル 
                                                         気体放出:     約1079兆ベクレル
                  ダーリントン原発               液体放出:       約241兆ベクレル 
                                                         気体放出:       約254兆ベクレル
                  ピッカリングA,B原発      液体放出:        約372兆ベクレル 
                                                         気体放出:        約535兆ベクレル
    韓国(2016)
      月城原発          液体放出:   約17兆ベクレル 
                    気体放出:       約119兆ベクレル
      古里原発          液体放出:   約36兆ベクレル 
                    気体放出:         約16兆ベクレル
    中国
    (2020)浙江省・秦山第三原発  約143兆ベクレル
    (2021)広東省・陽江原発    約112兆ベクレル
         福建省・寧徳原発            約102兆ベクレル
         遼寧省・紅沿河原発         約  90兆ベクレル
     
   天然のトリチウムは 約7京ベクレル/年 発生し、
   地球上には、100京~130京(100万兆~130万兆)ベクレルが存在している。
            環境省_トリチウムの自然界での存在量
   日本全国の原子力発電所から海に放出されていたトリチウムは、
                          合計で約380兆ベクレル/年(事故前5年平均)
                 Q6. 原子力発電所から出るトリチウムが心配です 
    トリチウムは、100万kWの加圧水型原発から年間30兆ベクレルも放出される。
                        ※炉心の冷却水にホウ素を 入れるため、BWRとトリチウムの発生量が異なる
            PWR (加圧水型原子炉)※ 18~87兆ベクレル/年 
            BWR (沸騰水型原子炉) 0.02~2.0兆ベクレル/年 
 
       (参考)再処理施設    (液体) 9.8~430兆ベクレル/年
              (気体) 0.9~4.0兆ベクレル/年
 
    半減期は12年
 
 
 
 
 
        美浜    1,2号機:2015年4月27日 運転終了、 3号機:82.6万kW
    高浜  1号機:定検中、    2号機:82.6万kW、  3~4号機:87.0万kW
    大飯  1,2号機:2018年3月1日 運転終了、   3~4号機:118.0万kW
 
                2024/06/19  読売新聞

  来年で運転開始から40年となる関西電力高浜原子力発電所3、4号機について、県議会

(定数37、欠員1)が20年間の運転延長を容認していることが18日、複数の県議への取材で

わかった。県議会や高浜町の意見を尊重する考えを示している杉本知事は近く、原子力規制委員会

事務局・原子力規制庁から運転延長を認可した審査に関する説明を受けた上で、可否を判断する

見通し。

 県議会は 2021年4月、運転開始から40年を超えた関電美浜原発3号機(美浜町)、

高浜原発1、2号機(高浜町)の再稼働について 議論の末、同意していた。複数の県議によると、

当時、3基に限らず 県内の原発が40年を超えて運転することも認めていたという。

 

 県議会の宮本俊議長は読売新聞の取材に、「(高浜3、4号機を含めた)40年超運転を巡る

議論は 21年に完了しているとの認識だ。国の専門家が 安全を確認して運転延長を認可しており、

認めない理由はない」と説明する。

 県議会の最大会派・自民党県議会(25人)の幹部は「 国が 原発を長期利用する方針で、規制委も

高浜3、4号機を動かしてよいと言っている。議論を蒸し返す必要はない 」と強調した。

 

 高浜3、4号機を巡っては 規制委が 5月に20年間の運転延長を認可。2基が立地する高浜町の

野瀬豊町長は 6月18日に運転延長を容認すると正式に表明した。

 杉本知事は この日の県議会本会議で、「 今後、原子力規制庁から審査結果の説明を受ける 」と

説明。県内原発の課題などを話し合う「県原子力環境安全管理協議会」で意見を聞く方針も示した

上で、「 安全最優先の観点から必要な意見を申し上げる 」と述べた。

 杉本知事はまた、規制委が許可した高浜3、4号機の蒸気発生器の取り換えについて、関電との

安全協定に基づき了解するか否か検討しており、本会議で「適切に判断する」とした。

 

   県安全専門委の意見重視 知事

 高浜3、4号機の運転延長を巡って、杉本知事は、県内の原子力発電所の安全性について有識者

が検証する「県原子力安全専門委員会」の意見も重視している。

 県によると、同委員会は5月17日、2基について「 今後の継続的な運転のために、必要な対策が

講じられている 」と評価。「 認可後には 審査結果の説明を受けたい 」と原子力規制庁に要望して

いた。早ければ 6月中にも 再び会合を開き、同庁から説明を受ける予定だ。

 
 
                                              NHK

       運転開始から来年で 50年となり、現在国内の原発で もっとも古い福井県の関西電力・

     高浜原子力発電所1号機が、28日午後3時に原子炉を起動し、12年ぶりに再稼働した。

   福島第一原発の事故のあと原則40年に制限されている運転期間を超えて 再稼働するのは 

     全国で2例目。

       福井県高浜町にある高浜原発1号機は、1974年に運転を開始した廃炉になっていない中では

     国内で最も古い原発で、2016年に 新しい規制基準の審査に合格し 原則40年の運転期間の延長も

     認められたが、テロ対策の施設が未完成で再稼働できていなかった。
   この施設が 7月完成し、国の検査などが終わったことから、28日再稼働することになり、

     高浜原発1号機の中央制御室では 午後3時に関西電力の運転員がパネルを操作して 核分裂反応を

     抑える制御棒を抜いて、原子炉を起動した。

        高浜原発1号機の再稼働は 2011年1月に定期検査で停止して以来、12年6か月ぶりで、

     東京電力福島第一原発の事故のあと 原則40年に制限されている運転期間を超えて再稼働するのは、

     同じく福井県にある美浜原発3号機に次いで全国で2例目。

       関西電力によると、作業が順調に進めば 29日朝には、原子炉で核分裂反応が連続する臨界状態

     に達し、8月2日には発電と送電を開始する見通しだという。

 

     関西電力 森社長「 安全最優先で緊張感持って作業 」

        高浜原子力発電所1号機の再稼働について、関西電力の森望社長は「 東日本大震災からおよそ

     12年にわたり、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準への対応や自主的な安全性向上

     の取り組みを進めてきた。高浜発電所1、2号機の本格運転再開による7基体制の実現に向け、

   引き続き、安全最優先で緊張感を持って作業を進めていく 」などとするコメントを発表した。

       また、関西電力原子力事業本部の田中剛司副事業本部長は、「 高浜原発1号機は 40年超の

     プラントであり およそ12年ぶりの運転再開のため、トラブル防止の観点から総点検を実施し、

     慎重に作業を進めている。引き続き、安全最優先で緊張感を持って作業していく 」と話した。

 
     高浜町 野瀬町長「安全・安心最優先に慎重かつ丁寧な運転を」

       高浜町の野瀬豊町長は、再稼働にあたってコメントを出した。
      それによりますと「 高浜発電所1号機の40年超運転は 政府の掲げる2050年 カーボンニュートラル、GX

      の実現に大きく寄与するものと考える 」としている。
   そのうえで「 1号機は 2011年1月の定期検査入り以降、12年半の長きにわたり停止していた

      ことで、再稼働に不安を抱く住民の方もいることから、事業者には、しっかりとした体制の下、

      一層きめ細やかな点検や安全対策を行い、安全・安心を最優先に慎重かつ丁寧な運転を行って

      頂きたい 」としている。

 

  福井 杉本知事「引き続き厳格に監視」

     高浜原発1号機の再稼働について、杉本知事は「 起動した高浜1号機は 運転開始から48年が

      経過し、また、12年間停止していたプラントである。関西電力においては、最大限の注意を払い、

      これまで以上に慎重かつ安全な運転に努め、原子力に対する 県民の信頼を得ていかなければ

      ならない。県としても、高浜1号機の運転について、引き続き厳格に監視していく 」などとする

      コメントを出した。

 
     高浜町の住民は

       運転開始から40年を超えた高浜原発1号機の再稼働に、立地する高浜町の住民からは安全最優先

      の運転を求める声や不安をのぞかせる声が聞かれた。

     原発関連事業に携わった業者からは歓迎の声

        高浜原子力発電所1号機の再稼働について、地元で原発に関連した事業に携わってきた業者

     からは歓迎する声が上がっている。
    40年以上にわたって、原発のメンテナンスなどに使う工具を販売している敦賀市の会社では、

     高浜原発1号機の再稼働に関連する工事用に工具の注文が、ふだんの3割から4割ほど増えたという

     こと。  今後も安定した売り上げが見込めるとして、期待を寄せている。

   小森英宗会長は「 多くの雇用を生み出す原発に工具を納めているので、高浜原発1号機の再稼働

     には大変喜んでいる。今後も、しっかり安全を確認しながら原発を動かすことを支援し、地元の

     業者として一緒に頑張りたい 」と話した。

   ・・・
 
 

 

2024/06/23             

環境哲学ちゃんねる【大島堅一】             (20分)