農林中央金庫 23年上半期(4-9月)決算 2023.11.16 

            農林中金が1兆2000億円の資本増強を検討、債券含み損で 2024.5.19

 

 

農協に激震…!農林中金「1兆5000億円のとんでもない赤字」

リーマンよりヤバい「海外投資で大失敗」の本当の原因

          2024.06.21  週刊ビジネス

 

米金利上昇が直撃…!

 農林中央金庫が 外国債券の運用で2兆円を超える含み損を抱え、2025年3月期に

1兆5000億円の最終赤字に転落する見通しとなり、全国の農協関係者や農林水産省幹部ら

の間に激震が走っている。

 

 巨額赤字は リーマン・ショック後の 2009年3月期以来 16年ぶりとなるが、ハイリスク・ハイリターン を

求めて 米証券化商品への投資を焦げ付かせた当時よりも、事態は 深刻と言える。

   リーマンの教訓から、満期まで持ち続ければ 元本が返ってくる米国債などに投資を集中させて

きたにもかかわらず、今回は 米金利の急激な上昇 と 高止まりに直撃されて 含み損が膨らみ、

「 安全かつ確実にリターンが上げられる 」(農中幹部)はずだった投資戦略も破綻した。

 

   JAグループから預かった約60兆円にのぼる資金を運用し、年間3000億円規模の利益を

還元してきた農中からの「ミルク補給」が断たれれば、本業の農業関連事業で 赤字を垂れ流す

全国の多くの農協が 経営も立ち行かなくなる。

 

リーマンショックのトラウマ

  「 過去の金利上昇局面では、一定程度、評価損を抱えても 持ち堪えられたが、今回の(米国の)

金利引き上げは 想定の超えるものだった 」。農中の奥和登理事長(1983年入庫)は こう釈明したが、金利見通しを読み誤ったことは否定できない。

 

    新型コロナウイルス禍の収束とインフレ圧力の高まりを受けて、米連邦準備理事会(FRB)が

2022年3月以降、急激な利上げに転じたことが 市場でサプライズを呼んだのは確かだが、

同じく 米国債投資で含み損を抱えた3メガバンクなどは 2023年中に「損切り」を終えている。

   対照的に「 リーマン直後の赤字決算のトラウマ 」(有力OB)を引きずる農中は、

「 米景気は いずれ減速する。高金利は 長くは続かない 」と高を括り、含み損処理を ずるずると

先延ばししてきた。

   その挙げ句、米金利上昇で ドル調達コストも嵩み、投資リターンを上回る「逆ザヤ」状態に陥って、

「 満期まで保有すれば 損は出ない 」などと呑気なことを言っていられなくなった。

低収益の債券を塩漬けにしたまま 保有資産を入れ替えなければ、投資収益の回復は望めず、農協に

利益を配分することが いつまでもできないからだ。

 

農協に尻拭いさせて…

   外貨資金調達コストに跳ね返る信用格付けの低下を避けたい農中は 今回、自己資本増強のため、

約1.2兆円規模の追加出資を 都道府県レベルの農協組織「 信連 」などに要請している。

リーマンショック後の1.9兆円増資に続く 2度目となり、利益還元どころか、運用失敗の尻拭い

まで迫られる農協側からは「 泣きっ面にハチだ 」との恨み節も漏れる。

 

   奥理事長は 前回の増資時、担当部長として 全国の農協団体を説得して回った経緯があるだけに、

再びの失策に 経営責任を問う声も出ている。 だが、農中は 最初に5000億円の巨額損失見通しを

公表した 5月22日当日、奥理事長を含む理事7人の再任を発表しており、それが 農協関係者の反発

に拍車を掛けているようだ。

   とはいえ、JAグループが 今後も 農中の稼ぎに期待するしかないのも事実で、結局、2度目の

増資を引き受けざるを得ないだろう。

   これまで 農協の経済事業の赤字を穴埋めしてきた もう一つの柱である 保険販売などの共済事業が、

過度なノルマによる職員の「 自爆営業 」や、高齢者への不適切販売などの発覚で ブレーキがかかる

中ではなおさらだ。

 

   農中に JAグループの経営を丸ごと背負わせる、無理な ビジネスモデルの限界は明らかだ。

農業者が減り、融資も含めた農業関連ビジネスが先細る中、JAバンクが せっせと非農業者からも

預金を集め、それを 農中に回して儲けを増やそうとするシステムそのものの矛盾が露呈した。

 

農水省と金融庁はどう動く?

   海外で巨額投資を続けてきた農中を巡っては、かねて 経営危機に陥った場合、国際金融システム不安

を引き起こすリスクが懸念されてきた。

   実際、リーマン後の巨額損失時には、公的資金注入による 実質国有化が水面下で検討された。

2022年には 農水産業協同組合貯金保険法が改正され、金融システムに著しい混乱が生じると予想

される場合には 公的資金を注入できる仕組みが 正式に整えられたが、そんな事態になれば、

農協も 一蓮托生で 生き残れなくなるだろう。

 

   農中を共管する農水省と金融庁は「 連携して 経営を注視していく 」とアピールしている。

だが、両省庁は すでに農中の経営管理委員として 皆川芳嗣元農水次官(1978年旧農林省)と、

佐藤隆文元長官(1973年旧大蔵省)を送り込んでおり、事態を静観するだけでは 単なる「 天下り

ポスト目当て 」とのそしりを免れない。

   リーマン時に続く 巨額損失ショックの再来を奇貨として、農中とJAグループの歪な関係そのもの

にメスを入れる必要がある。